後日談:グランザム、儂の秘密基地♪
SIDE:グランザム=ライオネル
「でのー、儂言ったんじゃ。お前が行くほどではなかろって。なのにクリスの奴自分が行かねば始まらんとか言ってプライジャコリャに行ってしもうてな。儂暇なんじゃわ」
「だからってわざわざ俺を誘う意味はないだろう。元王を相手にチェスをする兵士なんぞ聞いたことがないぞ」
「現実におるじゃろ。お主が。ほれ、チェックじゃ」
「一応聞くが、これは接待でいいのか?」
儂は今、あまりにも暇すぎたので兵士の一人を秘密基地に誘ってチェスをしていた。
いやー、王としての責務から解放されたのはええんじゃが、毎日逆に暇になってのぅ。
妻と過ごすとこき下ろされるし、一人の時間が欲しいんじゃが、一人になると手持ち無沙汰でな。
結局誰か誘って暇潰しせんと持たんのじゃ。
「いいやいいや、真剣勝負でいいぞい。ここから巻き返せるのならのぅ、ブラックアクニングの倅よ」
「そうか、なら遠慮はせん。王族だからと手は抜かんぞ」
こやつ不遜な態度じゃったからのぅ、儂が誘っても委縮はしまい、と思って誘ってみたが……
ほんと元とはいえ、国王相手に使う言葉遣いではなかろうに。
でも、こういうずけずけと言ってくるタイプこそ、国政には必要なんじゃよな。
イラっと来る物言いだし、言ってることが正しすぎるから逆にムカっと来るんじゃが、それでも自分の間違いを指摘して国の方針を手直ししてくれるからイエスマンを侍らせるよりも断然マシなんじゃ。
しかし……強すぎんかこやつ。
「チェックメイト」
「なんじゃとぅ!?」
ついさっきまで儂がチェックしとったじゃないか! なんでそこからこんな押されとるんじゃ!? え、儂勝っとったよな?
なんかもうキングの逃げ場がないんじゃが!?
「あ、あの、待った、は?」
「何度やってもここまで来ると勝てんぞ?」
なんじゃとぉ!? どこから!? どこから敗北が確定したんじゃ?
ぬおぉぉぉ!? あああ! 儂がチェックしたあの瞬間儂の負け確定しとる!?
「ぬああああああああああああああああ!」
「自滅だ。勝ちに急ぎ過ぎたな」
「ええい、もう一回! もう一回じゃ!!」
「それはいいのだが、コレ仕事の一環としていいのか? そうでなければ訓練をサボったことになるのだが」
「元国王じゃぞー。儂がええと言ったらええんじゃ! エリオットに直談判してやるわい」
「ならばいいが。というか、あちらの魔物が困っているぞ?」
「ま、魔物じゃないです! ダンジョン核ですぅ!」
セルドバレーに言われてそちらを見れば、ヒトカゲの擬人化したような女性がびくびくしながらこっちを見ていた。
ここ、邪神洞窟最下層に戻ってきていたらしいダンジョン核、アステル嬢である。
「邪魔しとるぞい」
「なんで私のダンジョン最下層に引き籠ってるんですかぁ!?」
「ロゼッタ嬢が作ったじゃろー。ここ儂専用の秘密基地じゃて。ほれ、ベッドもあるし、書斎もあるし」
「普通にここで生活できる状態だな」
「食料も欲しくなったらミノさんを狩るといいしのぅ。たまには野菜も欲しくなるが」
「老体には肉ばかりの生活は堪えるだろう?」
「調子が崩れたら霊薬があるのじゃ。長生きするぞーふぉっふぉっふぉ。まぁリオネルのように変若水など飲んで長命するつもりはないがの。最後まで元気に歩いてぽっくりが理想じゃ」
「俺を巻き込まないなら好きなだけ遊んでさっさと死んでくれ」
「ふぉっふぉっふぉ。そう邪険にするでないわ。ほれ、もう一回やるぞい」
「はぁ、仕方ない。アステルだったな。ウチの兵士にグランザム王と俺の居場所を伝えておいてくれ。迎えが来るまでは俺が面倒を見ておく」
「りょ、了解しました! すぐに呼んできます!」
「別に急がんでええぞー」
「すぐにでも出て行ってほしいので秒で呼んできます!」
「かー。老人の最後の憩いの場じゃぞ。取り上げるなんて横暴じゃわい」
「毎日自宅で乱痴気騒ぎされる身にもなってやれ。アレはダンジョン核だから気軽に移動も出来んのだろう?」
「アステル嬢ちゃんの本体はそこにハマっておる球体じゃからの。抜いたらダメじゃぞ?」
「ロゼッタ嬢のテイムダンジョン核だぞ。俺がそんな恩を仇で返すことをするわけが無かろう。俺が珍しく尊敬している女性のモノに手を出したりはしない」
「お主も結局ライオネル兵じゃなぁ。ロゼッタ嬢の威光が凄すぎるわい」
「アレは神に成るべくしてこの世界に来た存在だったと思っているくらいには、尊敬している。今の俺があるのも彼女のおかげだしな。俺のような難物にも友と呼べる存在ができたことも、感謝している」
セルドバレーは他の兵士たちと違い少し外側から部隊を見ているように思えておったが、こやつも根っこはロゼッタ崇拝者じゃったか。
まぁ、ライオネルはその思想が根付いている間は安泰じゃろうなぁ。




