この世のすべてを飲み込めるという傲慢さと万能感を持つ私、それでいて身近な人の死に痛む、普通の少女でしかないという自分もいる。けど、とりあえず今はまだ、普通の女の子でいたい。
けど。
けど、この世のすべてを飲み込めるという傲慢さと万能感を持つ私、それでいて身近な人の死に痛む、普通の少女でしかないという自分もいる。
『……能力が目覚めた、能力に魅入られた……かもしれない』
でも、でも今は、今の自分を好きでありたい。
とりあえず今はまだ、普通の女の子でいたいのだ。
これが紛れも無い本音。
「どした? いきなり黙りこんで?」
未來の発言によって考えが霧散した。
「ううん。別に」
適当に濁す。
「でもよ、終りがあるからこそ、終点が決まっているからこそ今、そして未来を楽しもうとするんじゃないかな?」
確かにそうかも。
しかし、
「そうかもね。でもさ、楽しいばかりじゃないでしょ? そんな楽しもうとしている未来、それこそ明日にでも裏切られたり、傷つけられるかもしれないじゃないの?」
先ほどまでの考え、自分の能力の万能感を今のところは悪と仕立てたいために、あえて未来についてネガティブな見解を示した。
「でも、明後日には慰められるかもよ? その次の日には元気になる、そしてその後はさらにいいことがあるかもしれないじゃん?」
「……」
「結局今という瞬間を癒してくれるのは未来だけなんだよ。人を慰めることができるのは人間だけなのと同じでね。もちろん動物だとか、好きなものなんかも効果はあるだろうけれど絶対に決定打にはなりえない。だから、時間を癒すのも時間しかないんだ」
なるほど……。
「んで、明日がダメなら明後日、明後日がだめなら、さらに次の日がどうにかしてくれる」
「うん」
「華子の言うように未来を変えることでおかしな流れになることだってあるかもしれないけれど、そうなったとしても絶対に楽しみだとか希望とかはあるはずだ。それならやりたいようにやらなければ損だしもったいないと思うな、あたしは」
「未来って、そんなに自由で決まっていないものなのかな?」
「ああ、そうだとも! だから今を全力で生きるんじゃん!」
そういうと未來は力強い笑顔で私に微笑みかけた。
確かに未來の言う通りかもしれないな。
それにあの不思議な存在も言っていた。
知りたければ能力を使え、と。
使わないことにはわかることがないって。
それは未来にしても同じで、決めつけて閉ざしてしまえばそれまでなのかもしれない。
進むもよし、やめるもよし。
「でも急ぐことはないさ。ゆっくりとやっていこうぜ。未来に向かってさ! そんなことを気が付かせてくれたじいちゃんのために弔砲だ!」
そういって未來がけたたましく自転車のベルを連打した。
ん? ベル?
「そうね。あんたの言うように未来は決まっていないかもしれないけれど、いま一つだけ決まっている未来を見つけたよ」
「あん? なにそれ?」
「それも直近であんたに訪れる不幸」
「は? なんのことだ?」
「その自転車ってさ、私のじゃない? お前の自転車ってベルなかったよね? で、チェーンも外れたって言うけどこの間の朝チェーン外れていたのも……」
「えっ? あっ? マジ?」
あわてふためく未來。
きつく睨みつける。
「それじゃお先に!」
そう言うと未來は自転車を押して走り始めた。
「こら! 待て!」
追いかける私。
でも、一定の距離のままつかず離れずで家路へと走る。
未來はいくらでも私を引き離せるぐらいの体力はあるはずだけれど、お互いの声が届き、表情を見ることのできるスピードを維持しながら逃げている。
今、未來との心の距離感も大体こんな感じなのかも。
近いけど、離れている。
離れているけど、近い。
双子の不思議な距離感。
おじいちゃんの言っていた水と油な間柄。
そして、あの不思議な存在とで感じた磁石のような……いや、これは考えまい。
なにはともあれ、とってもいい感じのポジションだと思う。
でも明日はどうなっているかはわからない。
もっと近づくかもしれないし、離れるかもしれない。
それに未來の言うように、他にもいいことも悪いこともあるだろう。
そんな未来をまとめて受け止めてみるというのも、もしかしたら悪くはないかもしれない。
なんてことを思った。
第一話 終わり




