1627話、???、秘密の支援
SIDE:???
「あー、疲れた」
影のばーさんに連れ出された俺は誰もいない郊外に連れてこられ、ようやく解放された。
体中をコキコキ鳴らして立ち上がる。
反撃されるかと思ったけどまさか一切反撃なく、かすりもしないとはなぁ。さすがロゼッタ神様だ。俺なんぞの攻撃など当たる訳がない。
「お疲れさんじゃのぅ」
「おぅ。協力感謝するぜ。まさか連絡もしてねぇ影の人が助けてくれるとは思わなかったぜ。俺はロゼッタ神様の役に立てるならあのまま斬り殺されても構わなかったんだがな」
「お嬢の手を煩わせるでないわい。まったく。おい、そこのババァ、お主の管轄じゃろが」
影の婆さんに一喝され、暗がりからその婆さんは現れる。
しわしわの皮しかない四肢の老女、我らがロゼッタ神様の教団を立ち上げた原初の12人、その一人である。
「私は別に全ての信者の動きを見張っている訳ではありませんが? どうでしたかな?」
「少しは役に立てたかと。さすがに合格者でもないのに訓練を受ける訳にはいきませんでしたが、やはり生で見るロゼッタ神様の迫力は違いますね。俺ぁもう、感動で泣きそうになりましたよ。なんとか歓喜を押し殺して憎まれ役しましたがね。あれで夜勤部隊の奴らもロゼッタ神様の御威光が分かるってもんですわ」
そう、俺はわざわざいちゃもんをつけに夜勤部隊に潜入したロゼッタ神教の信者だ。
ロゼッタ神様の御心を知らされ、居ても立っても居られなくなり、なんとかロゼッタ神様のお役に立ちたいと、今回命を差し出すつもりでやられ役をさせて貰ったのである。
「惜しむらくはロゼッタ神様のお力で殺害していただけなかったことでしょうか」
「ロゼッタ神様のお手を煩わせるんじゃないよ阿呆。全く、すまんねウチの信者が」
「まったくじゃ。お嬢のお役に立つのはええが、邪魔だけはするでないぞ」
「当たり前だ! 俺はロゼッタ神様の為にある命だぞ! この命をロゼッタ神様の邪魔に使うなど不敬でしかないだろうが! 我が全てはロゼッタ神様の為に。あの方に死ねと命じられたなら、俺は喜んで自害する。それくらい邪魔をする気はないんだよ!!」
「う、うむ……お、おい教祖、こやつ本当に大丈夫か?」
「もともとカスタローレルの方で大量殺人を行っていた屑なんじゃが、教えを説いたら自分は神に尽くすために存在していたのだ、と覚醒しましてな。少々行き過ぎではありますが熱心な信者なのです」
「そりゃそうじゃろうけども……」
「俺ァ確かに殺しをやった。殺した時に良心の呵責なんざ一切なかったんだ。捕まって罪を償えっつわれても一切動じることがなかった。でも、それにも理由があったのさ、俺の精神も命も性格も、ロゼッタ神様に尽くすために全てを注ぎ込んでたんだ。だから何をしようとも満たされるこたぁなかった。ああ、神と出会うために我が人生があったのだとわかったあの時の全能感。ちぐはぐだった世界に命が芽吹いたあの感覚。皆にも伝えてやりてぇくらいだ」
「な、なんかヤバい薬でもキメてそうな顔しとるんじゃが?」
「トランス状態なだけじゃ。大いなる意思と交信しとるんじゃろ」
影のばあさんは心配性だな。
「さて、教祖様、次はどうする? 俺がやれることはあるか? なけりゃ下水掃除に向かうつもりだが?」
「おお、そうそう。ベルングシュタット支部の支部長決める会議を行うから明日の掃除はキャンセルしてください。幹部候補全員を集めて会議を行います。下水掃除に関しては新人たちにお任せしましょう」
「ロゼッタ神様のお膝元だぜ? 階級なんぞいるかぁ?」
「教団も一応組織ですからね。纏められるモノは必要なのです」
「そうかぁ? 煩わしい階級制度なんぞ腐敗の元だろ。ロゼッタ神様の邪魔になるようなことになれば俺ァ制度ごと皆殺しにさせて貰うぜぇ?」
「幹部候補全員そう言っているウチは大丈夫でしょう」
チッ、他の奴らと同じ考えかよ。
俺だけが特別、なんて思ってた昔の俺はほんと世間知らずだったな。
この世界には俺くらいの頭のイカレた奴は星の数ほどいたってのによ。
そしてそいつらが集まってるのがこのロゼッタ神教ベルングシュタット支部だ。
俺から見てもこいつ絶対頭おかしいって奴が幾人もいやがる。そしてそういう奴に限ってなぜか幹部候補に選ばれてやがるんだ。
皆ロゼッタ神様関連になると途端に頭良くなるのが意味不明だよな。
「ふふ、幹部候補生は皆私めの独断で選びましたわ」
「教祖自身が犯罪者だからねぇ、ヤバい性格のばかり選んどるんじゃろう?」
「まったくだぜ。あれが本格的に幹部になっちまったら教団どうなるんだって感じだぜ? ま、俺がいるうちはロゼッタ神様の意向から外れるこたぁねぇよ。あの方のためならば教祖だろうが国王だろうが殺してやるさ!」
おい、影のババァ、やっぱりこいつ生かしておかない方がいいんじゃないか、とか陰口叩くな。
俺は逃げも隠れもせずお天道様の下を大手を振って歩いてやんぜ。俺の歩みを止められるのはロゼッタ神様ただ一人ってことだ。




