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1938/1986

後日談:サレオン、ジジイの日課

SIDE:サレオン


 朝、日が昇るころに起き、庭先で半裸になると、布巾を使って乾布摩擦。

 真っ赤になった体でゆったりとした動きで汗をかく。

 体術を極めれば亀よりもゆったりした動きで汗だくになるもんじゃ。


「ふぃー」


 一時間程運動を行った後は体を拭いて、服を着込んで砂利道の庭を散歩する。

 ここはライオネル王族別邸。

 儂はここでベルゼガリスのクソジジイと王族の子供たちの面倒を見る役目を与えられておる。


 散歩途中でベルゼガリスのクソジジイを発見。両手で剣を振り上げ、一心不乱に振り降ろしを繰り返しておる。

 ふん、何が剣聖じゃい。剣などに頼らねばならんひ弱なジジイなどに子供たちの訓練はやらせられんわい。やはりここは調練師たる儂が武術を教えて拳で剣を叩き折る術を伝えるしかなかろう。


 まったく、ライオネルに帰って来てから五月蠅くて敵わんわい。

 儂のやることなすこといちいち突っかかってきおってからに。

 とはいえ、儂から敵意を向けてそれを見た子供たちが怯えては可哀想じゃからの、朗らかな顔で挨拶じゃ。


「精が出るのぅ」


「……ふん」


 一瞬こちらに視線を向けるものの、鼻で笑いおった。

 発勁、その真っ黒い腹に叩き込んでくれようか。


「ほいほいほい」


 儂は何事もなかったかのようにクソジジイから視線を外して散歩を続ける。

 全く朝から胸糞悪い。

 こんな場所で鍛錬しておるでないわ。どうせ娘に完敗しとるくせに無駄な努力を続けおって。


 庭を一周し終えると、緑茶を汲んで縁側へ。

 ずずぅーっと熱いお茶を飲みながら寒くなった外の空気を堪能する。

 はー。ええのぅ。

 メルクナードやヘルツヴァルデにおった時より断然過ごしやすいわい。

 冬場に雪虫がうざったいくらいで過ごしやすい気候じゃしのぅ。


 子供たちは次々と生まれてくるで、孫たちが育っていくのを見届けておるようでほんに幸せじゃわい。

 じぃじ、じぃじと慕ってくるライオネルの第四皇子や第五王子、最近元国王が妻を孕ませたとかで第六子もここに来るそうじゃ。加えてエリオット王の方もそろそろ子どもができるじゃろ。

 ちゃんとまっすぐな子に育てねばのぅ。


 ベルゼガリスなんぞに任せておったら男尊女卑の頭の悪い脳筋ばかりに育ちかねんからな。知識と教養をしっかりと教えて民のことを考えられる人物に育てねば。


 しかし、思えば儂も、ロゼッタの嬢ちゃんのおかげでここに来れたようなもんじゃよなぁ。

 ずずぅーとお茶を飲み、ほぅっと息を吐く。

 白くなった吐息が外の空気に混ざって消える。


 今はまだ冬には届かんし、秋晴れの空といったところじゃろうかの。

 この別荘もロゼッタの嬢ちゃんが建築したんじゃっけ? 計画だけじゃったかいの。にほんていえん? とかいうこんせぷとらしいが。儂には一番合う家になったわい。

 はー、落ち着く。

 これでクソジジイさえおらんかったら最高なんじゃがの。


「ふん」


 どかり、儂の隣に無遠慮に腰を下ろしてくるベルゼガリス。

 汗だくではないか。拭かんと臭いがこもるぞい。


「そろそろ尻尾をだしたらどうだ、狸め」


「ほいほい、何度も言うておるじゃろ。わしゃ孫たちを立派に育てたいだけじゃ。どこぞのジジイが脳筋な訓練ばかりするでのぅ」


「お前の授業は温すぎる、アレでは自分で未来を切り開ける存在にはなれん」


「知識もないのに腕力に物を言わせるだけではただの脳筋じゃわい」


 朝っぱらから酒かこやつ。

 ええ趣味しとるのぅ。酒臭い奴になんぞ何も教わることなんぞないじゃろうに。


「ヘルツヴァルデのスパイなのはわかっている」


「じゃからソレ、辞めたって何度も言うとるじゃろ、わしゃただのじぃじじゃよ」


「どうだかな」


 ぐびっと酒瓶を煽るクソジジイ。お前ほんと、これから孫たちの訓練じゃろうが、そんなよっぱらって教えられるんか?


「全く、グランザムはなぜこんな狸ジジイを息子たちの訓練に送り込んできたのか……」


「そりゃこっちのセリフじゃわい。元国王はなぜこんな脳筋ゴリラに孫たちの行く末を任せようとしとるんじゃ。儂がしっかり国民の為になる精神性に育ててやろうというのに」


 互いに視線を向けなかった。

 しかし、一瞬即発の空気が場を支配する。


「こらお父さんたちっ、また冷戦して! 全く私がたびたび見に来ないといけないんだから」


「な、ラファーリア!? なぜここに!?」


「シクエス様からなんかあの二人心配だからたまに様子見てきて、って言われてるのよ! これから定期的に見に来るからね! サレオンさんと仲良くしなさい!」


「「いや、しかし」」


「まったく、お父さんだけじゃガイウス王子みたいな脳筋の男尊女卑な性格になるからってサレオンさんに礼節や教養を教えてもらう様にしたんだからね。互いに補うことで王族の御子息を一角の人物にして貰うんだから、二人がいがみ合ってどーするの!」


 あれ、なんで儂まで怒られとるんじゃろ? まぁええか、これはこれで娘と話をしているようで新鮮じゃわい。

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