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1873/1986

1858話、クロスエンド、サイエンスフィア防衛線5

SIDE:クロスエンド


 もともと、俺ら銀狼旅団はライオネル王国で活動していた冒険者チームだった。

 Aランクまで上がった後は邪神洞窟の攻略に取り掛かってはいたが、今はもうレベルカンスト。

 前まで苦戦していたオルトロスも指先一つで消滅する実力だ。


 ライオネルで戦おう、とも思ったんだが、周囲を見回せば、ライオネル軍の精強さだけじゃなく周辺国もロゼッタの嬢ちゃんが鍛えていたようで、俺ら要らないんじゃね? と思うくらいには防備が厚かった。

 なので手薄な場所を探してサイエンスフィアまで足を延ばしていたんだが。


 町壁を叩き壊そうとしやがった小型強化兵を斧でカチあげ、ケリークのジジイが魔法で射出。

 邪魔な強化兵は元の場所へお帰りいただいた。

 眼の前ではたった一人のライオネル兵が奮戦しており、そこから逃れた強化兵が今の奴らしい。


 しかも、崩れた西軍の兵士たちはあろうことか強化兵を素通りさせてライオネル兵を疲弊させようとしている始末。

 もはや国を守る兵士の姿じゃねぇ。

 俺らだけじゃなく連合の冒険者たちも怒り心頭で、雄叫び上げて先陣切ったおっさんなどは、囃子立てていた兵士に向かって殴りかかり、大乱闘が始まっていた。

 お前ら敵間違えてんだろ。


「ラシェルドはあのライオネル兵のフォローを頼む。抜けそうになった奴にタウント決めてその場に留めろ。ケリーク、遊んでる強化兵どもに魔法をぶち込んでやれ!」


「バリアノールとミックは突撃。大乱闘を抜けてくる強化兵の撃破だ、あのライオネル兵の負担を減らしてやれ、小型なら俺らでも単騎で戦える」


「「「「了解!」」」」


「んで、だ。レイテールは済まんがいつも通り、皆のフォローを頼めるか?」


 隣に佇んでいる糸目の男に頼む。

 飄々とした態度だが、こいつは仲間への熱い思いが強いからな。俺が言う必要もなく手助けしてくれんんだろ。


「それはいいですけどリーダー。西以外もかなり苦戦しているようですよ」


「そっちはそっちの奴らが何とかすりゃいい、俺らは六人しかいねぇんだ。やれるのは目の前の絶望を緩和する程度、だがそれでいい。俺らは出来ることをする。あいつらみたいに他人の失敗を笑うのではなく、失敗させねぇよう露払いするんだ。それだけでいい。そうすりゃ他の仲間がやってくれる。全任せじゃねぇ。信頼して任せるんだ。俺らがやるこたぁやるからお前がやることはお前がやれ、ってな」


「自分の尻も拭けない兵士たちに聞かせてあげてください。補助魔法、行きますよ!」


 ちょっといいこと言ってやったってのに、話ぶった切りやがった。

 そんな聞きたくないような言葉だったかな?

 い、いや、今はその辺り気にしてる場合じゃねぇ。っし、気合入れ直せ俺!


「行くぜ野郎共! 稼ぎ時だぁ!!」


 なぜか俺の指示待ちしていた別の冒険者たちが、掛け声とともに雄叫び上げて走り出す。

 ライオネル兵の背を追い抜き、並み居る強化兵を薙ぎ散らしながら前へ前へ、戦線を押し広げていく。


「冒険者たち、大型以上は人数を取られる。ライオネル兵に任せて数の多い小型と中型を頼む!」


「おうよ! 役に立たねぇ兵士共の代わりをやってやらぁ!」


「ふ、ふざけるな! 我々は必死にやったんだ! 役に立たないだと!」


「強化兵素通りさせて国を滅ぼす手伝いしてる奴だがどう役に立ってんだ、ア゛ァ!?」


 言い訳するなら一言返されただけで押し黙ってんじゃねぇよ!

 不甲斐ない兵士たちを無視して強化兵を薙ぎ散らす。

 一体一体は弱い。しかし全ての兵が再生持ちの為に切った傍から元に戻りやがる。


 一応、倒し方は事前に教わってるから効率は良くなってると思うが、細かく切って魔法で削って、部位を無くして再生能力を使い切らせてから倒せ? なんつー手間のかかる敵だよ。

 これなら回復魔法で爆死するトロールの方が討伐しやすいってなもんだ。


「中型強ぇぞクロスエンド!」


「デカいのに気を取られ過ぎんなよミック。バリアノールみたいにひたすら一撃加えるのもアレだが、とにかく一体でも多く再生不可にさせてくんだ!」


 っと、おい、何ブツブツ言ってやがるそこの兵士! 邪魔だ!


「邪魔じゃ……邪魔じゃねぇ!! 俺だって、俺だって必死に戦ってんだぞ! こんな化け物だらけの戦場にいきなり入れられて! 覚悟もねぇのに国を背負って戦え? ふざけんな!! お前らみたいに金の為にやってねぇ! 俺たちはっ、俺たちは……」


「テメェ自身で大切なもん踏みにじっておいて何が必死だ! 後ろを振り向いてみろ! 国の中に残してきた大切なもんはねぇのか! 心配そうに送り出してくれた家族はいねぇのか! お前らが素通りさせた強化兵があそこにあるもん全部ぶっ壊そうとしたんだぞ! お嬢ちゃんの受け売りだが、今の冒険者たちは皆こう言うぜ……国の為に戦う必要なんざねぇ。テメェの背に守りたいモノがあるから戦うんだろォが!」


「あ……」


 兵士たちの一部ははっとしたように国へと視線を向ける。

 その瞳に、涙が溢れ、体が震えだす。


「俺、は……なんてこと……」


 確かに冒険者はその日暮らしだ。金の為に戦い自分優先安全確保し、己の都合で魔物を倒す。兵士たちとは背負うもんが違うだろうぜ。でもな。今。この時だけは一緒だろ。

 守りたいモノがあそこにあるんだ。だから、命を掛けて戦うんだろォが!

 俺たちは冒険者だ。自分が大切だ。自分が死ぬような絶望的状況なら尻尾撒いて逃げるのが普通なんだよ!

 そんな冒険者が、命掛けて戦ってんだぜ? そりゃ、理由なんざ一つだろ。

 俺たちの大切なモノが、命を無くしてでも譲れねぇモノが、その背にあるから逃げねぇんだ。


 お前らもさ、一緒だろ?

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