聖なる寸法、神に仕える仕立て屋
聖教会領の外れにたたずむ、一軒の老舗仕立て屋。
その名も――《クロード洋装店》。
扉が開き、神聖な空気が流れ込む。
入ってきたのは、一人の少女。銀髪の聖女、セラフィーナ・ホープ。
「すみません、あの……聖務用の新しい衣をお願いしたくて……」
奥から現れたのは、ひとりの中年男。
名はクロード・ルボア。腕は一流、目は節穴ではない、芸術と布地の狂信者。
「……ああ。あんたが“聖女”さんか。なるほど……素材が違う」
彼は、一目で悟った。
これは――“服のための体”だ、と。
「まずは採寸だな。だがな、普通の服と聖衣は違う。魂の流れ、神気の流動、肌の質感、体のライン……すべてが一致しなければならん」
「……じゃあ、服を脱いだ方がいいですか?」
「……へ?」
「祈りのドレスですから……神様にも隠し事しちゃいけないかなって。大丈夫ですよ?」
そう言って――セラフィーナは、
魔法でふわりと衣を吹き飛ばした。
中年仕立て屋、クロード、視線停止。
「…………」
まばたき、忘れた。
「ど、どう……ですか?」
目の前には、神の祝福により造形された若く柔らかな肉体。
ほどよく丸みを帯びた胸、その根元まで見えるくびれ。
スラリと伸びた足、そこから繋がる尻――これが聖女?
「だ、だがその……踊ったりされることもあるんだろう?祈りの舞とか……」
「はいっ!じゃあ、少し舞ってみますねっ」
そして――
セラフィーナ、全裸でダンスを始めた。
腕を広げ、ゆっくりと腰を回し、優雅に一回転――
乳房がふわり、腰がくるり、お尻がぷりっ。
無邪気で、無自覚で、破壊的。
「……これが……聖なる罰か……ッ!」
クロード、鼻血。スケッチ。震える手で鉛筆を走らせる。
「くっ……あの角度……あの光の加減……神が今、布地になった……!」
一日中。
クロードはスケッチを続けた。セラフィーナは踊り続けた。
太陽が昇り、沈み、夜が訪れたころ――
「……すごいですね、クロードさん。ずっと集中してるなんて」
「いや……君のせいで今日一日、俺は神に試された……」
クロードはそっと、自分の右手を握りしめた。
その震えは、信仰か、煩悩か。
⸻
翌日、ネオにて
ネオ「なんでその服、謎にフィットしてるしエロくない!?」
セラフィーナ「えへへ、全部測ってもらいました!」
メルティア(距離1mで)「……“どこ”まで測ったか、詳しくどうぞ」
午後。ルミナリアの仕立て屋「スタイル神話」に再び呼ばれたセラフィーナは、天使のような笑顔で帰ってきた。
「ただいま戻りました~」
「おかえり、セラフィーナ。あの……昨日も服の採寸、したよね?」
ネオがなんとなく警戒しながら聞く。するとセラフィーナは、首をこてんとかしげて、
「はい。でも“測り忘れた神の恩寵ライン”があるって言われて……今日は“とっても大事なところ”を追加で測られましたっ!」
「……神の恩寵ライン?」
そのワードにまず引っかかったのは白鐘メルティアだった。彼女はメガネの奥で目を光らせて問い詰める。
「それ、解剖学的にはどの部位に該当するのかしら?」
「えっと……よくわからないですけど、仕立て屋さんのメジャーが、くすぐったくて……思わず声、出ちゃいました!」
「声……!?」
ネオとメルティアが同時にズッコケた。
「おい、ちょっと待て! それ、どこをどう測ったんだよ!?」
「セラフィーナ、それ……どこ測ったの!?」
「ふふ……神秘は秘密です♪」
セラフィーナは手を合わせて微笑み、きらきらした目で空を見上げた。
ちなみに、仕立て屋のおじさんはその日の営業を全キャンセルして、虚ろな目で「測った……測ってしまった……神の恩寵ラインを……」と呟いていたとかいないとか。




