「華子はな、体育以外の成績は全部5なんだぞ! 参ったか、このやろ!」「あのな、成績が5とか言っても伝わる相手じゃないだろうよ、どう見ても……」
戦い、といえば未來が言っていたっけ。
目に見えるものも見えないものも含めて打ち勝つって。
そのために鍛えているんだって。
今がまさにそんなときなのかも。
そしてちゃんと実践している。
その点私はと言うと……。
「お、おらおら~! こんちくしょ~!」
祓串で生き物のほうを指しながら、まるで意味のなさないセリフをわめいている。
自身への発破をかける意味もあるのだろう。
けど、言葉はビブラートして頼りなく、祓串の先端もプルプルと震えている。
いまだ恐怖に支配されている。
それは私とて同じなのだが。
その時、
「ふふ、威勢がいいことだ。それにしても珍しいこともある。まさかこんなタイミングで変わり種に会おうとは」
『変わり種?』
「ざ、ざっけんなぁ! て、て、テメェはなにもんだぁ、この、この野郎! あれ?」
『えっ?』
未來も気がついたようだ。
いきなり恐怖の呪縛から解放されたことに。
張りつめ、がっちりと五体を拘束していた恐怖が一気に解けた感覚。
金縛りが体から引いた感じに近いかも。
まるで恐怖が体から抜けていった。
緞帳が開くように、きれいに。サーっと。
これはどういうことなの?
「あ? ありゃりゃ? なんだ? あたしの手、震えていないぞ?」
確かに。
私もそうだが、未來の体から伝わっていた震えも完全に止まっているのがわかった。
その途端、未來が威勢よくまくし立てる。
「おらおらぁ! よくもさんざんビビらしてくれたな! 勝負しやがれこんちくしょう!」
「解放してやった途端に元気のいいものだな。勝負したいのか? それなら先ほど以上の恐怖の淵へと叩き込んでやろうか?」
「あっ、いや、それはいいっす。やっぱり今のはなしで!」
軽っ!
何たるこけおどしっぷり……お前、見えないものにも打ち勝つために鍛えているんじゃなかったのかよ、って、私もいつものように未來の態度に突っ込みを入れられるぐらいの余裕ができたようだ。
やはり、何らかのことをされたのだろう。
この不思議な存在に。
「まぁよい。それよりもこれで話がしやすくなったろう? 貴様らに興味がある。少しばかり話そうではないか」
共鳴、なのだろうか?
それとも反発?
まるで磁石のような不思議な距離感。
ここへ来る時に感じとったあの違和感は、もしかしたらこの不思議な存在も感じたことなのかも?
「とはいえ人間程度の知能レベルでは会話が成立するかどうか」
確かに。
未來が言うように私たちの能力が超越しているのは間違いないこと。
けれど、その能力も知識や身体にまでは影響を与えてはいないように思う。
今のところは。
「なめんな、こら! お前の話くらい理解できるわ! このボケが!」
えっ?
未來、それって本当?
なんか、変わったかも。
すごく頼もしいんだけど?
この数時間の出来事で、いったい何があったわけ?
でも、確かに今のあんたなら、なにかをできそうな予感すらあるよ。
「受けて立つぞ! ここにいる華子がな!」
「って、私かい!」
やっぱ、コイツ、ダメだわ……。
そんな私に構わず未來が息巻く。
「華子はな、体育以外の成績は全部5なんだぞ! 参ったか、このやろ!」
「あのな、成績が5とか言っても伝わる相手じゃないだろうよ、どう見ても……」
でも、興味はある。
もしかしたら私たちの能力に関して知っていることがあるかもしれない。
まぁ、この不思議な存在が言うように話を理解できればの話だけれど。




