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荷台で発症

 自分以外の人間が苦手だ。

 もっと言えば、自分以外人間じゃないと中学生の時思っていた。


 人間が嫌いなのは嘘をつくからだ。

 自分の利益のためならば、他人が不利益を被っても関係ないし、その不利益が目の前で起こっていても、普通に生活できてしまうのが理解できなかった。

 俺だって、多少は浮わついたようなことをするが、それは決まって目の届かない襖の向こうの事だ。


 それを人の見えるところ、それも本人の感じ取れる距離でやるような人間に心当たりは無いだろうか?


 俺は何度も陰口を言うのを聞いた。経験上、5人程度の集団の結束力を上げるために効果的な手段として悪口、陰口は使われており、それを言わない人は爪弾きにされる。


 男にも女にもその影でこそこそとするような人がいる。今、車の前、20メートル先にいるのはそういった人種に思えた。


 髪は先っぽが茶色の、足は俺の腕より細く、どういった効果があるのか疑問なほど厚底のブーツをおはきになった女性は、一見美しく、愛くるしく、誰からも可愛がられるような、存在として写った。


 だから信頼ならない。別に男女の区別はないのだが、顔や身体に恵まれて生まれてきた人間が信用ならんと言う話だ。

 各言う俺も、恵まれた体格のため、この歳になるまで道の真ん中以外を歩いたことがないことに、ついこないだまで気がつかなかった。


 本人は無意識に他人へ暴力を振るっているものなのだ。可愛ければその恩恵も計り知れない物があるだろう。


 その可愛い塊が、道の真ん中にだ、横たわってしゃらりしゃらりとやっている様を想像してみろ。もう完全に罠だな。撒き餌だ。さて、トラップはどこだという話になってくる。俺がそう考えているのをダンゴムシは不思議な顔をして、ハッと閃いたらしい。頭のいいこだ。今まで生き残ってきただけのことはある。


「農家さん、女の子に話しかけにくかったらボク行くッスよ!」

「は?」

「ボク、得意ッスから!」

「ちょっとまて」

「大丈夫!大丈夫!」


 あのバカ。勝手に車降りて道沿いに歩いていった。

 ああ、ああ。狙撃の格好の的だ。

 日本では散弾銃を5年くらい持つとライフルを所持できる。その弾の飛距離は3キロとか言うので、それはつまり、俺達の視界の外から弾が飛んでくると言うことだった。


 回りは耕作放置の畑しかない。いくらでも人が姿を隠せるのであった。


 ダンゴムシ君が倒れている女に近づくと、女は笑ったみたいだった。

 ダンゴムシ君は、顔が良い部類に入るらしい。そしてそれは倒れている女の警戒を解くに十分だったようで、笑っておいでおいでをされる。


 超怖い。俺は俺の直感を信じるぜ、ということで、ギアは1。そろりそろりと車を前進させながらも、周囲に視線を向けることを忘れない。


「この子の妹が噛まれたらしいんスけど、どうしようって」

「あのな、早く車乗れ。ドアにはちゃんと鍵閉めてな」

「どうしたんすか農家さん?」

「あの、ダンゴムシ君分かってますか?俺達は珍しくなった車に乗っています。これは、砂漠で車を乗っているのに等しいんですよ? 分かりますか。我々は高価値の目標なんですよ」

「ええ?でも農家さん優しいから助けてくれるッスよね?」

「うーん」


 本音を言えば助けたくない。見捨てたい。全然良心は痛まない。むしろ、我が行動範囲に余所者が入ってきたことを見過ごすのだから十分な譲歩だろう。

 言っとくが、俺は甘すぎるくらいだ


 いなか者はと悪い意識を持たれても困るが、面倒も困るのだ。

 大体、妹が噛まれた~なんて、映画じゃ有名なワンシーンなんだよ。そしてそれは嘘なのだ。


 むしろ、その嘘を利用してやれば良いのではないか?あっちは噛まれたって言ってるんだから殺せば良いだけの話では?


「しょうがないなぁ」

「農家さん早くしてほしいッス」


 女に案内された所には確かにもう一人女の子がいた。足を噛まれたらしく、布を巻かれているがそこからの出血が多くて辺り一面血の池という感じだった。腕からの開放骨折も気になるが、適切な処理がされず放置され虫がたかっていた。あの傷はもう何日か過ぎている傷だ。


「もう、昨日から水も飲んでなくて、それなのに、立ち上がって私に噛みつこうとして……ごめんなさい」

 ボロボロと泣き出すのを見て、鉈を抜きジリジリと距離を摘めた。


 えっと言う声が上がる。

 むしろ、えっ?この状態から治る治療があるとでも?

 むしろ、楽にさせる方が人道的では?


「農家さん待って!」

「大丈夫!即死させる!」

「そうじゃないッス!まだ助かるかも知れないじゃないスか!」

「任せろ!俺の肩揉みは痛くないって評判なんだ!」

「全然違いますから!!」


 面倒なことになった。ダンゴムシ君がどうしてもというので、女の子二人を荷台に乗せて家に帰る途中。


 発症した。


 劇的だった。

 血が吹き出して、顎が融解。だらりと垂れ下がった舌がお姉ちゃんの首筋をなめ回し、飛び散って目から入った血液が、お姉ちゃんの身体を蝕んだ。


「ぎゅふ、ギュヤフフハフフフフフ」


「おいどうすんだよ。感染してんじゃねぇか」

 ダンゴムシ君はこっちを見なかった。

 窓のそとが大事らしい。

 なんだ。絶世の美女でもそこにいるのか?うん?



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