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コスト

 昼になった。

 昼飯を用意すべく農機具を倉庫にしまっている時、生存者の一団が通りかかった。


 20人ほどの団体で、ほとんどが男性で3人ほどが女性だった。

 そもそも俺はコミュニケーションが苦手なため、挨拶を会釈で済ませてぼんやりと見て輪郭を掴む。


 ふむ、若いなという印象。まだ成人していない人もいるのではないかと思われた。

 どこにいくんだろうと思っていると、我が家の真ん前の竹藪に入っていった。

 そこはうちの土地で、車が入れるようにちょうどスペースがあるのだった。彼らは我が物顔でその場所に入っていった。


 どう声をかけようか?

 彼らに悪気がないのは良く分かった。笑顔だったし若い人だ。多分、東京とかから逃げてきたに違いないのだ。


 俺にできるのは、傍観、あるいは駆逐である。駆逐の場合当然ながら殺傷行為も含まれることとなる。


 傍観することにした。人と会って払うコミュニケーションのコストが高すぎる。さすがに悪い人とも分からない人間を殺そうとは思わない。俺はその話し合いのために、膨大なコストを必要とした。

 それこそ、戦車の燃料みたいなものだ。戦艦が重油を食う話みたいなもの。

 それをすると、1日の仕事がそれで終わってしまいそうになる。

 加えて、学生気分の感じられる彼らは非常に厄介だ。


 苦手である。学校そのものが嫌いだ。そこにいる生徒も先生も、ゴキブリのような感じすらする。

 ごめん。言いすぎたかも。でも苦手なことにかわりはない。俺は嘘が付けない。これは本当なのだが、彼らは平気で嘘を付く。だから嫌いなのだ。


 早くどっか行ってくれないかな?という目で見るが、彼らは背中にセンサを持っていないようである。


 そのなかでも取り分け目を引いたのは、服装と髪の毛の短さから、男なのかな?という風体の人物だ。

 肌はきめ細かく、睫は長く、肩は華奢で手足が長い。

 パンツスーツのような服装も合間って、男か女か分からなかった。


 新しい世代の人類というやつだろうと思った。最近では、このような見た目の人がもてはやされると聞く。なるほど確かにイケメンである。


 が、それは乙女が心に抱く感情であって、農家が知らんやつに思う感情ではなかった。

 もう、早くどっかいってくれんかな?という感じ。

 こちらは午後も草刈りの仕事と田んぼの見回りがあるというのに。

 リーダーらしき40代くらいの男は我が物顔で居座ってしまったので、俺が家の中に逃げ帰るようにして昼食とるはめになった。


「なんでしょうか彼らは」

「私は心配した。また農家さんが悪農家になるんじゃないかって」

 悪ってなんだ。正しさと悪さはいつも表裏一体、いうなれば、同一企画の製品だろう。


 つまり、大事なのは100点を取るか-100点を取るかということだ。

 

 どちらも同じく影響力があり、ベクトルが違うだけだ。


「農家さんの中には、何人いるの?」

「俺は1人ですよ」


 失礼だなぁ。まるで俺が多重人格者みたいではないか。むしろ俺は人を構成する領域の深さが深いのだ。故に、自分と比べて他者を判断できない。むしろ自分の性能すら、良く分かっていなかった。


 誰も信じられないから、仕方なく自分を信じるみたいな。


 目下の懸念事項は、あの方々が早くどっかに行ってほしい、ということで、まったくもっていい気分ではなかった。

 風が少し吹いている。午後は曇りそうだった。


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― 新着の感想 ―
これは、一波乱二波乱有りそうな展開。 ハバネロを齧りながら見守ります。
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