花香る
「農家さんってさー、変なとこあるよね」
「変って何が」
「なんとなく、大人なのに子供みたいな」
「大人って皆、心の中は子供なんだよ。身体が成人になっても心はそのままだから皆嘘をついて大人のふりをしてるんだよ」
ふわふわ髪のガキィちゃんが、ニィと笑って振り返った。最近、苅払い機で除草中に蜂に刺されて泣いた彼女は早く大人になりたいと言う、典型的な子供なのだった。
勿論、そう言っている間が花なのだが。
あーあ、今日も糞熱そうだな。雲ひとつない晴天。ニャンコのご飯寄越せコールがあって、森の方からセミの鳴き声が聞こえる。
ガキィちゃんは最近ダイエットするなどと宣言して朝御飯はパン一枚しか食べない。良くあれでもつものだと感心するが、夜は大盛りご飯2杯の他、冷凍の鮭切り身、ササミの焼き肉、ナスの天ぷら等人一倍食べるので結局は肥えているらしかった。
庭の柿の木から実が落ちて、倉庫の屋根に音を立てている。
田舎の盆は車の音も音楽の音も、パチンコ店の騒音もない。
と思っていたのだが。
ドンツクドンツクドンドンドン♪と重低音を響かせて一台の車が滑り込んできた。絶対にヤバイやつだろうと思うだろう。俺も思う。だが車に見覚えがあった。
俺も学校というものに通っていた身であるので、俺にも先輩というのがいる。彼は、ちょっと変わった人である。元々ゾンビ好きで、そういう世界になったら、火炎瓶で物資や拠点を燃やして回りたいと言っていたような人だ。
花島先輩という。俺の部活動の先輩で、パソコンゲームの音源を元にした二次創作の音楽を好み、車から駄々漏れるほどのウーハーを醸し出す。彼はサバゲー経験者で、好む銃はプロジェクト90。多段マガジンを最後まで使うために中のバネを焼く改造をしていたような男だった。現在は介護福祉士だか、医学療法士とかいう資格をとり、それ系の仕事に就いているらしいが、他人にあまり興味がない俺なのでよく知らないでいた。
「久しぶりだな!まだ生きてたか!」
「先輩、おひさしぶりです」
頭ペコリ。
「映画観に行くぞ!」
こういう人なのだった。
「今やってないですよ」
「いーから車乗れって!ドライブだ!ドライブするぞ!」




