⭕ 攀盖の都 2
──*──*──*── 温泉宿の何処か
キノコン
「 セロフィート様が御越しになりましたエリ! 」
セロフィートをとある一室へ案内したキノコンは、セロフィートの為に用意していたソファーへ誘導する。
予め用意していた茶菓子とティーセットを一切の無駄も無い動きでテーブルの上に出す。
淹れたての紅茶をティーカップの中へ静かに注ぐと壁に徹する為に物音を立てずに下がる。
セノコン
「 セロ様! 」
セロフィート
「 久しいですね、セノコン。
元気そうで何よりです 」
セノコン
「 はいですエリ… 」
セノコンは絶対主であるセロフィートを前にして敬礼をするが、キレが無い。
セノコンはセロフィートに何かを隠している様だ。
セロフィート
「 セノコン、ワタシも鬼では無いですし、言い訳ぐらいは聞きましょう 」
セノコン
「 はいですエリ…。
有り難う御座いますエリ 」
セロフィート
「 歯切れが悪いですね。
御世話係りの誼です。
全力で言い訳してみなさい 」
セノコン
「 セロ様…… 」
笑顔を絶やさず微笑んでいる絶対主に底知れぬ畏れを感じるセノコンは、覚悟を決めると口を開いた。
==*==*==*== 回想シーン
3ヵ所目の関所がある≪ 都 ≫の正門が、バタンッと豪快に開けられた。
正門から入って来たのは、1体のキノコンだ。
キノコンは袈裟を着けている。
≪ 都 ≫で好き勝手し放題の妖怪達の視線が1体のキノコンに向けられる。
羨望──ではなく、怪しむ視線を向けられた1体のキノコンは、手に持っている錫杖をシャンシャンと鳴らす。
キノコン:本体
「 ボクは普賢菩薩の信託を受け、観世音菩薩の錫杖を届ける為に≪ 天竺 ≫を目指している玄奘三蔵法師エリ!
頭が高いエリ!
控えおろぉ~~~~エリ!! 」
堂々と宣言をしたキノコンに対して、妖怪達は「 絶対に違うだろ!! 」っと一斉に叫んだ。
「 人間じゃないじゃないか!! 」とか「 何処が三蔵法師なんだ!! 」とか「 言葉を喋る化け物め!! 」という至極最もな言葉がキノコンに向かって飛び交う。
キノコンは錫杖をシャンシャン──と2回鳴らす。
キノコン:本体
「 静粛にするエリ!
ボクの心は、心無い言葉の攻撃に痛く傷付いたエリ! 」
高々と言葉を発すると、錫杖を掲げてクルクルと回し始める。
ピタッと錫杖を止めると、キノコンは声を高々にして叫んだ。
キノコン:本体
「 キノコ~~~~ン、ファンタジーパワ~~~~、メタモルフォ~~~~ゼ、エリ!! 」
キノコンが叫ぶと錫杖が眩しく輝き出す。
因みに神将の能力ではなく、7色に光るLEDペンライトの光である。
何処からかハモリの美しい「 メタモルフォ~~ゼ~~ 」というバックコーラスが聞こえて来る。
妖怪達は何処から聞こえて来ているのか分からないバックコーラスにビビリ始めたが、バックコーラスはミニマムサイズで身を隠しているキノコン達がハモらせているだけである。
キノコンは錫杖を光らせている間に分裂をして分身体を増やした。
錫杖の光が消える頃には大量のキノコン達が一斉に妖怪達に向かって走り出しており、容赦なく襲い掛かっていた。
何処から現れたのか分からない大量のキノコン達に理由も分からぬまま追い掛け回される羽目になった妖怪達は慌てて逃げ惑うが、可愛い見た目に似合わず意外にもキノコン達の動きは速い。
正体不明のキノコン達に次から次へと襲われ、無惨にも喰われて逝く大勢の妖怪達。
≪ 都 ≫の中はキノコンに喰われない為に逃げ惑う妖怪達がパニックを起こしていた。
妖怪の中には武器を手に取り、キノコン達に立ち向かう血気盛んな者も居たが、あっさりと倒されてしまいキノコン達に容赦なく喰われてしまう始末である。
ガッツリ,バッチリと武装した牛魔王の配下達──否、現在は鉄扇公主の配下達もやって来るが、キノコン達には敵わない。
キノコン達の強さには、ガッツリ,バッチリと武装した戦闘に長けた妖怪達ですら太刀打ち出来ないのだった。
キノコン:本体
「 これが、玄奘三蔵法師の能力エリ! 」
──*──*──*── 温泉宿の何処か
セロフィート
「 随分と羽目を外し、楽しんでいた様ですね 」
セノコン
「 はいですエリ……。
この後、齊天大聖孫悟空が現れましたエリ 」
セロフィート
「 齊天大聖孫悟空ですか。
本当に鉄扇公主さんの味方として現れた様ですね 」
セノコン
「 はいですエリ。
齊天大聖孫悟空は、“ めちゃんこ強かった ” と報告を受けてますエリ。
分身の術を使ったり,武器の棒を自在に伸縮したり,大猿に変身したり,大暴れしてましたエリ 」
セロフィート
「 苦戦した様ですね 」
セノコン
「 はいですエリ。
巨大化した齊天大聖孫悟空には “ 大苦戦した ” と報告を受けましたエリ 」
==*==*==*== 回想シーン
今は亡き、牛魔王の城からギューンっと空を飛ぶ雲に乗って現れたのは、燃える様な赤色を基調とした齊天大聖孫悟空だ。
齊天大聖孫悟空は手に持っている如意棒を自在に伸縮させ、操りながら妖怪達を喰らうキノコン達を容赦なく蹴散らし始める。
然し、キノコン達も蹴散らされっぱなしではない。
齊天大聖孫悟空に向けて、キノコン砲を容赦なく放つ。
齊天大聖孫悟空
「 錦斗雲──!! 」
錦斗雲
「 あぁ~~~~~~い!
任せんシャインマスカットぉ~~~~!! 」
齊天大聖孫悟空は錦斗雲と心を1つにした見事な連携でキノコン砲を巧みにかわす。
キノコン達も負けじとキノコン砲を放つが、齊天大聖孫悟空と錦斗雲のコンビプレーには無意味な様だ。
キノコンは錫杖を天に掲げるとクルクルと回しながらシャンシャンと鳴らす。
キノコン:本体
「 世間に大乗佛教を残された釈迦牟尼佛よ!!
ボクに信託を下した普賢菩薩よ!!
観世音菩薩の錫杖に宿りし、多くの神将達よ!!
玄奘三蔵法師であるボクに新しい能力を与え賜恵え~~~~エリ!
プリティ~~~、ファンタジ~~~、ミューテーション、クライシスぅ~~~~、メーーーイクアップ、エリ!! 」
キノコンが天へ高々と叫ぶと、キノコン達の身体が巨大化し始める。
ゴ◯ラ並みに巨大化を果たしたキノコン達は≪ 都 ≫にヤバい胞子を撒き散らしながら、齊天大聖孫悟空と錦斗雲に目掛けて超特大なキノコン砲を連続で放つ。
齊天大聖孫悟空
「 チッ、とんでもねぇ化けもんじゃねぇかよ!!
錦斗雲、俺達も巨大化するぜ! 」
錦斗雲
「 あぁ~~~~い!
合神すっゼラチンスライスぅ~~~~!! 」
齊天大聖孫悟空 & 錦斗雲
「「 齊天合神っ!! 」」
同時に叫んだ齊天大聖孫悟空と錦斗雲が光出す。
眩しい光が消えると≪ 都 ≫に燃える様な赤毛を靡かせる巨大な赤猿が姿を現した。
大猿孫悟空は両手に炎を出すと、巨大化したキノコン達に炎の玉をぶつける。
然し、巨大化したキノコン達には炎の玉は効かない。
巨大化したキノコン達と大猿孫悟空の果てしない攻防戦が続く事になった!!
──*──*──*── 温泉宿の何処か
セノコン
「 壮絶な戦いだった様ですエリ。
数では完全に勝ってましたエリ。
でも──、大猿孫悟空も分身の術を使い、数を増やして応戦して来ましたエリ。
巨大化したキノコン達には制限時間がありましたエリ。
大猿孫悟空にも制限時間があったらしく、痛み分けになりましたエリ。
その後、キノコンが齊天大聖孫悟空がぶつかり合いが始まりましたエリ 」
==*==*==*== 回想シーン
大猿孫悟空は自分から抜いた赤毛に妖術を使い、自分の分身体に変えると、巨大化キノコンにぶつけた。
大猿孫悟空達と巨大化キノコン達との壮絶な戦いが続く中、巨大化キノコン達のタイムリミットが訪れ、巨大化が解けてしまう。
みるみる内に縮んでいくキノコン達。
好機が訪れたと思った大猿孫悟空達にもタイムリミットが訪れ、決着が付かぬまま勝負は持ち越される事になった。
大猿孫悟空の齊天合神は切れていない。
大猿孫悟空は袈裟を身に付け錫杖を持つキノコンに狙いを付けた!!
巨大な炎の渦を胸の前で作ると大猿孫悟空はキノコンに向けて炎の渦を放つ!!
因みにキノコン達の相手をしているのは、身体の縮んだ大猿孫悟空達である。
キノコンは錫杖を前に出し、シャンシャンと鳴らすと再び叫ぶ。
キノコン
「 キノコ~~~ン、ファンタジーーパワ~~~~、コズミーーーーック、エボリューーーション、アタッ~~~~ク、エリ!! 」
錫杖が7色の光を放つと魔法のステッキへと変貌し、炎の渦を掻き消した!!
キノコン
「 キノコ~~~~ン、ファンタジーパワ~~~~、ミスティ~~~~クス、メイクア~~~プ、エリ!! 」
「 ファンファンファンタジ~~ 」と美しくハモるバックコーラスが聞こえ始める。
バックコーラスが歌われる中でキノコンの身体はグングンと巨大化し、筋肉ゴツ盛りの姿に変わる。
キノコン
「 おまいらを~~~~全員~~~~踏み潰すエリぃ~~~~ 」
可愛さの欠片も消えた野太い声で巨大化したキノコンが動き出す。
キノコン
「 地鳴らし発動エリぃ~~~~ 」
幾つもの足を器用に動かし、キノコンは大猿孫悟空に向かって進む。
筋肉ゴツ盛りのムキムキマッチョ形態となったキノコンには流石の大猿孫悟空も力でも敵わず、力押しで負けていた。
キノコンは地面に押し倒した大猿孫悟空の正面に向けて超特大のキノコン砲を放った!!
キノコンの口から放たれた強力なキノコン砲を真正面から直撃した大猿孫悟空は大ダメージを受け、齊天合体が解けてしまう。
齊天大聖孫悟空が両目をグルグルと回しながら気を失った事で、大猿孫悟空達も姿を消した。
両目を回して無防備な状態で伸びている齊天大聖孫悟空はキノコン達に捕獲されるのだった。