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渇望

 玲子さんに君は野良犬のようだねと言われた。

 どう言うことかと聞き返す前に自分で考えてみることにした。俺の弱点は相手の気持ちを想像できないことにあった。だからこそ、そこを補うべく相手の考えに想いを馳せることが、とても大事に思えたのだ。


 多分、犬みたいな匂いがするということだろうな、と思った。


 犬よりも猫の方が好きなのだけれど分かってもらえない。あのフワフワとした毛の塊はとても秀逸で、可愛いと言う言葉を表すような形をしている。


 一方で道にいる感染者の方はどうだ。

 疲れたのか、道路の真ん中にしゃがみこんで、目は空へを睨み付けるようにしてそこにいた。さらには、舌はダラリと口からこぼれ落ちて、膨らみかけの風船のように不気味なサイズに肥大している。

 その表情に感情の機微や論理的思考を読み取ることはできず、動物と比べても、まだ動物の方が本能にしたがった行動を取っているように思えた。


 彼らはもう死んでいると考えるのが正しいのではないか。

 健常者が、心や命と呼ぶ部分がすっかりと抜け落ちて、生きる屍になった彼らに何ができるだろうか。


 腐った体で、破れた服でこの世を歩き続けるのは、彼らにとっての侮辱のようにも思えてきた。もし、俺の力でその牢獄から解き放つことができたならばどんなによいかと思って近づいた。


 それは、格闘技を始める際のゴングみたいなものだ。

 一瞬、こちらに顔をふった感染者は「みぃやぁあああ!!」と叫びながら立ち上がる。

 その体はでっぷりとふとり、太い腕はそれだけで攻撃力が高そうな感じがした。

 顔には傷があって、誰かがこの人を倒そうとした形跡があった。


 人は感染すると程度の違いこそあれ、あの姿になるのだろうなという不気味な予感だけははっきりと浮かんでいた。


 鉈で頭を切り取って、それの髪の毛を掴み、ちょうどハンドバックのような形で家へと戻った。人間のお風呂に入っていない髪の毛というのは指に絡み付いて気持ち悪いし、嫌な匂いが染み付いて、何度も手を洗う羽目になった。


 初めて頭を開けたときほど興奮しなかった。まるで薬物に耐性ができるように、俺の心は常に干上がっていた。


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