表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥になる  作者: 雨世界
9/11

9 愛 ラブ

 愛 ラブ


 愛だよ。愛。


 ……愛。


「人生嫌なこともたくさんあるさ。でも思い出してみて。楽しいこともたくさん、たくさんあったはずだってね」と、あなたはあなたの横を飛んでいる私と子供の鳥に向かって、にっこりと笑って、そう言った。


 私はそのあなたの言葉を聞いて、その通りだと思った。


 青色の空の中を自由に飛ぶ。


 私とあなたと子供の鳥の三羽の鳥は、ほかにどんな鳥の姿も見えない、青いその空の中をゆっくりとしたスピードで飛び続けた。


 空は永遠に続いていた。(それは、まるで私の憧れた海のような風景だった)


 あなたは両親を亡くしたばかりの子供の鳥のために(あるいはもしかしたら私のために)アクロバット飛行を見せてくれたり、たまに凄い高度の高い場所を飛んだり、じゃなくにとても引く場所を飛んだりして、ずっと落ち込んでいる子供の鳥を楽しませていた。(そして時折、子供の鳥の飛ぶ姿を見守ったり助けたりした)


 わたしも少しだけ、そんなあなたの空を飛ぶ姿の真似をしてみたりした。それはとても幸せな時間だった。


 私はずっと子供のままで、将来のことなんて、あるいは自分たちがどんな大人(人間、あるいは鳥)になるかなんて、そんなこと全然、想像することもできなかった。


 そんな私が急にあなたと出会い、そして子供の鳥と出会って家族になった。(それをある人は家族の真似事だというのかもしれないし、もしかしたら、その通りなのかもしれないけれど、私たちは確かにこのとき家族だった)


 私が白い鳥で、あなたが黒い鳥で、子供の鳥が青色の羽色をした少し変な三人家族の鳥。


 私は家族を持って、きちんとした大人になられければいけないと思った。


 そして私はこのとき、生まれて初めて『自由になった』と思った。


 私は自分の力で、自由にこの青色の空の中を飛んでいるのだと、心の底からそう思ったのだった。


「この先、どこか行ってみたいところはある!?」先頭を行くあなたが後ろを振り返って私と子供の鳥に向かって、(風が吹いていたから、少し大きな声で)そう言った。


 子供の鳥は私の顔じっと見た。


 私はそんな子供の鳥の顔をじっと見返したあとで、あなたの顔を見て、「海!! 私海を見たことがいままで一度もないの!」と私はあなたに大きな声で返事をした。


「海を見たことがない!? それはもったいないね。よし、決まった。これから三人で海を見に行こう!」とあなたは言った。


「……わたしも海を見たことない。だから海を見てみたいです」と子供の鳥は私を見て、嬉しそうな(でもちょっとだけ控えめな)声でそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ