33話・ロゼッタ、登ることはロマンなんだよっ
いつものように朝は運動。
最近いつも以上に動けるようになってきた。
たぶん体力が付いたんだろう。
走り方もスプリンターみたいに太ももあげた走り方が出来るようになったし、短距離ならつま先で蹴る走りで100メートル9秒台を叩きだした。
なんだろう、自分の身体が凄く軽い。
ちなみに9秒台かどうかは計れるものがなかったので自分の体内時計で9秒である。
腹筋も1000を越えたし、腕立て伏せもかなり続けられる。
二時間の筋トレの御蔭でぷっくらしていた身体は徐々にだけど引き締まり、最近は力瘤も見えだした。
このままいけば脂肪燃焼効率の良い身体に生まれ変わるだろう。
流石に筋肉だるまになる気はないので、ある程度しまったら後は衰えないだけの筋トレを行うだけにして別の事をやり始めるつもりだ。
徒手空拳での闘いを想定して中国武術を思い出しながらやってみたり、柔道、空手、ボクシングなどなどスポーツ系もダンスと共にやり始める。
リオネッタを無理矢理参加させて合気道も練習する。
それが終わる頃には昼時で、食事を終えた後は読書の時間。
二時間程読書にいそしみ、外に出て剣術の練習。
折角だからスキルッぽいの練習しよう。
まずはやはりアニメにもなった飛天○剣流剣術かしら?
軽く昇閃墜閃行ってみようか。
名前は分かるけど漢字忘れちゃったなぁ。
まぁ丸パクリもダメだから自分流に変えちゃおう。
見る人が見れば分かる程度で。……自分以外の転生者とかいちゃうんだろうか?
やっぱり主人公辺りは怪しいよね。
あとは攻略対象全員が転生者、みたいな可能性もあるのよね。
ボーエン先生が転生者かどうかは日本語でおまえのかーちゃんでーべーそー。とか書いて見せればすぐわかるだろう。噴き出したら元日本人確定だ。
その辺りだけはしっかりと確認しておいた方がいいかな。日本人なら手を取り合えるかもしれないけどヤバい人だと俺様の女になれ、ハーレムじゃーとかやりそうだから早々御退場願わないと。
チート知識と攻略対象特性で手が付けられなくなる前に排除しなきゃ。
私にとって脅威にならないのなら放置でもいいけど。
おお九頭○もできちゃったよ。さすが異世界。なんかこう、何でも出来そうな気がする。
まぁ身体強化を魔法で行ったから出来たんだけども。
必殺技叫びながら居合抜きでも練習しようかしら? 二段構え確定よ。
剣術の後は軽くストレッチして木昇り。
お嬢様はしたないです。とかリオネッタが言って来るが、登り降りを鍛えるのは必至なのだよ。
身体能力魔法で底上げしてるから高所から落ちてもキャット空中○回転なんだよ。古過ぎかな。
よっと、この木は何度も登ってるからか登り慣れちゃったわね。
次はどれを登ろうかしら?
そろそろ一番大きな木にしようかしら?
いえ、その前に魔法で空中に浮けるスキルを練習した後ね。
万一落下したら大惨事だもの。
じゃあこの後は何をしよう? せっかくだしなんか昇りたいわね。
……よし、家の外壁にしよう。
庭を囲う壁なら二メートルくらいだし、落下しても問題ないわよね?
「お、お嬢様ぁーっ!?」
壁を登り始めた私に驚き何してんだこの馬鹿女っとでも言うような悲痛な声を上げるリオネッタ。
おっと、登れた。
意外と大変だったけどこれはこれで登りがいがあるわね。手や足を掛ける場所が無いのが辛い。腕力で無理に昇ったようなもんだもの。
しかも結構高い。
「ひぃぃ、お嬢様降りてくださいぃッ」
なんかムンクの叫びみたいになってるよリオネッタ。
大丈夫大丈夫、ちゃんと足場はあるから、ほら、綱渡りみたいに歩け……あっ。
「お嬢様ぁ――――っ!?」
なーんちゃって。
片足でバランス取ってはい、大丈夫。落ちてないですよ?
って、リオネッタ!?
あまりにも驚き過ぎたようでそのまま倒れ込んだリオネッタ。気絶してしまったらしい。
うん、ちょっと遊び過ぎたみたい。めんご。
「禁止ですっ」
気絶から起き上がったリオネッタ。
開口一番激オコだった。
オコなの? オコなの? 許してにゃん?
「禁止ですっ!」
ダメらしい。
リオネッタが見てると何でもダメダメにされてしまうようだ。
面倒だけどリオネッタが見てない場所で練習するしかないな。
午後の作業が終わると夕食だ。
相変わらず母と父とは隔絶された食卓だ。
コロナウイルスなどこの世界には無いというのに私のみ密禁止である。
なんでさっ!?
なんで長すぎるテーブルの端と端で食事取るのよ。
やっぱおかしいよ貴族。
両親だけは近接だけどね。私が結婚した暁には絶対に家族の団欒を再現してやるっ。
……あれ? おかしいな。
家族の団欒って、どんなだっけ?
ああ、私、前世も一人身だぁー。泣ける。