29話・ロゼッタ、リオネルがエモすぎてつらたん
しばしの時間を経て、湯浴みを終えた私は清い身体でリオネル様の元へとやってきた。
別に清くなったからって何をするでもないんだけどね。
やっぱり意中の男性の前ではフローラルな女でいたいのよ。私だって女の子ですから。四十路越えても女は女の子なのよ!
リオネル様はどうやらバルコニー……いや、テラス? 庭にあるバルコニーみたいな場所ってなんて言うんだっけ? 東屋? まぁいいや、カフェ用テーブルの場所で椅子に座って待っていたようだ。
落ち着いて紅茶をすすっている姿がまた様になるな、かぼちゃパンツが何とも言えないけど。
両手でスカートを持ち軽く礼をする。
気付いたリオネル様はゆっくりと紅茶を降ろし、ソーサーに置くと、にこやかな笑みを浮かべた。
ああ、ショタの花咲く笑顔、マジ最高っ。
「やぁロゼッタ。また会えて嬉しいよ」
「私も、リオネルと会えて嬉しいわ。お父様に酷いこと言われたのでしょう? 大丈夫だった?」
「あはは、アレはさすがに驚いたよ。でもロゼッタがこけてしまった時助けられなかったのは確かだしね」
よかった。アレで縁が切れるってことにはならなかったようだ。
私はリオネル様の対面に座りティータイムに参加する。
側面にはリオネッタと別のメイドが立ち、私かリオネル様のカップにある紅茶が少なくなるとティーポットから新しく注ぐ。
それまではただただ佇むメイドさんだ。用事が無ければ主人たちの会話が終わるまで立ちっぱなしらしい。
メイドって凄く大変な仕事だね。私は絶対やりたくないな。
リオネル様がお願いしてきたら服着るくらいはしてもいいけど、ふふ、ロゼッタの身体でメイドさんか、それはちょっとやってみた……いや、眼つきが悪過ぎてメイド感が絶対にないな。
小一時間、リオネル様とのお茶会を楽しむ。
私がおかしなことをやり始めたというのは知ってる筈なんだけど、全く聞いて来ないな。
面倒が無くて良いんだけど、ちょっと予想外だ。
そんなリオネル様が話していたのは、私がこける前の私の話。ロゼッタとしての記憶はあるので会話に違和感は全く出ない。
スムーズな台詞回しで楽しく会話させて貰った。
そんなリオネル様に告げるのは気がひけたのだが、市民街にある公衆トイレが掃除しないと病気蔓延の可能性があってかなり危険だと告げておく。
魔法とかで一度焼却消毒か全て水で洗い流すくらいはしないとマズいと思う。まぁ、今回は私がやっといたけど。
ややしぶり気味のリオネル様に、私はメモした紙を見ながらしっかりと告げておく。
お願いねリオネル。ちゃんと国王様に伝えてね。
アソコ本当にヤバいから。あと国内の馬糞も掃除した方が良いよ?
んー、やっぱりリオネル様エモい。紅茶飲む姿すら絵になるんだもん。
これはもう萌えね。萌えだわ。これが私の婚約者様なのよ。最・高ッ! 第一王子なんて眼じゃないわね!
茶会が終わってリオネル様をお見送りして、帰って行く馬車をずぅっと見続ける私であった。
リオネル様がお帰りになると、私は自室に向かってノートをまとめる。
今日手に入れた情報を精査して今後の予定を立てるのだ。
夕食時までうんうん唸りながら日記という名の予定表を書いて行く。
この世界の文字だと覗き見たリオネッタが変な勘違いしそうだしね。
リオネル様の暗殺阻止とかヤバいこと書いてあるし。
とりあえずこの世界だと未知の文字となっている日本語で日記を書いているのだ。
ふっふっふ。これならリオネッタには分かるまい。
変な日記書いてるとは思っても内容が分からなければ良いのだよ。
越後屋ぁ、ぬしも悪よのぅ、ふぉっふぉっふぉ。
まぁ、全部を読み解けば普通に未来日記みたいになるわけだし余計混乱するからね。知らない方が良いのだよ。
日記を書き終え夕食へ。
今日も相変わらずお父様とお母様は親馬鹿だった。
私が今日何をしたかを話してみると、面白くもなんともない話でも凄く楽しそうにしてくれる。
そんな二人を見ているとこちらも楽しくなって、寛子時代ではありえない程に話に花を咲かせまくった。
昔はね、私だって両親がいたのよ?
でもね、寛子さん、こじらせOLだったから、早く結婚しなさい、が常套句になってたせいで親と話すのが苦手だったのよね。
ついつい話を切り上げてしまって家族団欒とか出来なくて、結局一人で過ごす方が楽だってなって実家に寄りつかなくなって……
ああ、そうだったなぁ、最後にお母さんの顔みたの、何時だっけ……
今なら思える。親孝行、したかったなぁって。まぁ、毒殺されたからどうしようもないんだけど。
夜は思いついたことを日記に書き付けおやすみなさい。
そろそろフローチャートの方にも手を付けないとだよね。誰が攻略対象だったか思い出して行かないと。まぁ、今日はいっか。
なんか今日はいろいろあり過ぎたせいかちょっと眠くて頭が回らなくなってきたし。子供の頃はよく寝ないとね。成長が止まっちゃうんだよ。
さぁ、明日もがんばるぞー。