穴掘り
俺はオレンジ色の煤けたような作業つなぎと、腰に鉈と鋸を携えてちょうど畑に向かっている所であった。
俺は身体が大きいのだが最近は良く目をつけられるようになっていた。
多分、適当に自分で切った髪型の、ざんぐりとした前髪が弱そうなイメージを与えるのだろうと思われた。仕方がない、1000円カットはやってない。
男二人に絡まれ、「なんだおまぇ!」と声掛けをいただく。
「農家ですが」
「農家だぁ!?」
男たちは顔を見合わせてにんマリとした。そのうち、手が出てきたのは言うまでもない。
ガツンと頭を殴られてよろめいた。冷たい。熱い。でもどこで見られているか分からないため簡単に殺すのは……。
自分の行動に制限はつけないが、それを見た人がどう感じるのか考える。
俺は羊と生活できても、羊は俺と共存できない。
殴られながら蹴られ、よろめきながら植木屋の畑へと入った。
長らく出荷の無くなった植木畑は荒れ放題で、枯れた烏瓜なんかの蔦が幾重にも折り重なってカーテンのように回りからの視界を遮っている。
「警告します。本当にそんなことしていていいんですか?」
「なんだこいつ!頭おかしいんじゃないか!?」
鉈を抜いた。鉈は立ち木を伐採するのに使う。枯れ枝はちょうど、人間の指の骨くらいの物である。ありていに言えば、人よりも硬いものを相手にしている道具が、人を解体できないはずもなく。
ヒュイやっと振り抜かれた鉈が、男の肩から脇腹まで袈裟がけに切り裂いて、ボトボトボト!と音を立てて内臓がこぼれ落ちた。
赤やピンクや黄色のそれらはまだ繋がっていて、動転した男は、自分の腹からこぼれる臓物を何度も何度も腹に押し込んでは漏れだし、はみ出し、壮絶なる光景となった。
本来、腹の中には圧力がかかっていて長い腸が収まっているのだが、筋肉ごと腹がさかれたために、噴水のように吹き出てしまっているのである。
もう1人の男も逃げないうちに頭に真一文字に鉈を振り落として頭を割った。即死である。
最後の1人になって、彼は自分の運命を悟ったような目をした。生き残るためならばなんでもするような目。
「自分達が入るお墓を掘ってください」
「へ?」
「掘ってください」
最後の男は、綺麗に穴が掘れれば許してもらえるとでも思っているのか、時折満面の笑みを見せながら素手で地面を掘っていった。
生爪が何度も剥がれて。




