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151話・ロゼッタ、これからの教育指針

「あ、お帰りロゼッタ」


 お昼になったので侯爵邸へと帰還した。

 お父様が寂しがるのでお昼はこちらでとるのである。

 だから何処に居てもお昼には家に戻らなきゃなんだよ。門限早いな。


「リオネル様、お仕事いかがです?」


「正直覚えることが多くて大変だね。でも、9歳で覚える事とは思えないモノが多いんだけど気のせいかな?」


 それはお父様が仕事与え過ぎだと思うのだけど。

 正直9歳で成人というのも理解しきれていない。

 何しろ現代日本は20が成人。昔の日本でも15で元服である。


 初等教育とか終えてても普通は領主仕事とか覚えることはあり得ない。

 この世界大変過ぎるよね。この年から仕事開始だもん。

 そりゃ女性も強か悪役令嬢になるってもんですよ。


「それで、ロゼッタは朝何してたの?」


「商業始めるための人材確保ですわ。なんと初期費用0円、ついでに給料も無し」


「え? それで人って雇えるの? 無理でしょ?」


「ふふ、やりようはあるのですわリオネル様。よろしければ見に来て下さいまし。なかなか面白い子たちが見つかりましたのよ」


「へー。でも、お金払わなくて大丈夫? すぐに別の場所に行ったりしない?」


「あ、それは大丈夫ですわ。去る者追わず、ただし戻る者許さず、さて、初日に何人脱落するか、楽しみですわ」


「うわぁ、ロゼッタが悪役になってる……」


「ロゼッタ。ただで人を雇うなど、本当にできるのか? もしできるのなら我が領地の改革に役立つのだが……」


 食事中だったので私とリオネル様の会話を盗み聞きしていたお父様が尋ねて来る。

 若干わくわくしてるのは、ただ働きする人足手に入るから使い倒そうって腹だろう。


「残念ながら、私のやり方を真似るのは上手くいかないかと。私が行ったのは浮浪者の子供たちを店員にするというもので、お金の代わりに衣類、食事、住居を与えることにしたのです」


「ああ、そういうことか……いや、話の腰を折ってすまん」


「いえ、確かにただで人足が増えるのならと思うのもわかります。ただ、やはりただで手に入れるということは下準備が必要になりますもので、これから商業開始までに皆に勉強を行うつもりなのです。なので実際に掛かる費用はそれなりに。初期投資が普通の従業員を雇うより高くなりますが、その分働きで元を取って貰う形にしております。一応、逃亡防止措置として、学が付いて商業能力が高くなればギルド員登録して貰って、給料付きの雇い形式にするつもりではありますが、その辺りはもっと賢くなってから教えようかと」


「従業員を一から育てるのか。確かに自分の目的にあった人材育成が可能ならそちらの方が長期的にはやりやすいかもしれんな」


「はい、代わりに、最初は失敗が多いかもしれませんから普通のギルド員を雇うのと一長一短といったところですわ、お父様」


「そうか、ならば、軌道に乗ったら教えてくれ。一度見学させて貰おう。リオネル様もその時に一緒にどうですかな?」


「え? ええ。構いませんよ」


「しかし、浮浪者か、信用出来るのかいロゼ?」


「そこは問題ありませんわ、今まで路上生活だったんですもの、布団で安全に寝れると分かったら、もう逃げようなんて思わないでしょう。それでも、逃げるというのなら、それはもう私とは縁がなかった。と思っております。浮浪者はまだまだおりますし」


「ふぅむ。気のせいか、昔悪戯をして相手が掛かるのを待つ悪だくみをしている時のロゼの顔に見えるのだが」


「奇遇ねぇ、私も、そう思うわ」


 おお、お母様が喋った。

 最近ずっと笑顔は見せるけど喋って来なかったから不安だったよ。

 ウチの母さん言葉忘れちゃったんじゃないかって。


「ふむ。それで、これからどう教育していくんだね?」


 教育指針? お父様、もしかしてリオネル様の教育の参考にしようとしてません?


「そうですね。まずは一般的な日々を送るための仕事、家事から教えて行きます。家事を覚え出すのと並行でまずは簡単な文字の書き方。計算の仕方。商売の仕方と少しずつレベルアップさせて行くつもりですわ」


「いっぺんにはしないのかい? 早く修得させた方がいいのではないかい?」


「基礎知識があればそれでも問題はありません。ですがお父様。路上生活をしていた子供たちは今日を生きることしか考えにありません。食事がなければ確保し、寝床がなければ彷徨い探す。そこに市民としての暮らしはないのです。ただその日が暮らせればそれでいい。そういう子供たちに教えて行くのです。一気に教えてもきっと半分も理解してくれませんわ。ゆえに、少しずつ、少しずつ、心に余裕が出来るまで、自分で自分の生活計画が立てれるようになるまで、相手のペースで教えるのが、一番の近道になるのですわ」


「そ、そうなんだ……?」


 何事も、最初は戸惑いから入るもの、そこに無理矢理いろいろ教えても零れ落ちるだけ。まずは情報を受け入れる下地を作り、どれが必要な情報かを精査するシステム構成が重要なのだよ。

 この40年の人生でOL時代を生き抜いて来た私だからこそ、新人育成プログラムは……って私はロゼッタ。寛子さんは出て来なくて良いんだよっ。ドヤ顔で眼鏡キランッしなくていいのっ。

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