楓の日常2
誤字脱字、
諸々の事実から外れた表現があればご指摘ください。
「さて、言い訳を聞きましょうか?」
都内某所、楓のマネジャーの住むマンション、その寝室のベッドの中で、マネジャーが声を荒げて楓に弁明を求めた。
先程、楓がいきなりファンの一人を抱き締めた件についてだ。その後、なんとかマネジャーが言い訳をして、他のファンが暴動を起こすようなことは無かったが…毎回来てくれる熱心なファンに感動したと言う理由は無理があった気がしないでも…いや、無理がある。
よく納得させられたものだ。楓のファンは調教が行き届いている、と言うことにしておこう。
「しゃーねーだろ…好みだったんだから。」
モゾモゾと動いてマネジャーの体に鼻を埋めながら、楓がぼやく。
「以外ね、あーいうの、楓は嫌うと思ってたわ。」
ベッドのなかで、シャツを羽織った姿で抱き合いながら、会話する。
ピロートークが仕事関連のの話なのがなんとも言えないが…
「そら表面見たらな?」
苦笑しながら楓は今日出会ったファンの一人を思い出す
確かに、服装や態度だけ見れば、わりとマジでキモい。ただ…
「服変えたら化けるぞ、あの子。」
抱き締めたときの感触…細くて柔らかな抱き心地と、眼鏡の奥の大ぶりな瞳を思い出して、楓が顔をだらしなく緩める。
その発言と表情にマネジャーがうんざりしたように言葉を返す。
「あんたねぇ、今さっき抱いたばっかの女の前でそゆ態度とる?普通、てか、あの人男でしょ?守備範囲外じゃないの?」
なんとなく、マネジャーが話をふったような気がしないでもないが、その言葉に対して、楓は。
「バカめ、可愛いに性別などと言う垣根はない。あたしは男娘も大好物だ。」
見境のなさが露呈した発言である。クズである。大好き、や、タイプ、ならまだしも大好物と言ったところに本音が現れている気がしないでもない。
マネジャーは、そんなクズ発言を聞いても特に動じず、何となく納得したような表情をしている。
…慣れている。
「ま、私としてはどーでもいいけどね。気持ちよくしてくれるんなら。」
愛情等と言うものはない。体込みの、ビジネスライクな関係…を、装っている。
楓が横目でマネジャーをみると、その口は尖り、微妙に不機嫌そうだった。
「さいで。」
気づかないふりをして、楓が彼女の体に手を這わせ…用としたとき。
「ん?」
楓の耳が、複数の足音を感知した。恐らく、軍用ブーツ。音をたてないように歩いてはいるが、楓ならば聞き取れる。
「どうしたの?」
マネジャーが怪訝な顔で聞いてくる。彼女にシーツをかけ、体を隠してやる。自分の方は、枕元においていた、グロック17を手に取る。
「お客だ、歓迎してやんないとな。」
マガジンを抜いて、残弾を確認、マガジンを挿入、手動でスライドを引いて、薬室に弾を送る。
グロックはダブルアクションの拳銃なので、ハンマーを起こしてやる必要がない。もっと言えば、ハンマーそのものが露出していない。スライドさえ引いてやれば、そのまま撃てるのだ。
楓は嗜虐的な笑みを浮かべて唇を嘗める。
「パーティーといこうか。」扉を蹴破って入ってきた招かれざる客に、グロックが砲火を吹いた。