1621話、とある少女、私の選択
SIDE:テテ
軽い運動を行った。
さすがに今までこういうことしたことなかったから一周だけでも肩でぜーぜーっと息をしてしまっている。
シュクネお姉さんは少し運動しているのだろう、一周くらいでは息も切らしていないようだ。
「軽いジョグだったねぇ。お爺ちゃんたちに合わせたのかな? これだと男性陣にはちょっと不満じゃないかな?」
「息を整えながら集まってー。せっかくなんで年齢で分けましょう。子供、青年、壮年、高齢、かな。成人前の子はこの列、成人から20代まではこの列、20から60まではここ、60以上はこちらに並んでくださいな。
ああ、シュクネお姉さんと別れることになっちゃった。
まだ成人前だから仕方ないんだけど、見事に子供ばっかりだねここ、人数も少なくて六人しかいない。
皆年端も行かない少年少女だ。
中にはお母さんが恋しくて泣きだしてる子まで居る。
何しに来たんだろう?
ロゼッタ様が次々に指示を出していく。
青年、壮年のメンバーは早速訓練を始めてしまった。
若く、力もあるので皆楽しそうだ。
「さて、残ったご高齢と少年少女なんだけど」
あ、あれ? もしかして私たちって戦力外通告、とか?
「どちらかを選んでほしいんだよ。右側の列、年相応に合わせた軽い訓練で文官系能力を伸ばす、左側、若い者又は大人なんかに負けたくない。血反吐吐いたって厳しい訓練をすれば自分だって戦える。背中を預けられる存在になりたい。さぁ。選んでくださいな」
な、何それ?
え、あ、皆困惑しながらも選択を始める。
ちょ、お爺ちゃんお婆ちゃんが軒並み左側に!?
子供たちの方は血反吐吐くって言葉に恐れをなしたようで右側に移動する。
私は……確かに、文官として知識で勝負した方がいいのかもしれない。
でもシュクネお姉さんとはまず間違いなく会いにくくなるし、何より、お母さんを守れるだけの力が欲しいから、ここに来たんだ。
私は左の列へと向かう。
「んじゃ、キーリ、こっちの方任せるね」
「あいあーい」
あれ、あんなところに女の子?
いや、なんか違う。
女の子の姿してるけど、人じゃ、ない?
「んじゃ、てーんい」
キーリと呼ばれた女の子に謎の恐怖を感じた瞬間、私は周囲の人とまとめて、一瞬で別の場所にやって来ていた。
ここ、どこ?
薄暗くてごつごつした壁と床。
それに、天井?
「なんと、ダンジョンじゃと!?」
「懐かしいですねぇ、お爺さん、昔はよく一緒に入りましたもんねぇ」
「そうじゃったかいのぅ。おおそうじゃ、昆布茶が美味いんじゃ」
「ダンジョンに昆布茶はありませんよお爺さん」
お、お爺ちゃんたち大丈夫かなぁ。
皆ほんわかしてるし、ここがどこか本気で理解してる気がしない。
でも、ダンジョンって怖い化け物が沢山いる場所だよね?
「さて、皆さんは血反吐を吐いてでも強くなりたい、若い者になど負けたくない。そんな思いでこちらを選ばれました。ゆえに私は心を鬼にして、貴方たちを鍛えます」
え、何それ、怖い。
「まずはこちらにどうぞ。階段を上りますので足元に気を付けて上がってきてください」
お爺ちゃんたちが不安だから後ろからサポートしよ。
若い人、私だけだし、あ、でもお爺さんやお婆さんでもしっかりした意識を持ってる人もいるし、少し若々しい人もいるからその人たちと連携してお爺ちゃんたちサポートしよう。
一番怖いのはちょっと痴呆入っちゃってるお爺ちゃんだ。
さっきから夫婦と思しきお婆さんと会話にならない会話をしている。
正直お婆さんが可愛そうな位的外れな言葉を言っている。
階段を上った先には、同じような景色。
ただ、先ほどと違うのは、生物の息遣い、というかもう咆哮聞こえちゃってるんだけどぉ!?
「ブモオォォォォォォ―――――――――――――ッ!!」
ひえぇ!? な、なにあれぇ!?
「おやトメゾウさんじゃないか、随分と筋肉質になったのぅ」
ちょっとお爺ちゃん、ボケてる場合じゃないよ!? あ、あああ、あれ、みの、ミノタウロスだよ! 私図鑑で見たことあるよ!
「結界張ってあるからアレがこっちに来ることはありません。目に見えるように結界張ってあるんで、ぎりぎりの場所で近づいて来たミノ君に一撃加えてください」
「一撃のぅ。すまんのぅトメゾウ」
それトメゾウさんじゃないですよ!?
「きえぇぇぇい!!」
と、お爺さんはトメゾウ、じゃなかったミノタウロスの脛に一撃、手にした杖でぽくりと叩く。
「これでええんかの?」
「はい、問題ありません。あ、あとこれ、一応着かえておいてください。紙おむつです」
「ふむ? こうかの?」
「頭じゃなくお尻に被せてください」
意外と頭に被せても似合ってたよお爺さん。




