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いつかお菓子を作る日 ~ティグシアにて~

ハッピーバレンタイン!

15周年活動報告で複数の読者さんからリクエストをいただき、久々に更新しました。え、7年ぶり?


 森を切り開いて作られた道は、小型の馬車ならすれ違えるくらいの広さがあった。夕暮れの光が優しく縞模様を作り、空気はしっとりとしている。

 そんなのどかな風景の中、三台の馬車が止まっていた。ところが周囲には、何人かの男たちが倒れ伏している。

 商隊を襲った野盗たちだ。

 倒れているのは、返り討ちにあったからである。死んではいないけれど、気絶していたり、うめいて起きあがれないでいたり。

 

「縛り上げるロープが足りないな」

「木の幹んとこに座らせて、全員まとめてグルグルにしてやれ」

「こいつらもびっくりしただろうな。俺らをボコボコにするつもりが、ボコボコにされて」

 商隊の人々は口々に言いながら、頼もしい用心棒の肩や背中を叩いた。

「あんたを雇ってよかったよ」

 用心棒は「こういう時のための俺だから」とだけ言い、空を見上げた。

「陽が落ちる。もうすぐ次の町フィーグルだろう、とにかく先を急ごう」

「そうだな。こいつらは置いていって、フィーグルの奴らに何とかしてもらえばいい」

「足は奪っておかないと。馬は連れて行こう」

 用心棒と、商隊の隊長・副隊長が話し合って決める。

 やがて商隊は隊列を整え直し、出発した。


 馬車の幌の隙間から、私はグルグル巻きにされた野盗たちが遠ざかるのを眺める。

 その視界に、馬に乗った用心棒が横からスッと入ってきた。

「シオン、時間をとらせたな」

「十分速かったと思うけど。野盗を一網打尽にしたんだよ?」

「そうかな。武器がまだ、ちょっと馴染まなくて」

 オルセードは、肩に載せていた長い棒を(あぶみ)にひっかけて立てた。本来の武器なら、もっと速く片づけられたのに、と言わんばかりに。


 エスティスを離れてから、もうずいぶん経つ。

 私たちはメリー──友人のディメリアに旅券やら何やらを手配してもらい、ティグシアに入国していた。もちろん、チェディスには一切何も伝えず、本国から足取りを追えないように気をつけている。

 若い男女二人旅は目立つので、商隊に紛れることにした。オルセードは用心棒として雇われ、私は雑用を請け負っている。

 剣も目立つのでエスティスに置いてきていて、オルセードは先を金属で固めた長い棒を主な武器にしていた。

「剣とは間合いが違うから、慣れるのに時間が……」

 なんて彼はこぼしていたけど、今日の戦いっぷりを見ていると、謙遜も過ぎると嫌みだが? と思う。生真面目な彼らしいといえば彼らしい。


 メリーはティグシアに親戚や友人がたくさんいて、中でも口が堅いと思われる人に、私とオルセードが行くことを手紙で知らせてくれた。

「駆け落ちする友人たちをかくまってほしい、と書いたわ。その人を頼れば、住む場所を手配してくれる」

 けれど、私とメリーが仲良しなのは、エスティスの王侯貴族界隈では有名な話だ。もしチェディスの人が本気で私たちを捜そうとしたら、メリーの知り合いをたどる可能性が高い。迷惑をかけてしまう。

 だから、私はオルセードと相談した上で、言った。

「ありがとう、メリー。まずは私たち二人でやっていけるように努力する。どうにもならなかったら、その人を頼らせてもらうね」


 そして、私たちは旅をしている。

 お貴族様生活をしていた頃とは、何もかも違う。でも、オルセードは騎士見習いの頃に上司の身の回りの世話をしていたそうで、武器の手入れから野営の準備まで一通りできる人だ。私も、例の村でこき使われていたので、こちらの文化での家事は一通りできる。

 貴族生活だって、異常だったんだよね、私にとっては。


 商隊の女性たちと初めて食事を作った時、オルセードは

「シオンが作ったスープ……! 美味い!」

 とめちゃくちゃ感動していた。

 いや、まあ……皆で作ったし……それに私が作った料理、あなたすでに食べたことあるけど。今さら言わないでいいか……。


 ふと、思う。

 お菓子を作りたいな、と。

 日本にいた頃は、時々クッキーやマフィンを作っていた。ホットケーキミックスとか使ってね。

 こちらは砂糖がかなり高価だし、日本にいた頃と同じようなものは作れないだろうけど。

 でも、お菓子を作るのは、普段の料理とは違ってちょっと特別だ。生活が落ち着いていて、少し余裕がある時にできること……というか。

 お菓子を作れるようになったら、それは私たちが、私たちの『生活』を確立したことになる気がするのだ。


「あんたのダンナ、頼りになるねえ」

 隣に座っていたおばさんが、話しかけてきた。何年か、出稼ぎで大きな農場に勤めていて、いよいよ故郷に戻る途中だそうだ。

「夫婦で、落ち着く場所を探してるんだろ? もういくつも町を通り過ぎて来たけど、ここ! って場所はなかったのかい?」

「うん。まあ、一応行こうと思ってる場所はあるから、見つからなかったらそこでもいいかなって。だから、そこに着くまでの道中は」

「じっくり探そうってわけか。うん、根を下ろす場所なんだから慎重に選ぶといいさ。あたしらは、あんたら夫婦となるべく長く一緒にいられる方が嬉しいし」

 おばさんはニコニコしている。

 オルセードがいなくなったら、彼ほどの護衛を新たに雇うのは難しいだろう。何しろ、チェディスでは騎士団長、エスティスでは駐在武官だった人なんだから。

 しかも私が辞めさせて連れてきただなんて、もし皆が聞いたらびっくりするだろうな。


 フィーグルに到着した時には、すでに星が瞬き始めていた。

 東西に大きな通り、南北にいくつもの細い通りがある。建物は高くても三階建てくらいで、あちこちに木々の緑の見える広々とした町だった。


 隊商宿には馬車ごと入れる厩舎があり、宿の人が馬車を納めて馬を外してくれる。

 オルセードが宿の主人に尋ねた。

「すまないが、保安官事務所はどこに? 森で野盗が出て、捕らえてあるんだが」

「そりゃ災難だったな!」

 筋肉ムキムキの主人が答える。

「ボグル保安官が後を引き取ってくれるだろう、宿の四軒隣だ」

「ありがとう。シオン、一緒に行こう」

「うん」

 主人が「仲がいいねえ」と笑った。

 あまり離れないようにしているのには事情があるわけだけど、私たちが二人で生きていくと決めた『夫婦』であることは事実だ。

 だから、普通の夫婦っぽく私たちは微笑んで、宿を出た。


 保安官、ってアメリカのドラマでよく出てきてたけど、こちらの場合は何というか……『雇われ警察官』みたいな人を指している。

 ティグシアは国土が広くて、町が点在していた。だから町ごとに警察署を置くのがなかなか難しくて、それぞれの町が自分たちを守るのにふさわしい人を選び、当局に申請して保安官にする。

 保安官は犯罪者を逮捕するなど、警察と似た権限を持ち、町民から有志を募って保安隊にしている。事務所には小さな拘置所もあったりね。

 町をよく知る人物が保安官になるのは、町民たちにとっても理に適っているらしい。まあ、なあなあになっちゃうパターンもあるみたいだけど。

 もし手に負えないような大きな犯罪が起こったら、その時は一番近い警察署に捜査を依頼するシステムだ。


「野盗を捕まえた? そりゃ、ありがたい」

 保安官事務所には、初老の男性がいた。堅太りの身体に腕章、胸には金色のバッジがついている。

「私は保安官のボグルだ。すぐに保安隊を集めて向かわせよう。相手は何人だった?」

「四人。結構、手慣れてる感じだったな」

「君がその、捕まえたのか? ええと」

「ルースだ。さっき到着した商隊の、護衛をしている」

 オルセードは偽名を答える。


 ここは移民の国で、あまり身元をつっこまれることがない。ちなみに私は一応「シア」と名乗っているけれど、こっちではシオンとあまり発音に違いがない感じだ。


 二人が話している間、私は事務所の中を眺めていた。

 交番みたいな場所だ。机、記録用のノート、手配犯のポスター、周辺の地図。地図には色々と書き込みがある。

 やがて話は終わり、ボグルさんが壁のフックから上着をとりながら私を見た。

「では行ってくるとしよう。奥さんも、我が町でゆっくりしていっておくれ」

「ありがとう」

 にこ、と微笑んでみせると、ボグルさんも笑みを返した。


 オルセードと宿に戻り、自分たちのベッドを確認する。

 私たちが泊まるのは、ベッドがたくさん並んだ大部屋だ。一つ一つのベッドがカーテンで仕切られている。病院みたい。

 一般人が泊まる宿は結構こういうタイプが多いので、もう慣れた。個室もあるけど、お高いのだ。

 防犯に関して言えば、部屋が別々よりもカーテンを挟んだすぐ隣にオルセードがいる方が、むしろ安心、だし……。

 ちらりと見ると、今はカーテンを上げてあるので、荷物を整理していたオルセードが「ん?」と視線を返してきた。

「なんでもない」

 私は自分の荷物整理に戻った。


 それから、商隊の皆で夕食をとる。食堂には宿泊客だけでなく、町の人たちも食べに来ていて賑やかだ。

「ああ、保安官!」

 宿の主人の声に顔を上げると、ボグルさんが入ってくるところだった。

「やあ、いつものを頼むよ」

「野盗は無事に連行できたかね」

「それがなぁ」

 ボグルさんは首を振る。

「いなかったよ」

「えっ?」

 私たち商隊の面々は顔を上げた。ボグルさんが私たちに気づいて、肩をすくめる。

(わだち)が乱れていたから、場所はすぐにわかったし、ロープも残っていたんだけどね。後から仲間が来て解放しちまったんだろう」 

「そんなー」

「せっかくルースがとっつかまえたのに!」

 皆が騒いでいると、オルセードが口を開いた。

「報復に来られると困るな。ここの保安隊は警備もしてくれるのか?」

「あ、ああ。もちろんだとも」

 ボグルさんは軽く目を見開いてから、うなずく。

「普段から巡回しているが、今夜は特に気をつけるように伝えておく」

 頼んだよ、と商隊の面々が口々に言った。

 宿の主人は、

「最近のこの町はちょっと、治安の悪化が気になるところでな。俺たちも気をつけておこう。従業員は皆、腕っ節自慢揃いだ」

 と力こぶを作ってみせた。隊商宿などやっていると色々あるんだろう、荒事に慣れている感じ。 

 これなら大丈夫そうかな、と思いながら、最後のパンのかけらを口に入れてもぐもぐしていると、オルセードが少し身を屈めて耳打ちしてきた。

「シオン、食べ終わったらちょっと散歩しないか?」


 宿の裏手を小川が流れている。

 水音に紛れ、オルセードがこっそり教えてくれた話を聞いて、私は眉をひそめた。

「ボグルさんが、野盗とグル?」

「おそらくな。野盗を縛った時と、さっき保安官事務所に行った時、同じ匂いがした。違法薬物だ」

「うわ」

 そういえばエスティスにいた頃、薬物で錯乱した騎士をオルセードが捕まえたことがあったっけ。彼にはわかるんだ。

「ボグルさんが野盗たちから薬物を買ってるとしたら、彼らに便宜を図るよね。逃がしてあげたってこと? うわ、ますます報復がやばいかも……」

「いや、それは大丈夫じゃないかと思っている。野盗側がボグル保安官に便宜を図ってもらってるなら、それは今後も続けたいはずだ。報復のために隊商宿を襲うような大騒ぎにはしたくないだろう。まあ、例えば町ぐるみで違法な薬草を育てている、とかだとまずいが」

 確かに。でも、もし町ぐるみだったら、もうとっくに私たちは報復されているはず。のんびり夕食なんて食べられなかっただろう。

 ふと、私は気になることを口にした。

「そういえばさっき、宿のご主人が言ってた。最近、治安が悪化してるって」

「……言っていたな。うん……」

 オルセードは顎に手をあてた。

「保安官が奴らから薬物を買っているだけ、ではすまなくなっているということか? 何らかの犯罪で、被害者が出ているとしたら……」

 生真面目で正義感溢れるオルセードは、こういったことを見過ごせない。

「少し、聞き込んでみるか」

「……」

 仕方ない。私もつきあうことにした。


 厩舎に回ると、従業員がいた。話を聞いてみる。

「治安? ああ、そうなんだよ。困ってる」

 彼はすぐに答えた。

「最近、密造酒が出回り始めてね。混ぜものをしてるらしくて変な酔い方をするんだが、安いから若者がこっそり買うんだ。そこから薬物に手を出したりな」

「密造酒が、薬物への入り口になっているのか」

 ふと、私は尋ねた。

「密造酒って、どんなお酒? 麦酒や蜂蜜酒は高いけど、違法じゃないよね。それとは全然違うの?」

「果物を発酵させて作るらしい。その辺の材料でできるから、安いんだ」

「果物……そう、ありがとう」

 私はオルセードの袖を引いて、再び小川の方へと出た。

「オルセード。私たちってまだ、この町に滞在するよね」

「ああ。数日後に大きな市があるから、荷の一部を売る予定だと隊長が言っていた。それまではいるだろう。どうかしたのか?」

「あのね……」

 私は彼に耳打ちした。


 フィーグルの町の西側には、山がある。

 それほど標高は高くなく、登りやすいけれど、山を越えた先は荒野だしそっちに町があるわけでもないので、山道を人が通ることはほとんどない。

 陽のあたる斜面の、低木に挟まれた細い道を登り切ったところに、木の小屋があった。

 扉をノックすると、中から「入れ」と声がする。

 オルセードが扉を開くと、むわっと暖気が漏れてきた。壁沿いにいくつかのテーブルが置かれ、ガラス瓶がたくさん並んでいる。

「まだ納期までは日にちが……」

 言いながら振り向いたボグルさんが、私たちを見てギョッと目を見開いた。

「なっ、あんたら!? どうしてここが!」

「事務所に貼ってあった地図、山の中に印がしてあったから、何かなと思ってたの」

 私は口を開く。

「それに、壁にかけてあった上着、袖口に紫色の染みがあって。私、商隊で洗濯も担当していたから気になった」

「このベリーで、密造酒を作っていたんだな」

 オルセードが投げた視線の先には、籠に綺麗な紫色のベリーが山盛りになっていた。瓶の中にも同じものが入っていて、ぷつぷつと泡を立てている。ぬるま湯の中で発酵しているのだ。

 オルセードは、スッ、と棒の先をボグルさんに突きつける。

「密造酒に薬物を混ぜて、若者に安く売り、徐々に薬物そのものを買いたくなるようし向けていく。犯罪者を取り締まるどころか、保安官自身が犯罪に手を染めているとは」

 ボグルさんは両手を上げて固まった。

「こ、これは自分で飲むための酒で……私は、混ぜものなんか……」

「ベリーは外の斜面で栽培しているようだが、一緒に薬物に使う葉も育てているな」

 詳しいオルセードから、言い逃れはできない。

 ボグルさんはがっくりと膝をつく。

 私の後ろには、証人になってもらうために宿の従業員がついてきていて、信じられないという表情で首を振っていた。


 元々ボグルさんは本当に、山で偶然野生のベリーを見つけたことから、自分のために密造酒を作っていたらしい。

 ある日、下心を出して隣町でこっそり酒を売り、小遣いにした。それを知った野盗たちに「バラすぞ」と脅され、丸め込まれ、やがて賄賂も渡されてずるずると……ということらしい。


 ボグルさんを捕まえた後も山の小屋で待ち伏せしていたら、例の野盗たちが密造酒を受け取りに現れたので、オルセードが再びとっつかまえた。

 彼らとボグルさんは、隣町の警察に連れて行かれ。

 この町からは、保安官がいなくなってしまった。


 そして──


 明日は出発という日の夕方。

 私とオルセードは、保安官事務所にほど近い裏通りを歩いていた。

「シオン。実はさっき、ここの町長に呼び出されて、引き留められた」

 オルセードが口を開いた。


 野盗を捕まえた上、ボグルさんの悪事も暴いて、これからきっと町の治安は良くなるだろう。

 その功労者であるオルセードに、新たな保安官になってほしい。町の人々も全員一致で、彼を保安官として警察に申請したい。そういうことのようだ。


「君の観察眼も褒めていた。さすが夫婦だ、とね。それと……この家」

 彼は一軒の家の前で、足を止めた。

「空き家なんだが、今回の件のお礼に、町の人たちが綺麗に修繕してくれると言っている。……夫婦で暮らしたらどうか、と」

 いい話、なんだろう。オルセードもそう思っているらしき雰囲気が伝わってくる。


 私は、その家を見上げた。

 木造で、玄関ポーチがある、三角屋根の家。一応二階建てだけど、二階部分は小さい。

 オルセードが玄関ドアを開けてくれ、中に入ってみた。やはり、小さな家だ。一階がLDKで、階段を上ると、二階に一部屋。


 普通の家だ。

 とても、普通の。


「……商隊、明日が出発だよね」

 二階の部屋の窓から外を眺めながら、私は言う。

「今から用心棒を雇うのは無理でしょ。オルセードがいないと困るんじゃない?」

「だろう、な」

「だから」

 私は振り向いて、オルセードに微笑みかけた。

「次の町まで一緒に行って、新しい用心棒はそこで雇ってもらって。私たちはここに戻ってこようか。オルセードがよければ、だけど」

「シオン」

 オルセードは近づいてくると、私の手を取った。

「俺も、君がよければそうしたい」

「決まりだね。事件はびっくりしたけど……縁があったんだよ、きっと。この町、フィーグルに」

「ああ」


 手を繋いだまま、部屋の中を振り向く。

「ありがとう、オルセード。あなたが皆に信用されたからだね」

 自然と、お礼の言葉が出た。

 私に何もかも奪われた彼は、それでも新たに、二人の生活の基礎を築いていく。

 ようやくここまで来たんだ、と思った。


「私も、この町でできることを考える。まずは家事だけど」

「あまり君に負担をかけないようにする。できれば使用人を」

「いらないって……。えーと、ここが夫婦の寝室になるってことだよね」

 ベッドの枠が一つ置いてあったので、そう言うと、オルセードは何やらそわそわしだした。

「お、俺は事務所で寝てもいいから」

「何言ってるの」

 向き直った私は、オルセードをにらみ上げた。

「前に言ったよね。『普通の夫婦』になりたい、って」

「シ……」

 ちょっと恥ずかしいので、私はおでこをオルセードの胸にくっつけて、ぼそぼそと言う。

「普通の夫婦は一緒に寝るでしょ」

「シオン」

 名前を呼ばれ、それから頭の上で吐息が聞こえて。

 私はオルセードに、思いきり抱きしめられた。


 ここで暮らし始めたら、あの山からベリーを摘んでこよう。

 密造酒なんかじゃなくて、ジャムとか、ドライフルーツなんかにするんだ。

 そして私はいつか、お菓子を作る。

 普通の夫婦としての暮らしの中で、お菓子を作って、二人で食べるのだ。



【いつかお菓子を作る日 おわり】

オルセードを保安官にするのはかなり前に決めていたので、あとはそうなるきっかけの事件を思いつけば……というところでストップしてたんですが、書き始めてみたら意外とするする書けました。

シオンが『普通の夫婦になりたい』って言ってたの、みなさん覚えて下さってたかなぁ(笑)

2日で書いたのでちょっと心配ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。

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