スラムドック
カエデが二人と暮らしはじめて数年が過ぎた、バラックの中でうだうだしていたカエデにイヴァンが声をかける。
「カエデ、今日は少し遠出して食料をとりに行こう」
「ん、OK」
治安が最悪のスラムにも店はある。
今日の目標は“なんの肉か不明な肉“を売ることで有名なケパブー屋だ。
ギャングから奪ったAKMを握り、二匹のスラムドックは襲撃に向かう。
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数時間後、ケパブー屋を襲った二人は大通りを三体の肉の材料……もとい三人の少女を連れて歩いていた。全員、目は虚ろで肌は土気色になっている。
「あんなもん見せられたら食う気しねぇよ………」
「あはは、カエデは案外繊細なんだね」
ため息をついてカエデが言う
「犬とかなら食えるんだがなぁ」
ケパブー屋は人を材料にして肉を作っていた。とはいえ、治安の悪化から車などでの輸送では襲撃のリスクが高くなるため、このスラムでは物流が止まり、肉が入って来なくなっていた。
なのでこのスラムでは肉とはニアリーイコール人肉と言ってもいい。その他で可能性があるのは犬だが、まだマトモな感覚を持っているこのスラムではマイノリティにあたる人間たちは、それが犬の肉であることを祈りながら食うのだ。
閑話休題
そんなこんなでケパブー屋を襲撃した二人は至るところに血や、黄ばんだ脂がこびりつく解体部屋で三人の少女を見つけたのだが………
「さて、こいつらどこに売る?見た目はそこそこだし、伝さえありゃあ肉にするより高く売れると思うぜ。」
カエデの視線が少女たちに向く。このスラムでは人間すら商品である、人権などというものは先進国のハイソサエティの町でしか通用しないのだ。
まれに先進国でもその概念が吹っ飛んだ国があるが…………、詳しくは言うまい。
「んー、売るのはやめとこう」
そう言ったイヴァンにカエデが気だるげに声をかける。
「ヒューマニズムか?」
端的な問い、“情にほだされたか?ここじゃ死ぬぞ?“という意図を含ませた問いだ。
イヴァンは首をふって否定する
「いつまでも二人じゃできる仕事に限りがあるだろ?売って一時の金を手にいれるより、鍛えて駒にした方が合理的だ。」
あくまでも、自分達のためだ、と言い切る。
カエデはその答えに満足したかのように頷いた
「それでこそだ。さ、マリアも待ってるし帰ろう。」
二体一対の比翼連理は、帰路につく、地獄が待っているとも知らず。
過去編終わらせるつもりが長くなりそう…………。




