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-タンザナイト-  作者: プレイヤー1
タンザナイト――4
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タンザナイト――4―4

 ボタンを全て外すところまでは行ったが、それ以上先へ進むことは無かった。その代わりというのか、少なくとも五回は最初と同じようなキスをした。

 最後まで行かなかったのは特別な理由ではなく、舞奈が好きかと自問した時に、はっきりと好きだと答えられそうになかったということと、もう一つは自分が自分を止めたからだ。


 今日一日で舞奈は群青の彼とは無関係だと俺は思った。

 なにか確証があったわけでもない。剥き出しになった感情が演技だと思えなかったので信じようと思っただけだ。


 しかし考えてみれば、クーピーに印字された色を元に、四人が群青の彼の仲間ではないかと推測したのだ。なら、一人が外れてしまえば全員が外れてしまうことになる。


 まさか本当に全員無関係だというのか。すると、何故白と黒で分けたのか、それには俺とその他の人くらいの意味しか無いのだろうか。


 窓の外は闇に塗りつぶされ、既に星の時間だ。

 今晩としか指定されなかったが、不思議とそろそろなんだろうなと感じた。


「それで舞奈、判定は。俺は行ってもいいのか」


 舞奈は何も言わずに暗い外へと目を向ける。

 行かせるつもりなんか最初からなかったのでは、という思いが大きくなっていく。


「気をつけなさい」


 ドアを見ると鍵は開いているようだった。どうやら認めてくれたらしい。

 嫉妬深いのか疑り深いのか、もう少しくらい信じてくれたってもいいと思う。


「じゃあ行ってくる」


 部屋を出ようとした時、後ろから勢いよく抱き着かれた。


「ちゃんと戻ってきてね」

「……はいはい」


 外出を認める代わりに、今日は泊まれとのことのようだ。少々、束縛強くないですか舞奈さん。

 何はともあれ、理久との約束を今回は守れるようだ。

 電気の点いている部屋は想像以上に多く、敷地内は思っていたよりも明るかった。

 学校の外は建物の光が燦然と輝いていて一層明るく、暗いから迷う、なんてことはないだろう。


 俺はただ、公園を目指して歩いた。

 しかし、辿り着いた場所には理久の姿は見当たらなかった。

 時間くらい指定してくれ、頭の中で文句を言いながらいつものベンチへ歩いて行く。


 近づくと、ベンチの上に何かが置かれているのに気付く。それは、黒い樹脂製の球体と手紙だった。

 誰かの忘れものだろうと思っていたが、手紙を見てみるとどうにも違うようだ。

 手紙にはこう書かれていた。


『お兄さんが来てくれると信じてこれを置いておきます。すーぱー無気力まんのお兄さんは面倒に思うかもしれませんが今晩は場所を変えさせてもらいます。ごめんなさい。僕がどこにいるか当ててみてくださいなんてそんな無茶は言いません。端末を起動してからその球を持ってから読み込んでいただければ、僕のところまで道案内されるはずです。それでは、お兄さんが来て下さることを楽しみにしながらお待ちしてます。』


 誰から誰へ、なんて書いてなかったがおそらくきっと理久だろう。

 手紙を折りたたみ、ポケットの中へ突っ込む。

 書いてあった通りに端末を起動し黒い球を持ってみると、地図データ、画像データと表示されたので、選択して読み取る。


 すると、球の表面に淡い光の線が浮かび上がり、緑色の蝶となって羽ばたいた。

 球も、手紙と同じポケットへ突っ込んでから、蝶の後を追って歩いて行く。

 場所が違うだけで到着する場所は公園だろうな、それが俺の予想だ。


 街の中心地からだんだん離れていく。だが、少し離れたくらいでは街の明かりも喧噪も消えることはない。

 蝶は理久のいるどこかへと俺を連れる。


 夜空は雲一つない見事な快晴だ。理由はわからない。なんとなく怖さ、不気味さを感じさせる。

 蝶はまだ先を行く、そんな時だ。愛梨さんから通話がかかる。


「陽平君、今越前さんと一緒にいる?」

「一人ですけど、どうしたんですか」

「どうしよ桜子、陽平君今一人だって」


 七尾さんの声も聞こえてくるが、一体何をどうしたというのか。


「ごめんね、陽平君。やっぱり伝えておけばよかったんだよ。でも、気付いてなかったみたいだし、私たちも確信してたわけじゃなかったし、怖がらせたくなかったの」

「えーっと、愛梨さん。話が全く見えないんですけど」


 愛梨さんたちは何を言おうとしている。俺が群青の彼と繋がっているのではと、そう疑っていることに気付いたのか。

 しかし今は、一人、舞奈が外れたことによって全員外れたことに俺の中ではなっている。どうせ気付くならもう少し早く気付いてほしかったものだ。


「私は最初、私なのかなって思ってた。陽平君からそんな話聞かなかったから」


 なんだ、何の話をしている。

 よくわからないが群青の彼の話ではないようだ。


「でも、それだとおかしいなって、学校とかだとそんな感じ全くなかったから」


 本当に何を言っているのかわからない。心当たりがないにもほどがある。


「桜子にも手伝ってもらって、そうなんだろうって、だんだんそうなんだろうってわかってきたけど、伝えようか悩んで、昨日も伝えようかと思ったんだけど」


 気付いているかどうかと聞いてきたのは、この話の事だったらしい。


「愛梨さん、そろそろ何の話か教えてもらえないですか」

「ごめんね、えっと、落ち着いて聞いてね」

「え、あっはい」


 通話越しに息を深く吐く音が聞こえてくる。深呼吸でもしているのだろう。


「ずっと続いてたの」

「はい」


 俺が立ち止まったからか、少し先で蝶が右へ左へふらふら飛んでいる。


「ストーカーされてたのはずっと。陽平君だったんだよ」


 何を言っているのか、それを理解するために時間を要す。


「は?」


 落ち着いてみれば何もおかしいところはない。愛梨さんたちが群青の彼の仲間ではないなら俺を監視する人物がその他に必要だろうから。


「それってどんな人かわかりますか?」

「カラー緑の女性だと思うけど」


 辺りを見回してもそのような人影は見えない。

 この程度で見つけられるならいくら俺でも気付いていただろう。見つからなくて当然だ。


「ありがとうございます、とりあえず気を付けてみます」

「え、うん。気を付けて」

「それじゃあ、切りますね」


 返事を待たずに切断する。

 気を付けると言ったが何をすればいいのか。ただの見張りなら放っておいても問題はなさそうだけど。

 後ろを凝視し、何度見回しても怪しい人影は見つからない。

 大きく息を吐いてから、蝶に従って理久のいる場所へと歩いて行く。

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