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1879話、リズリンド、ナゲキノカルマ防衛線7

SIDE:リズリンド


 戦える。

 私は十分戦える。

 コツを掴んだ。

 コアの割り出しもだいぶ慣れた。


 超巨大相手にもダメージこそ受けるけど数時間もしないうちに撃破出来るようになってきた。

 なんとなく、コアのある場所のパターンみたいなのが分かるようになってきたの。

 だから、やれる。私はやれる。

 そして私がいる限り、ナゲキノカルマは終わらない。


「で、伝令、超巨大型多数! 変異種の姿も見えます、よ、四足歩行!?」


「大丈夫。そう……大丈夫!! 超大型はそこまで怖くない! 私なら、やれる!!」


「くぬぅぅ、ウチもやる! やったるから!!」


 私に競うように魔族の娘が超巨大に単身挑んでいる。

 それ以外の面々はグループで動いているし、今はヴァルトラッセとかいうのが手伝いに来てくれたのでだいぶ楽になったはずだ。


 超巨大強化兵の群れが戦線に加わり、私とコーネリアが突撃する。

 切り刻み、寸断し、コアを露出させて割り砕く。

 必死にやった。

 やれるだけやった。


 ともかく周囲に気を配る余裕はなかったので、たまに余裕が出来た時に周囲を伺う程度、最初の方は喧騒があった。

 少ししたら怒号が聞こえた。

 皆必死に戦ってるのが分かったのでさらに集中。

 何度目かの余裕が出来て、ふと、気付く。

 音が、なかった。


 異変を感じて背後を見る。

 今まで戦っていた仲間は既に、そこになかった。

 押されに押され、ナゲキノカルマ周辺に固まって激戦を繰り広げる人たちは見えるが、私の周囲には誰も見当たらない。


 一人突出しすぎて超巨大強化兵の群れの中心に立っていた。

 でも、こいつらを私が引き受ければ皆が楽になる。

 やれる。私はやれる。

 まだ、やれるっ。


 巨大強化兵の殺し方は覚えた。

 コアの露出も作業になった。

 もう負けない。もう勝てる。

 何体も何体も撃破して、そして……


「なん、で?」


 ライオネル兵たちも、他の兵士たちも、冒険者も闇の者たちも、皆押し込まれて敗北寸前になっていた。

 ヴァルトラッセやライオネル兵に守られながら、傷病棟から傷病兵たちを逃がし、四方八方から徐々に押し込まれているのが見えた。


「私はまだ、戦えます。ナゲキノカルマは終わりません。なのに、なぜ?」


 ライオネル兵たちもいるのに?

 魔族たちも奮闘してるのに?

 なんで?


―― リズリンド殿、一度撤退を。ライオネル兵たちが霊薬による回復不能となり戦線は一気に不利に傾いている ――


 ヴァルトラッセからの念話で事態をようやく理解する。

 私はまだ大丈夫。

 途中からの参戦だし、ダメージも霊薬で何とかできる。

 でも、昨日からずっと戦ってくれたライオネル兵たちはもう、回復も出来ないくらいに追い込まれていた。


 慌てて彼らの元へと戻る。

 メインメンバーを欠いてしまった彼らにはもう、ヴァルトラッセに守られるしか大型以上を相手に戦うことができないようだった。


 私のようにコアの場所を感覚で理解できるわけじゃない、だから必死に戦い攻撃受けて、霊薬で回復しながら皆の為に戦った。

 だから、回復できなくなったライオネル兵たちは皆、重症だ。

 中には四肢が砕けている人も見受けられる。


 回復させたいが、霊薬が効かない。回復魔法も薬草も効果がない。

 回復限界まで回復させた体が受け付けてくれないのだ。


「すまん、もう少しあんたたちの助けに成りたかったが……」


 総大将だったネイサンが本心からの謝罪を告げる。

 でも、彼の左腕は肩から消えていた。

 右足は潰れ、痛々しい。


 こんなになるまで、戦った。

 こんなになっても、戦ってくれた。

 彼らの故郷でもない、守るライオネル市民も何もない場所で。


 他国の為に。

 他国の民を守る為に。

 回復も出来なくなって、四肢まで欠損して。

 それでも、戦ったくれたのだ。


 けれど……

 ああ。私はまだ戦えるのに。

 皆もまだ戦意が潰えていないのに。


 ナゲキノカルマ防衛軍はもう、経戦能力を失ってしまっていた。

 眼に見えるのはマギアクロフト強化兵の群れ。

 未だ途切れる気配もない。

 小型ではあるが絶えず供給されている様子。


 小型の中に緑色の肌なども混じり始めているので、野生の魔物を捕縛して強化兵にしているのかもしれない。

 もしそうだというのなら、これ以上どれだけ頑張ったところで敵の進軍は止まらないだろう。

 あらゆる資源を消費して、徹底的にこちらを責める。

 物量に継ぐ物量で潰してくる。


 必死の抵抗を示しても、いくら負けない心を持ち続けても。

 これ以上、私たちは戦えない。

 これ以上戦える人材も、資材も底を尽こうとしていた。


「やっぱり、重いなぁ、王としての責務」


 全然、私に似合ってない責務だけど。指名されちゃった以上、やらないと、私以外、きっと誰もやりたがらないだろうから。


「現状戦えるメンバーはヴァルトラッセと協力して戦えなくなった人たちをダンジョンに逃がして。メイズさん聞いてますね。一度ダンジョンへの入り口を開いて彼らの収容を」


「し、しかしリズリンド女王、敵まで入ってくるのでは!?」


「安心してください。殿は……私が勤めます。メイズさん、旗の目印にダンジョン入り口を。皆さん、そこまで移動して撤退を」


 といっても旗はすぐそこだったので、いくらもしないうちにダンジョンへの退避は完了していく。

 戦闘に携わっていた数が多いので多少なりと時間はかかったが、後はヴァルトラッセと私だけだ。


「退避はなさらないの?」


―― 来たばかりだ。今しばらく、ご随伴させて貰いたい ――


 そう。じゃあ……やれるだけやりましょう

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