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俺のスキル【配信】コメント欄が戦国武将だった~秀吉の教えでどん底から成り上がる~  作者: 清松
第二章 暁は銀色

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おかえりなさい

「さて。これからの話をする前にまずは茶と菓子を出そうか」

「いえそんなお気になさらず」

「初対面の人間を試すという無礼を働いておいて茶の一つも出さぬのはね」


 私の品格が疑われてしまうよと先生は笑い引っ込んで行った。

 ……ひょっとして自分で淹れるんだろうか?

 結構大きな家だしお手伝いさんとか居てベル鳴らして呼びつけたりするもんだとばかり。

 そこら辺をアレックスさんに聞いてみると、


「一応定期的に掃除に来る人間は雇ってるみてえだがそれ以外は全部自分でやってるよ」


 曰く、身の周りの世話を誰かに任せるというのが性に合わないらしい。

 出来ることは自分でやるのが信条だという。

 ただ掃除だけは苦手だし家も広いから外部に委託してるそうな。


「待たせたね。さ、遠慮なくどうぞ」

「ありがとうございます」


 カップを手に取り口をつける。

 紅茶の良し悪しなんて分からないがとても美味しい。


(というかこれ紅茶なのかな?)


 どうも言語はこちらの知識に当て嵌めて変換されてる節がある。

 紅茶っぽいだけで紅茶じゃなかったりするのかも。


「味はどうかね?」

「美味しいです」

「それは良かった。これでも腕には自信があってね。クッキーも絶品だよ」


 食べてみたまえと言われ口にする。

 柑橘系の皮か何かを混ぜてるんだろうか?

 甘いけど口当たりが良い。幾らでも食べられそうだ。


「気に入ってくれたようで何より。親方もどうだね?」

「茶は好きだがあめえもんはちっとなあ」

「何、これは大丈夫さ。君のことも考えて作っておいたものだからね」

「そうかい? じゃあ……お、確かにこれは割といけるじゃねえの」


 ひとしきりお茶を楽しんだところで先生が切り出す。


「さて真くん。君は読み書きを習いたいとのことだったが」

「はい」

「君さえ良ければそれ以外のことも学んでみないか?」

「……それは、ありがたいことですけど」

「金銭などは要らんさ。隠居老人の道楽のようなものだからね」


 読み書きだけならアレックスさんの紹介ということで無料でもいけるかもしれない。

 だがそれ以上となれば流石に月謝を払わねばと思ったことはお見通しだったようだ。


「君が意欲のある人間だというのは十分分かった。であれば授ける知識を惜しむつもりはないよ」

「でしたらお願いします。将来役に立ちそうな」


 いや違うな。知識はどれも役に立つのだ。

 何と言うべきか言葉を探していると先生は楽しそうに笑った。


「君の生活に寄り添ったものを優先するとしよう」

「お、お願いします」

「上手くやれそうで安心したよ。そいじゃあ先生、俺ぁこの辺で」

「うむ。彼のことは任せてくれ親方」

「ああ、頼むよ。そいじゃあんちゃん、また今度飯でも行こうぜ」

「はい。今日はありがとうございます」


 アレックスさんを見送り二人だけになったところで先生が切り出す。


「さて。これから私に師事する上で守って欲しい幾つかの約束事を説明しよう」

「お願いします」

「まず大事なのは分からないことを隠さない、そのままにしないこと」


 これは俺も大事なことだと思う。


「分からないことは決して恥ではない」

「分からないから学びに来たのにそれを隠して何になるんだって話ですよね」

「そう。そのままにしないことの意味は分かるかね?」

「……勝手な判断で知識に優先順位をつけるなということでしょうか」


 これは分からなくても良い。

 そう見切りをつけて後々、必要な知識でその部分が求められるなんてこともあるかもしれない。

 俺がそう推論を述べると花丸をあげようと先生は笑った。


「次は自分の頭で考えるのを止めないこと。当たり前のことが具体的に何故と問われて答えられるかね?」

「ただ知識を記憶することと理解することはまた別だから、でしょうか?」


 数学の公式を覚えていてもそれをどう使うか理解していなければ意味はない。

 多分そういうことだと思うんだが……。


「その通り。安易に答えだけを求めてもそこに至る過程が抜けていれば生きた知識とは言えない」


 まったく答えを教えないわけではない。

 だがまずは俺が考えるだけ考えてからってことだな。


「とは言えそれで抱え込まれても困るから次の約束事だ。質問は遠慮せずすること」


 どうせ答えてくれないから、で飲み込まない。

 答えそのものではなくヒントを与えることだってある。


「そこらの判断は師である私の役目。教え子が見切りをつける部分ではない」

「はい」

「結構。この後の予定がないなら早速、最初の授業を始めたいと思うんだがどうかね?」

「是非お願いします!」


 願ってもないことだ。


>@Super_monkey うむうむ。一つよろしく頼むぞ先生!!


 とこちらも乗り気。

 俺に助言する上で異世界の知識を知っておいて損はないからと言っていた。

 でも純粋に知らないことを学ぶのが楽しみでもあるんだろう。


「結構。では授業を始めよう」


 それから数時間、日が暮れるまで第一回目の授業は続いた。


「今日はありがとうございました!」

「うむ。ではまた。気を付けてな」

「はい!」


 先生にお礼をして屋敷を後にする。

 宿に戻る俺の足取りは自然と軽くなっていた。

 五十音で言えばまだあいうえおを覚えているような段階で先は長い。

 それでも着実に前に進んでいるという実感が心も体も軽くしてくれる。


「あら、おかえりなさい」

「――――」

「えらく上機嫌だけど先生って人は良い……どうしたの?」

「……いや、何でもない」


 少し胸がいっぱいになっただけ。

 おかえりなさい。何でもない言葉なのにな。


「“ただいま”。話したいこといっぱいあるんだ。聞いてくれるか?」

「勿論」

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― 新着の感想 ―
中々に出来た先生ですね。 真君も良い生徒になれそう。 そして、おかえりを言ってくれる存在がありがたい。
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