⭕ 晏洛の街 4
──*──*──*── 1ヵ月後
玄奘三蔵法師さんが薬屋の看護室で療養する様になってから、約1ヵ月が過ぎていた。
玄奘三蔵法師── 長いからオレは “ 三蔵さん ” って呼ばせてもらってる── は、今では歩ける迄に回復している。
これは一重にマオキノのサポートと三蔵さんの直向きで地道な努力の賜物と言えるだろう。
三蔵さんは “ リハビリ ” と称して、基礎体力,持久力,耐久力,筋力とか身体を丈夫にする為の運動をマオキノの指示を受けて真面目に取り組んでいた。
マオキノが何処で覚えてマスターしたのか知らないけど、太極拳っていう拳法を教えていた。
ひたすら三蔵さん1人だけで拳法を習うのも味気無いって事で、オレも一緒にマオキノから太極拳を習った。
三蔵さんのリハビリに付き合った事もあってか、オレは三蔵さんと仲良くなれた。
三蔵さんは意外と若くて未だ22歳らしい。
「 セロより1歳、お兄さんだね! 」って言ったら驚いていた。
今回の年齢設定は、セロが21歳,オレは16歳で──、何時もと変わらない。
20歳にしてほしかったのに今回も駄目だった。
三蔵さんはセロから借りてる写経に書かれている “ 生き甲斐 ” が気に入ったみたいで毎朝、声に出して読経しているみたいだ。
“ さとる ” 事が出来たなら、難病も完治しちゃうぐらい有り難くも凄い内容だから、余計に気になるのかも知れない。
セロ曰く、分かる人には凄さが判るらしい。
判ったからと言って、全て人が “ さとれる ” のかと言えば、そうでもないらしい。
感じ方も思い方も考え方も “ 人に依って違うから ” って事らしい。
心に響く人が居れば、微塵も心に響かない人も居る。
「 有り難い! 」と涙を流す人も居れば、紙屑同然にポイっと捨てる人も居る。
実に色々らしい。
本当に霊観の強い人が読めば、「 これは本物だ! 」って事が判るし、凄さにも気付けるらしいけど──、霊観が強いって自負しているにも関わらず「 これは本物だ! 」って気付けない人は、パチもん──謂わば “ 偽者の詐欺師 ” って事らしい。
“ セロ曰く ” って事だから、本当なのか、冗談なのかはオレにも分からない。
セロは平然とデナラメな事を言うし、結構いい加減だからな~~。
オレは真に受けない様に気を付けてるつもりだ。
自信はないけどな!
マオ
「 三蔵さん、確り体幹も鍛えれてるね!
肉付きも良くなったし、顔色も健康的だよ。
絶え間ぬ努力の証だね! 」
玄奘三蔵法師
「 有り難う御座います。
マオ殿が付き合ってくれているからです 」
マオ
「 オレは大した事してないよ。
錫杖を使った杖術も上達してるし、このまま順調に進めば、旅を再開出来るよ! 」
玄奘三蔵法師
「 そうですね。
下界の地に封印されて居られる神将様達を1日も早く見付け出し、解放させて頂きたい…… 」
マオ
「 神将達も三蔵さんが来てくれるのを待ちわびてると思うよ。
長旅に耐えれる丈夫な身体になる為にも体力作りに励もうね! 」
玄奘三蔵法師
「 はい!
勿論です 」
三蔵さんに活力がみなぎって、みるみる内に元気になっていく姿を直に見れるのは嬉しいな。
杖術の相手をするのも楽しいや!
──*──*──*── 3週間後
とうとう薬屋を後にして≪ 天竺 ≫を目指す旅を再開する日がやって来た。
西門から≪ 晏洛の街 ≫を出て、≪ 亰笄の村 ≫を目指すんだ。
三蔵さんには〈 馬人形 〉に乗ってもらう。
乗り易い小柄な体型の真っ白い〈 馬人形 〉だ。
手綱を握って歩くのはセロで、マオキノは三蔵さんの後ろに器用に座っている。
後ろから襲って来る妖怪が居ないか見張りをしてくれているんだ。
オレは前方と左右を見張りながら歩く。
マオ
「 本当に妖怪には襲われないんだよな? 」
セロフィート
「 襲って来る妖怪が居れば、牛魔王さんの配下です 」
マオ
「 牛魔王の配下は≪ 都 ≫を制圧したキノコンが喰べたんじゃないのかよ? 」
セロフィート
「 ≪ 都 ≫の外にも居ます。
≪ 都 ≫の中にはキノコンが入れませんし、フィールドで盗賊紛いな事をして暮らしているかも知れません 」
マオ
「 マジかよ。
そっか……配下だからって、≪ 都 ≫の中に居る訳じゃないんだな。
襲って来る妖怪はマオキノの御飯って事で良いよな! 」
セロフィート
「 マオ…… 」
マオキノ
「 マオ様ぁ!
妖怪は喰べちゃって良いですエリ? 」
マオ
「 おう!
どんどん喰べてくれよ!
妖怪を喰べても腹を壊したりしないんだろ? 」
マオキノ
「 大丈夫ですエリ!
分裂して喰べちゃいますエリ♥️ 」
マオ
「 セロはマオキノが妖怪達を喰べ易い様に睡眠魔法で眠らせてくれよな 」
マオキノ
「 それは駄目ですエリ!!
恐怖に戦き逃げ惑う憐れな妖怪達を追い掛け回して喰べたいですエリ!
動かない獲物なんて襲っても詰まらないですエリ~~ 」
マオキノ
「 マオキノ…………。
随分と野性的だな 」
マオキノ
「 キノコンも元から野性的ですエリ。
獲物との追い掛けっこは食欲が刺激されて楽しいですエリ~~♥️ 」
セロフィート
「 三蔵法師さん、どうされました?
顔色が優れない様ですね
少し、休憩しましょう 」
玄奘三蔵法師
「 い、いぇ!
大丈夫です!
≪ 晏洛の街 ≫を出てから半日も経っていないのに休憩は早過ぎます!
私の事は気にしないでください 」
セロフィート
「 そういう訳にはいきません。
元気になっても毒の後遺症が有る事を忘れないでください。
初日から無理は禁物です 」
マオ
「 乗馬も少しずつ身体に慣らした方が良いと思うよ。
三蔵さんは頑張り過ぎるからさ、もっと自分を労ったり,労ったりしても良いと思うんだよな。
何事にも “ 頑張れる ” ってのは素晴らしい事だし、才能だと思うけど、“ 程々 ” と両立させた方が良いと思うよ。
後から心も身体もしんどくなるよ? 」
マオキノ
「 我慢しちゃ駄目エリ。
頼ってこその仲間エリ。
いっぱい頼るエリ~~ 」
玄奘三蔵法師
「 皆さん……有り難う御座います(////)」
セロフィート
「 牛魔王さんが支配していた関所の在る≪ 都 ≫は全て、セノコンの指示の元、ノキノコンの制圧が完了してます。
キノコン達が復興作業を進めてますし、のんびり向かいましょう 」
マオ
「 封印されてる神将探しと解放を優先させれるな!
錫杖はどうやってを神将が不意されてる場所を知らせてくれるんだろうな? 」
玄奘三蔵法師
「 私にも分かる様に、光を放たれたり、音を鳴らされたりして知らせて頂けます 」
マオ
「 へぇ~~。
錫杖に宿ってる神将が教えてくれるんだな~~ 」
セロフィート
「 神将同士で反応し合うのでしょう。
距離が近付くにれ、神将同士で交信が可能になるのかも知れません 」
マオ
「 神将同士で交信かぁ。
ファンタジーだなぁ~~。
因にさ、錫杖って強化させる事は出来ないのかな?
武器は鍛えて強く出来るみたいじゃんか。
オレの逆刃刀は必要ないけど! 」
玄奘三蔵法師
「 それは私にも存じ上げません。
錫杖を “ 強化する ” と考えた事がなかったので…… 」
マオ
「 錫杖って宝具なんだよな?
強化させる事は出来ないのかな? 」
セロフィート
「 ≪ 大陸 ≫にも依りますけど、宝具や聖具を強化する為には、特別な素材が必要となります。
その錫杖が観世音菩薩の持ち物ならば、錫杖自体を強化させるのは難しいかも知れません 」
マオ
「 でもさ、三蔵さんの武器は錫杖だろ。
錫杖で叩くんだから、丈夫にしないと。
痛んだり壊れたり折れたりしたら大変じゃんか 」
セロフィート
「 コーティング魔法を掛ければ良いでしょう。
多少は丈夫になります 」
マオ
「 そだな。
どうせならさ、三蔵さんが身に付けてる法衣にもコーティング魔法を掛ければ、防御力も上がるんじゃないかな? 」
セロフィート
「 旅立ちの前に新しく用意した装備品には既にコーティング魔法を掛けてます。
“ 丈夫にする ” と言っても破れ難くしたり,痛み難くして長持ちさせるだけです。
防御力は上がりませんよ 」
マオ
「 そうなんだ……。
防御力を上げるには頻繁に防御力の高い法衣に買い替えないと駄目って事か…… 」
セロフィート
「 買わなくても丈夫な素材を入手して作れば良いです。
例えば……牛魔王さんの牛革とか 」
マオ
「 牛革で作った法衣……。
何か嫌かも…………。
牛臭くないかな? 」
セロフィート
「 作ってみなければ分かりません 」
マオ
「 態々作る必要も無いだろ~~。
三蔵さんもドン引きしてるよ…… 」
セロフィート
「 そうです?
法衣が無理なら袈裟にします? 」
玄奘三蔵法師
「 い、いぇ…………。
牛革の袈裟も遠慮たいです…… 」
セロフィート
「 そうです?
折角ですし、マオキノに袈裟を作りましょう 」
マオ
「 袈裟を身に付けたマオキノかぁ!
きっと似合うと思うな!
絶対に可愛いよ!! 」
マオキノ
「 牛革の袈裟は美味しいですエリ? 」
マオ
「 袈裟は食べ物じゃないよ。
食べたら駄目だからな! 」
マオキノ
「 残念ですエリ~~ 」
セロフィート
「 牛革製品も≪ 都 ≫の特産品としてで売り出しましょう 」
マオ
「 都民は牛革製品を買うかな?
牛魔王から剥いだ皮を使うんだろ? 」
セロフィート
「 約39年も苦しめられたのです。
売れると思いますけど? 」
マオ
「 倒された牛魔王も自分の皮が牛革製品に生まれ変わって、≪ 都 ≫で販売されるなんて思いもしてないだろうな~~ 」
何故か牛魔王の牛革の件で話が盛り上がる。
牛魔王──、狂暴化した後は完全に “ 加害者 ” になっちゃって、長い年月に渡り、都民達を苦しめた悪党になっちゃったけどさ、元は鉄扇公主が始めた蘇生実験の “ 被害者 ” だって事を忘れたら駄目だよな。