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26/1986

25話・ロゼッタ、本日は見学だけなんだよ

 そして昼食後、ようやく待ちに待った重要施設巡りである。

 本日馬車にご一緒なのは、私とリオネッタ、そして護衛の厳ついおっさん。また、あんたか。汗臭いんだよ。

 ついでにもう一人、庭師のおっちゃんなんだけど、平民街の出らしいので、冒険者ギルドや商業ギルドについて彼が知っているとの事で、付いて来て貰ったのである。

 仕事あるのに、わざわざごめんね? 特別給料でるから大丈夫? くぅ、儲けられるから一緒に来たのか。おのれ、おっちゃん計ったな!? 本当は口頭説明だけで良かったんだとよ。ちゃっかりしてやがるぜぃ。


 馬車に揺られて平民街へ。

 とりあえず、まずは平民たちが使う大型施設をご案内なのである。

 庭師のおっちゃんは、ちょっと独特の口調でいろいろ説明してくれる。

 でも、なんで語尾に『だちょな』って付くのかね? 意味分からんだちょな。


「まずはお嬢の行きたいが言うとりました冒険者ギルドだちょな。んだば次さ商業ギルドで教会も行きんしゃーなら市も見たらんせ? ほがにあーだら広場にある公衆トイレとか有名だちょな。あとは……馬車の待合所とかどーだらな? ほがっつーたら飲み屋か景色さええどこだっせらば」


 うん、意味分からんだちょな。


「ガハハ。庭師殿の言葉はなまっとるなぁ。とりあえず向かう場所は冒険者ギルド、商業ギルド、教会だそうだ。よかったら町市(まちいち)も見て行かないかと誘ってるぜ。あとは広場だな。公衆トイレっつーこの国唯一の野外トイレがあるんだ。お嬢にはあんまお勧めしねぇぞ、滅茶苦茶くせぇし糞尿こびり付いてるからな。んで、あと貴族にとって平民たちの見どころっつったら馬車の待合所だと。景勝地や食事処は行かなくていいんだろ?」

 

「ええ。主だった重要施設を見て回りたいので、ギルド二つと教会、市と広場と待合所という場所にも行っていいかしら? あとは気になる所があればその時々で」


「だとよ」


 なんだこの護衛のおっちゃん。あんた通訳だったっけ? 実はバイリンガル? 凄いな。

 でも分かる言葉は標準語と庭師のおっちゃんが話す鈍り語だけなのだった。ダメだな? 

 それ知ってたって活躍できる状況は今回だけだよ。一発屋だね。やったな、おっちゃん。


「んだー、その場所向かうだちょな。順序は冒険者ギルド、市、商業ギルド、待合所、教会、公園だちょな」


 その順序は近い順なのかね?

 嫌だぞ、西行って東行って南西行って北東向かってとか。

 たらい回しは昔のゲームだけで充分だよ。


 私達はさらに馬車に揺られて冒険者ギルドへとやってくる。

 平民街は平屋というか長屋が多い。基本纏めて一階建ての家作って一家族ごとに区切って家を与えてる感じだ。

 昔の日本の長屋住宅だね。縦には平民は家を作れないらしい。なんでさ?

 何でも昔は二階三階があったけど糞尿を窓から投げ捨てる事件が多発したせいで衛生面と歩く人の安全性、ついでに貴族が一回引っ被ったらしくて廃止になったそうな。


 ゆえに、もともと数階建てでマンションみたいな市民街は旧市街として無人となり、新たに平屋建ての市民街が作られ、平民は全員こちらに強制移動となった。

 まぁ、貴族が関わってしまったらどうしようも無いんだよ。

 実際、反対した平民が何人か処刑されたらしいし。


 そして無人となった旧市民街に市民街からあぶれた浮浪者さんが住みついたのである。

 ゆえに、そちらは今、ならず者たちの住むヤバい地区となっていて、普通の市民や貴族は絶対に向かってはならない無法地帯。貧民街とされているのである。でも、お父様は暗殺依頼の際に向かってるらしいよ。食事の際に教えてくれたの。それ、子供に言っちゃって良い事だったの、お父様?


 大型施設だけは木造建築ながら二階建とか三階建てになってる。結構いい感じの佇まいだね冒険者ギルド。

 ウンちゃん外に投げ捨てないからってことで施設系は免れたらしいよ。

 でも、大勢人が集まるのにいいのかね? あ、トイレは全部一階なのね。じゃあ安心だ。

 そもそもが二階などに設置しても流す方法がないので、ぼっとん系しかないらしい。そりゃ二階は無理だよね?


 馬車が止まれる場所もあるね。広場だけど。

 これは現代日本でいうならば大型商業施設の駐車場って感じかな?

 馬が自由に糞を落としてるから、なんとも独特な臭いが、うっぷ。


「がはは。貴族の嬢ちゃんにはキツいだろ。どうする、やっぱやめるか?」


「いえ、見学したいですしいろいろ説明を……」


 馬車から見るだけ、というのも考えたけれど、中も見ておきたいし、どういうシステムなのかも知りたい。

 いや、それは後日一人で来ればいいか。さすがに今日、覚悟も無くこれ以上臭いを嗅ぎ続けられる気力は私にはない。

 糞を掃除する人もいるみたいだけど、日に何度も入れ替わる馬車の群れに追い付いていない。

 手作業で一人きり、適当に馬糞を麻袋に詰めていく作業だ、追い付く訳が無い。


「いえ、説明は口頭でも出来ますね。場所は覚えましたし、今日は施設の場所を覚えるのと説明だけにしましょ……うっぷ」


「ば、馬車出してください」


 リオネッタも青い顔している。

 これは、ただ臭いがダメなだけじゃない。

 馬車の揺れが酷過ぎるせいもある。それに加えての臭いダメージ。吐きそうです。

 とりあえず、ハンカチを顔に当てて後ろで結んでっと。簡易マスクの出来上がり。


「ぎゃはは、なんだその恰好。お嬢、これから商業ギルドに襲撃でも掛ける気か」


 どこの悪党だよ。

 ……あれ、この格好、普通に銀行強盗しそうな恰好だよ。しかも、私の目は凄く悪党向きだった。

 今の私の姿、ヤバくない? 普通に国家転覆しそうなリーダーの顔してない?

 やらないよ。レジスタンスでも悪い悪役令嬢でもないよ? ぷるぷる。

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