43話・ロゼッタ、魔法解禁
翌日。
いつもの如く朝はラジオ体操から走り込み、午後の魔術訓練のために素振りやらなにやらも午前の部で終わらせる。
よく考えたら外に行く時間が無かったのでセバスに頼んだら使いの者が買って来てくれることになった。大丈夫かな? ヤリ手の婆さんだから気付いたらいらないモノを一緒に買わされてるんだよ? 酷いお人だよ。
お父様に伝えておいてくれるそうで、両親と私の三人分の即死防止のタリスマンを買ってくるそうだ。お金、凄く掛かりそうなんだよ? 高過ぎるなら買わないのも手だからね?
ふふふ、今日は魔法の実践だ。ちょっと基本習うだけだけど実践だ。
そして魔法解禁である。力の調節さえ覚えれば好きに使えるんだもんねーっだ。
先生もびっくりの大魔法創作しちゃうぜ。俺の邪眼が疼いてしかたないんだぜ、だぜぇ。
でも私は元お局OL。既に厨二病には掛かることなくザーマスおばさまとしての成長を遂げたのさ。
そして子供に戻ってしまった。
ゲーム知識をしこたま持ちこんで、子供になってしまった。
身体は子供、頭脳は厨二。もはや病に掛からない方がおかしいんだよ。
ああ、でも、はしたない。はしたないわロゼッタ。
餌を前にした犬じゃあるまいし、待ても出来ずにまっしぐらなんて、そんな。ああ、魔法を使ってしまいそうよ。
早く、早くお越しになって、我が愛しの魔法の先生ッ。
右手を胸元に左手を曲げてから明後日の方向へのばす。
それはさながら歌劇団のように、君を待っているのさ~っと手を伸ばす。
そんな姿をタイミング良くやってきたボーエン先生が発見する、っと。いやん、恥ずかしいっ。
「何を、してるんですか?」
「おほほほほ、ダンスの練習ではないかしら?」
「自分の事ですよね? なぜ疑問形なのです」
「それより先生、今日は実践訓練とお聞きしてますわ。さぁ、さぁさぁさぁ! 魔法の勉強を始めましょう!」
「そう、ですか? では庭に出ましょうか」
っと、言う訳で、ドレスで魔法を習う訳にもいかないので体操服に着替えた。
リオネッタがはしたないからおやめ下さいって縋りついて来たけど運動する時はこれが制服なのよ! とご主人様権限で着させて貰った。
ボーエン先生だって、私のようなチンチクリン相手じゃ発情しませんって。
はっはっは、自分で言っといて自分に大ダメージが……四つん這いで涙を飲むんだよ。orzになるんだよ。
「また、変わった服装ですね……」
ちょっと呆れているような、目のやり場に困っているような顔で告げるボーエン先生。
すぐに気を取り直して庭に出る。
ボーエン先生と体操服の私。そして書記係のリオネッタ。
リオネッタは私の代わりにボーエン先生の授業内容を書き取りしてくれるんだよ。
「さて、では折角です、貴女の魔法の腕を見てみましょうか?」
「え? 基礎から教えてくださるのでは?」
「どうせ魔法は使えるんだろ、お嬢。基本の話をしていたのに、それは知っているといった顔をしていたし、今日についても魔法を撃てるという嬉しさがにじみ出ている。本来は魔法を打ちだすまでしばらくかかるから練習になるんだが。あんた魔法の使い方教えてもそん時に実践しようとすらしてなかったよな? たまに教える貴族のガキ共は体内にある魔力を感じて掌に押し出す形で魔力を外に出すこと、と教えた時点で実践してたんだぜ? なんであんたはそれだけ好奇心塗れの癖に実践しなかった? それはつまり、あんたは既に魔法を使える状態だった。だから試す必要が無かった、違うか?」
うぐぅ、鋭い。
ここは必死に隠すべきか?
いや、もうここで言っちゃうか。ボーエン先生も確信してるみたいだし。
「バレちゃいました?」
「まぁなぁ。どうせ自分で魔法書調べて一度使った口だろ。で、失敗したから教師を雇った。と。調べたが今まで魔術の教師は全部断ってたらしいじゃないか」
そこまで情報探ったのか。
こっちがボーエン先生の素性探ってる間にボーエン先生も私の素性を探っていた、と。
うん、別に調べられても問題無いんだよ。真っ白白白なご令嬢ですから。今は、まだね。
「では、魔法を使わせていただきますわ」
「おう、やってみろ」
どうでもいいですが、さっきまでの教師口調が何時の間にか平民の粗野な口調になってるのは指摘した方がいいんだろうか?
「祖は炎帝に属す下位なる精霊、我願うは球華、我が敵を穿つ一撃を望むッ、ファイヤーボール!」
掌に現れる炎の球。
これだよこれ。これぞ魔法様である。
これからは自由に使える。魔力暴走とかした時もボーエン先生なら何とかしてくれるはず。
「ふむ。基本は出来てますね」
また教師モード戻った!?
ファイヤーボールは魔力を霧散させて消すようにと言われたのでやり方を教わりながら魔法をキャンセルする。これで危険な魔法が出来ちゃった時もキャンセル霧消でお帰りいただけるんだよ!
「ちなみに魔法の詠唱は文ごとに変化をさせることで属性や形状を変えることができます」
ん? どゆこと?
「最初の文をクライェーレではなくクライェーラにしてみてください」
「祖は水帝に属す下位なる精霊、我願うは球華、我が敵を穿つ一撃を望むッ、ファイ……ウォーターボール!」
うわっ!? 最後の詠唱だけ頭の中に自然と湧き上がってきた。
なんだこれ、気持ち悪っ。
「応用詠唱になるので火魔法しか書かれてない方が多いんですよ初期魔道書。と、言う訳で、詠唱については明日勉強して行きましょう」
「あれ? 今日じゃないの?」
「今日一気に教えるのもいいが、直ぐお払い箱にされても金が貰えないだろ。俺のためにも数日掛けさせてくれ」
金が理由かいっ!
いや、まぁいいけども。
そりゃ段階踏んだ方が覚えやすいけども。




