24話・ロゼッタ、朝の訓練
さて、食事が終われば朝の運動タイムだ。
今日は昼からお出掛けだから魔法についても今のうちにやっとこう。
といっても目に見える魔法だとリオネッタがまた騒ぐので、座禅を組んでその場で体内の魔力循環を行う。
しばしの静寂。集中しているとリオネッタがくしゃみした。
ちょっとぉ、びくってしちゃったじゃん。邪魔しないでよぉリオネッタ。
体内の循環を終えれば、次にやるのは体表に魔力を纏わせることかな。
魔力量を調節するのも大変だし、最初はすっごく薄くしよう。
えーっと、こうか?
全身覆ってみたけど纏った気がしないなぁ。
一歩踏み出した瞬間だった。
地面が抉れ飛んだ。
それはもうバチュンっと一瞬で。
踏み込みに耐えきれなかったらしい。
恐っ!? 身体強化やべぇい。
すぐさま魔力を体内にしまったよ。
あのままだったら地面に足が付かずに延々掘り進みかねなかったし。
なんであんな薄膜でこんなことに!? やりすぎ? いや、まだ何もやってないんだよ!? まだまだ何かを試す前段階も前段階だったんだよ!?
「お、お嬢様、今……」
「おほほほほほ、ちょっと力込めて足を踏み出しただけですわよ。おほほほほほほ」
「い、いえいえいえ、流石にちょっと力込めただけでそんな事には……」
うん。魔法は師匠ができるまで、ちょっと封印した方が良さそうだ。どうにも力加減が掴めない。
とりあえず良くある体内循環だけしとこう。
体内循環ならいつでもできるし、徐々に慣らして常時体内を魔力が循環するように心掛けよう。血液と同じだよ。
「さ、さぁ剣術の練習に移りましょうか」
「はぁ……それにしても、その変わった剣と動きは一体いつ習ったんっすか?」
「ふっふっふ。禁則事項です」
人差し指を口元に押し当て可愛らしく言ってみる。
うわっ、何よその顔。
なんでそんな汚物を見るような目で見て来るのっ!? 似合ってない? うそんっ、私ってそんな可愛らしさが似合わない?
仕方ないじゃぁ、これだ。
「君は深淵を知るべきではないさ」
ニタリ。意味深に黒い笑みを浮かべる。
すると、ひぃっとリオネッタが仰け反り、そのままぺたんと座り込んだ。
恐すぎる笑顔で腰が抜けたらしい。ふざけんなっ。私まだ子供だよ、なんでその笑顔が恐いのよッ。失礼な。
剣の練習を終えた後は太極拳の練習だ。
と言っても、お爺ちゃんお婆ちゃんがやってる健康用の奴だけど。
30歳くらいの時に健康に気を使いだして通信教育で太極拳覚えたんだよね。
そこで拳法に嵌って太極拳八極拳蟷螂拳えとせとら。と拳法極め始めて気付いたら40代。結構極めてしまっていたりする。崩拳が最弱にして最強なんだよ!
今回は思い出すのも兼ねてゆっくりだ。明日から少しずつこれの時間も増やして行こう。
太極拳が終わったらダンス練習だ。
ワルツとかこの世界で行われているような男女二人のダンスではなく、激しい踊りのダンシング。これで素早く動く身体を作る。ついでにシェイプアップである。
脳内音楽流しながらダンスダンスれぼ……おっと危ない。危うくブレイクダンスするところだった。
こんなところでやってしまったら服が泥だらけになってしまう。
髪の毛もドロッドロになるからリオネッタに怒られるだろう。ステップ踏むだけの曲に変えよう。
「お嬢様、本当に、大丈夫なのですか? やっぱりあの時頭打ってからかなりおかしいですよ?」
心配そうに告げるリオネッタ。
「大丈夫よ。それよりリオネッタ、貴女も踊らない? ダイエットに良いらしいわよ?」
「結構です。それとだいえっとって何です?」
「余分な肉を消費して綺麗な身体にするのよ。お腹出てたりしないかしら?」
「うぐっ。そりゃちょっとおやつ食べ過ぎで最近お腹がとは思ってますが、え、遠慮します」
残念。
でも、なんでおやつそんなに食べてるの?
太るんだよ? 私は今まで暴食していたのを止めて健康的に……ああ、その分のお菓子食べてるんだな。
そりゃ太るよ。ぷにっぷにだよ。マタニティだよ。
ダメだよリオネッタ。食べなくなったのにはそれなりの理由があるんだよ。
お菓子と運動は連動してるんだよ。ちゃんと食べたら動くの精神で行かなきゃ勝ち残れないんだよ。
女の子にとって、ダイエットは戦争なんだよッ!!
いろいろやってるとお昼になった。
いっぱい運動したからお腹が減ったんだよ。
食事はいつもの豪勢な料理。
でも最近は、ちょっと日本料理が恋しいの。ご飯はないの? みそ汁は? パンとスープならあるけどね。味が薄くてレパートリーも少ないんだよ。
毎日毎日飽きないのかね。きっと同じモノを食べ過ぎて感覚が麻痺してるんだよ。私は嫌だよ、そうなる前に日本食を復活させるのだ。