鷹の目
防衛研究所
日本にある研究所、その中でも異質な軍事衛星を使用した軍事研究を行う部署。
本来ならば他国の軍事行動を監視する研究所だ。
高性能のパソコンと、選別されたメンバー達がいる場所。ほとんどメディアへの露出もない、天空からの目とも呼ぶべき彼らの頭脳は日本に向けられていた。
彼らの多くは、非常事態が宣言されてから、一度も家へと帰らずデスクの椅子で寝泊まりしていた。
起きて最初にすることはモニターの電源を入れることだ。日本の保有する衛星、及び協力国の助けを借りて衛星の画像処理がその仕事だ。日本中のあらゆる写真を統合して必要な情報を集める。ソフトの立ち上げが終わるとちょうど、部下が食事を持ってきてくれた。
当たり前となってしまったカップ麺。ビタミン不足を補うために添加する乾燥野菜。時にはマルチビタミン錠剤そのものがつくこともある。
飯を食べながら仕事を開始する。一日中、目を皿にして必要な情報をかき集める日々。
「ん?」
違和感。見慣れた燃え上がる家屋や、交通事故、航空事故、船舶事故。
室長の指がキーボードを叩いた。
画像が2時間前に戻る。
慌てて赤電話を取った。
マジックテープが絡まったが無理やり持ち上げて電話をかける。
呼び出し音、呼び出し音。なぜでない。遅い。
室長の様子に部下達が見るでもなく横目で状況を把握しようと勤めているのが見えた。
室長の視界、モニターの中にそれは写っていた。
田んぼに水が引かれている。
「……まさか、まだ無事な場所があったのか」
この日本に無事だった所は無かった。高度に発達した交通、孤立した集落ですら道で繋がれ、生存者は皆そこを目指した。感染初期では無事だった村は次々に感染していった。
避難者の中に感染者がいたのだ。
「なにやってるんだ!早く電話に出ろ!」
壊れているのかと何度も叩いた電話。導通を示すライトが点灯した。
「どうした?」
期待した声が耳を叩く。
「まだ生き残っている場所があります!」
思わず笑顔で伝えていた。
「何を待ってる。すぐ最新の情報を」
今の日本の状況はかなり不味い。国内で消費している食糧の8割を輸入に頼っていた日本は、今、遠くない未来の食糧難に直面していた。
「茨城県。幸いなことに、首都圏にも近い。これなら!」




