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やつらの押し寄せる音

8月21日晴れ


 自衛隊を追って感染者の群れが来た。

 町を覆い尽くさんばかりの人垣は、統制の取れていない化物の集団で、後ろから来たものが前のものを押し倒し、内蔵が口から飛び出るなどの光景があった。

 もし、感染者に生前の記憶があってアレをやっているとすれば、日本人ではないんじゃないかな。特殊な国のご出身で列を作ることを知らない人種なのでは無いかと思われた。

 服装は赤や黄色、青など鮮やかなものが多く、感染してから日が浅いことが見受けられた。

 多数の人間の腐った匂いというのは強烈で、腐った卵と人糞を混ぜて煮詰めたようなに強烈な匂いが500メートル先からも感じとることができた。

 服を着ているものばかりではない。中には、破れた服を引きずった状態で歩き回っている個体もいる。まるで、蜜蜂が新しい花を探すように歩き回っているので、群れの中における偵察を任されているものと思われた。


 それらが、道も畑も田んぼも関係なく押し寄せてくる様は圧巻だった。映画だったら一秒辺りに数十万円はかかるだろうなという壮絶なる行進風景は、しかし、現実である。


 最初に噛まれた自衛官が雷管に点火して、高性能爆薬で感染者5人ほどと吹き飛ぶ様は、赤い煙のようであった。

 煙にならなかった頭蓋骨や肩甲骨などの肉片がバラバラと音を立てて落ち、それを全く気にしない感染者がゆっくり歩いて迫ってくるのだ。


 1方向からならばまだしも、複数方向へと広い平野に広がった群衆は、某、巨大音楽フェスの観客みたいに自衛隊車両へと押し寄せた。


 重たいはずのトラックが右に左に揺れ、叫び声が聞こえてくる。タイヤが重く沈み混み、これでもかと殺到した群衆は肉団子となって荷台から転がり落ちてきた。


 千切れた腕が、あるいは足が、尺取り虫のようにビクビクと地面で跳ねている。


 逃げよう。逃げられるうちに。


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