お葬式
俺は女子が苦手だ。もう学生の時からなのだが、女子は決まって付きまとってくるし、そのくせ、人を試すような所があって苦手だった。
恐らく、俺の孤独性にミステリアスな感じや非接触性を感じて近づいてくるのだろうが、その実、正体を知ると皆離れていった。
ま、一緒にいる上で不自由はなく、今いる玲子さんも立派に生きてくださっているのでありがたい。
俺は久しぶりに普通のふりをした。
どういうことかというと、遺体を運ぶときには涙をこらえたように鼻をすすり、遺体を荼毘に伏す時も、爪の間に隠したデザインナイフで肉を切って涙を流した。
普通の人みたいに。
俺のような人間が、この社会で生き残っているのには理由があるのだ。
演技。
普通である演技がとても得意。
まして、精神病院にも警察署にも行ったことが無いのは、外から見て全く違和感なかったからであろう。
俺の演技を見た玲子さんが肩に腕を回して「おいおいおいどうした? いつもの農家さんどこやった? おまえ食っちまったんか?」と一言。
「やだなぁ。ここにいるじゃないですかぁ」顔もひきつる。俺の普通は彼女から見て異常らしかった。
遺骨を骨壺に移す際にも何度も涙をぬぐい、それこそ悲しみに溢れた表情で執り行った。
葬式というのは儀式なのだ。残った人が故人の死を受け入れる儀式。
ちゃんとやらないと、死んだ人がまだいるような、そんな気になってしまうという。
まあ、俺は分からんのだがな。
だから、死んだ人も生きてる人も同じ様に感じる。肉であり、骨であり、魂だ。勿論この魂は、普通の人に合わせて言っているだけである。
骨壺が無かったので、漬物樽で代用した。
我が家の墓もある墓地に皆で行ったが、我が家の墓は開けなかった。
他人が入るのが嫌という理由ではなく、既に満杯で入れるところが無いからだった。
小さなお地蔵さまの近くに埋葬して、葬式は終わった。
心配していたお姉ちゃんの後追いもなく、淡々と家に帰る。
涙がでないのでまた指を切ると玲子さんに化物を見る目で見られた。
心なしか涙の量が多かった気がする。




