後日談:キーリ、ウチらの冒険はこれからだ
SIDE:キーリ
「ほはぁー。ここがその伝説の地、ですかばっちゃ、じゃなかったキーリ姉ちゃん」
「そや。これが伝説の地、コスタロカの英雄グリンドラスの墓所や」
―― 映像見たけど、この人の行動は私好き ――
「グリンドラスが居たからヤマダたちは生還出来た。ワタシも彼だけは敬意を表す」
ウチことキーリクライク・プライダルは、主はんという鎖がなくなってもうたから自由を得た邪神ちゃんとなったのである。
ロゼの家でゆったりしてても良かったんやけど、せっかくやしこの機会に主はんが守った世界、隅から隅まで見回ってみよかな? って思い立ったんよ。
んで、まぁ呼ばれよかぁ、思て旅立とうとしたんやけど、市松ちゃんが私も行きたいって言うし、ならせっかくやし一緒に行くメンツ誘ってみよか? といろんなとこに念話送ってん。
結果、集まったんが、今いるメンバー。
マリッカはんも一緒に来るいうから最初の場所はグリンドラスはんの墓所から呼ばれよか、とここにやって来たのである。
メンバーはウチ、コーネ、市松ちゃん、マリッカ、名状しがたき黒山羊ちゃんの五名や。
コーネはプライダル魔族領の次期魔王になるはずやねんけど、ウチと一緒に旅する方優先したい、いうて付いてきてもうた。帰ったら多分新しい魔王がおるから一回ぶっ倒さな魔王出来へんで?
それと、黒山羊ちゃんや。これウチが召喚した奴なんやけど、あの強化兵との激戦で消し飛んだのは確かやの。でも主はんの奇跡の復活でこいつも復活したらしゅうて、なんかウチの元へやってきて行くとこないから養えって身振り手振りで伝えてきたんよ。
どうもウチが召喚したからか主はんの復活で能力失ったんか、一般人がコレ見ても正気度消失したりはせぇへん様になってん。
とはいえ、見るからにヤバい系生物やからとりあえずローブ被せて怪しい魔法使い、みたいな姿にさせとる。
この姿なら全身隠れるから傍からぱっと見るぶんに限ってはローブの怪しい人物にしか見えへんから問題無しや。
ウチ等と一緒に行動しとれば目立つこともない、はずや。
人外オンパレードやもん。
「それで、この後どこ行くん?」
マリッカたちが祈りを捧げているのを横目に、コーネが尋ねてくる。
そやなぁ。この近くのダンジョン向かってダンジョン核に挨拶しとこか。
その後は気分やな。
どうせ何千何万と暇な時間が余ってんのや。ゆっくり徒歩でこの世界回ろうや。
「こういうのも、アリね」
―― そういえば私もこっちに飛ばされてきてから一切自国以外見てなかったわね ――
「ギュギュィア」
……黒山羊ちゃん何言うてんのかウチ等わからんわ。
「そう言えば、この近くに町があったわね。マギアクロフトに寝返った町だから無事なはず」
あー、またゴーストタウンかいな。
あいつらの町は強化兵に襲われることはなかったけど、住民ぜーんぶ強化兵にされてもうてるからなぁ。町だけが残されてて寂しいんよ。
ほら着いた。
誰もおらんから静かすぎて居心地悪い町に……なんや?
「町に活気が満ちている?」
「ギュー」
―― あ、そっか、強化兵の一部も復活してる ――
あ、なるほど、やからその復活した町人たちが戻ってきて生活を……
「ギキャ?」
ウチ等の目の前に現れた第一町人。
斧を肩に下げた緑肌の小人さんが黄色く濁った眼でこちらに驚く。
そして、嬉々とした顔でようこそいらっしゃいませ、とこちらに飛びかかって来た。
「ギャギャァ!!」
「ギュガァ!!」
いや、ちゃうなぁ、ウチ等見て久しぶりの肉だ――――、或いは雌だァ――――かな?
跳びかかって来たゴブリンは黒山羊さんにくるくる巻かれてごりゅっと絞られた。
「ゴブリン、巣を作ってる」
「人間がおらんくなったからあいつらの巣にされたんやね」
「食料は豊富やもんなぁ」
―― 黒山羊、どっちが多く殲滅できるか勝負! ――
「ギュー!」
一応、ウチ等の言葉は理解しとるようなんよなぁ。
市松ちゃんと黒山羊ちゃんが楽しそうに駆けていく。
いや、駆けていくという表現はおかしいな。
市松ちゃんは滑空しとるし、黒山羊ちゃんは名状しがたい触手移動やし。
「ふふ、世直し旅。印籠作りましょう」
「マリッカはん、いんろーってなんなん?」
「ウチとマリッカはんくらいしかわからんやろ。いや、市松ちゃんは通じるか。市さん黒さんやってしまいなさい、やね」
つまりコーネがうっかり役やな。
あれ? そうなるとマリッカさんあの女忍者役か? お色気シーン、やるんか、銀色の肌で?
「どうしたキーリ?」
「ううん、何でもないんや」
脳裏をかすめたアハァーンな妄想を被りを振るって霧散させ、ウチは市松ちゃんたちの後を追うのだった。




