68話・ロゼッタ、違うんだよ、私はノーマルなんだよっ!?
「……で、連れて帰ってきた、と」
ギルドで討伐した魔物、オルトロスの牙を換金したらなんか凄い大事になりかけた。
何しろF級冒険者がレベル200が推奨の邪神の洞窟に出現するオルトロス倒したってことでなんかギルド中の人がこっち見て来たんだよ。
慌てて気の良い冒険者から分けて貰ったと嘘言っちゃった。
で、他の素材はさすがに売ったらさらに騒ぎが起きそうなので仕方なくアイテムボックスの肥やしにせざるを得なかったんだよ。
後でコネ作って秘密裏に売りさばくしかないんだよ。
オルトロスの牙、ゴブリンの魔石と比べモノにならないくらい良い値段したし。
さすがに彼らの魔石は取れなかったなぁ。サポーターを連れて行くのもさすがにサポーターが危険だったから出来なかったし。
あ、そうか。今度からは邪神ちゃんにお願いすればいいのか。
と、まぁそんな感じで大して儲けも無く昼になったから帰ってきた。
んで、昼を過ぎたらいつものようにボーエン先生が来たので邪神ちゃんを紹介ついでに今日やったことを報告したのである。
「俺はそういう趣味はないし、魔族内でもそういう奴はいるから理解しているつもりだが、お前が女好きとは思わなかったな」
「へぁ!? 違いますよ!? 私ノーマル。とっても普通の悪役令嬢だよ!?」
「普通の悪役令嬢ってなんだよ? 令嬢でいいだろ。まぁいい。おそらく知らなかったんだろうからな」
知らなかった? 何が?
「いやな。教えといてなんだが、テイム魔法って闇属性の淫魔法に属してんだ」
!?!?!?!?
「クク、ようするにぃや主様、主様はぁウチを人には言えへんあーんなことやこーんなことするためにテイムしたってぇことやぁ」
「ええええええっ!!?」
「まぁ、例外も無いではないが、基本テイムを使うのは男性なら女性を自分の言いなりにしてしまいたいという欲望を持つ奴だし、女性の場合も性欲処理に使う男性型魔物を安全に抱きたいって奴が使うからな」
な、な、なんでそんな魔法になってるのぉーっ!? テイムってただ魔物をテイムするだけじゃないの!?
「奴隷売買にも使われてるだろ? 基本あれもテイムだぞ? この国では奴隷制自体廃止されてるみたいだが他の国は結構いるぞ?」
おお、奴隷は居ないのか。それはよかった。奴隷落ちエンドは消えたんだよ。
「で、でもでも、女性が女性テイム事例はあるんでしょ?」
「ああ。あるにはあるぞ? ただ、その、一緒に生活している内にそういう関係になるらしいが……」
ぷぎゃーっ!?
「クック。主様ったらぁ、ウチをそんな目で見つめとってんなぁ。嫌やわー。もー、言うてくれたらウチはいつでも差し出して、ええんよ?」
やめろーっ!? 伏し目がちに言わないでっ! ボーエン先生がまさか本当にそっちの気が!?
とか間違った常識覚えちゃうから!
「でも、それよりも問題があるな」
「問題? 何かありました?」
「ああ。その、ライオネル王国の姫巫女には出て来なかったんだろう? その邪神洞窟。それとそこの邪神の……」
「キーリクライク・プライダルや」
「そのキーリクラ……長いな」
「キーリって愛称呼ぶことにしたんだよ?」
「じゃあそれでいいか、キーリの……」
「主様以外に呼んでいい名前とちゃうで? 魔族のぼん風情が、縊るで」
キーリ、私以外に厳しいね。
「うぐっ、で、では邪神でいいのか?」
「いいじゃんキーリで。ほらキーリ、一応私の魔法の先生だから上司なのだよ」
「チッ、ではキーリでかまへんえ」
「うぅ、なんかすっげぇ上から目線で舌打ちされたんだが……ま、まぁいい。邪神は出て来なかった、でいいんだよな?」
そうなんだよね。確かに邪神は存在していなかったはずである。
むしろ邪神が居そうなゲームで言えば、姫巫女より後にあったRPGゲームだろうか? 確か男性主人公でテイム能力者だったよね。んで、女の子系の魔物をテイムして仲間にして行ったり、仲間の女の子と会話したりデートしたりで魔王を打ち倒すゲーム。
隠し要素として魔神と闘うイベントがあってもおかしくないんだよ。
姫巫女でのギルドってほぼほぼ選択肢があるだけのアドベンチャーパートだったし。
んー、どういうことだー?
「まぁ、ピースが足りないからこれ以上考察しても意味はねぇだろうな。でも、そいつをテイムしたことは他の奴に言わない方がいいな。変な誤解されるぞ」
「わ、私はノーマルなんだよ!? 無実だーっ」
「主様主様、見て見てー。ほら淫紋~」
下腹部を見せて来る邪神ちゃん。やめろ、見せるなっ。はしたないっ。
「キーリ、その印、むやみに人に見せるの禁止、これ命令ですっ!」
「あぁんもぅ、いけずやわぁ」
「遊ばれてるな……お嬢」
前途多難だ。私とボーエン先生は同時に溜息を吐くのであった。




