42話・ロゼッタ、リオネッタはゴミ収集癖があるのかな?
「それから……と、そろそろ良い時間になりましたね」
遠くから鐘の音が聞こえる。
この回数は鐘四つだから夕方の四時くらいだ。
まぁ、妥当な時間だな。
家に帰りつくのが五時頃までと考えればこれ以上先生を引き留めるのも悪い。
六時にまでなると日が落ちるので男性であろうとも貴族は滅多に外に出ることはない。貴族街にいる平民などもっと危険だ。
まぁ、馬車移動は護衛が沢山いるから行うだろうけども。
なんでかって言えば夜盗やら暗殺者の時間だからだ。
夜中の歩きは危険極まりないのである。
とりあえず早朝までは出歩かないに越したことはない。
兵士達が見回っている平民街とかだと深夜でも少しは安全だし、飲み屋街ならさらに人目があるので安全だ。
でも絶対に貴族は外に出ない。余程後ろめたいことやってる貴族じゃなければね。
道中の暗がりで闇打ちの危険と拐わかしの危険が付きまとうからだ。
一応身分隠してるとはいえ魔族の王子だもんね。
ボーエン先生が帰ると本日のお浚いとして日記帳にいろいろと書き込んで行く。
ん? どったのリオネッタ? そんな凝視して?
日記だよ? そこまでおかしなことは書いてないよ?
「本日のお浚いですか?」
「ええ。何を話していただいたか、と思いついたことは走り書きしたから。それをまとめようと思ってね」
「っ!? で、では、そちらの走り書きメモは写し終えたら終わり、ですか?」
「ええ、そうだけど?」
変な事聞くわねリオネッタ。
「で、でしたら、書き終わりましたら私めが処分しておきます」
「そう? まぁ、いつも通りだから問題無いけれど? 変なリオネッタ」
写し終えたメモ帳を回収したリオネッタ。なんか凄い宝物手に入れたみたいな顔でメモ帳を握りしめていた。
それ、ゴミだよ? ゴミをそんなに大切そうに持たなくてもいいんだよ?
まさか私が書いた紙屑だから嬉しいの? リオネッタは私のストーカーだったの!? 女同士だなんていけないわ。いやん。
「お嬢様。何変な動きをしてるんですか?」
ちょ、引かないでよリオネッタ。
ただ両手を頬に当てて腰をくねらせながら照れていただけじゃない。
なんでそんな気持ち悪いモノを見る目になるの!? ストーカーじゃなかったの!? ノーマル? おかしいな?
リオネッタにいらなくなったメモ用紙を渡し終え、日記を清書し終えた私は、いつものように食事を終え、お風呂に入って一日を終える。
ふふ、魔法をついに覚えられる。
楽しみですわ、楽しみですわ。楽しみですわーっ。
っと、寝る前に今日もOL時代の知識思いだしとかないと。
毎日ちょっとづつでもこの世界のこと思いだしていくことでちょっとした小ネタとか忘れてた重要案件とか思い出せるんだよ。
えーっと、昨日までに主要人物の書き出しは済んだから、今日は王族について思いだして行こうかな。要するに第一王子近辺の諸事情だね。
まず、基本情報として王国名はライオネル。国王はグランザム、第一王子はエリオット、第二王子がガイウス、第三王子がリオネル。
第一王子の婚約者がマルチーナ、第二王子の婚約者がエレオノーラ、第三王子の婚約者が、ロゼッタ。
これが王族に関する基礎情報だ。
そして、国王は王子にそろそろ次期国王としての王族教育を始めようとしている。
ゆえに、第一王子であるエリオットは学校卒業と同時に王族教育のために城から出て来なくなるのである。
ただし、ヒロインちゃんが王子の好感度を上げてる状態だと、一年後の卒業が終わった後でもたびたびヒロインちゃん周辺で見かけるようになる。
どうも王族教育が辛くて暇潰しに市井に抜けだしてるようなのである。
さてそんな第一王子様には婚約者のマルチーナが居る訳だけど、彼女は物語開始前に第二王子とロゼッタに毒殺されてしまうのだ。
全員での会食があった時になるので、そういう時があれば私も参加してるから気を付けておかないと。
私が協力しなくても第二王子なら確実に動くだろうし、物語補正とかあれば王子から私に接触して来る可能性だってあるのだ。
自分が王になるために第一王子、つまり自分の兄を失脚させようとしてるんだから、野心塗れの弟君は恐ろしいね。
しかも婚約者のエレオノーラさん、まさかのとばっちりで何もしてないのに一緒に幽閉されちゃうんだよ。
第一王子エンドの場合、第二王子の企みがバレちゃうからね。
あれ? でも第一王子以外とヒロインちゃんがエンディング迎えたりしたら、第二王子はどうなるんだろう? もしかして暗殺成功して王様になっちゃうとか?
さすがにそれは危険だなぁ。第二王子は早々にリタイヤして貰った方が良さそうだ。
ちょっと出会うことになったら注意しておかないと危険だな。
最後に、リオネル。
物語には名前すら一切出て来なかった謎キャラクターである。
でも私の婚約者だったりするのである。
ほんと、リオネルはどういう立ち位置になるのだろうか?
ま、私はリオネルが死なないように彼に注視していれば問題は無いだろう。
よし、今日のおさらいは終わり。また明日は明日の私にお任せするんだよ。おやすみっ。