表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

第3話 棄てられた人形

 ガシャンッと轟音を最後に耳障りな金属音がやんだ。駅の扉が開ききったのだ。


「そういや駅の中面白くてふらふらしてたら見つかってさ」

「ばかもんが」

「だってさ、列車が天井にぶら下がっ──じっちゃんこれ見て! 機械人形出てきた!」


ただでさえ弾んでいるソラの声に興奮が混じる。老人が手を止めて視線をやると、ソラが白い長髪の機械人形を引っ張りだしているところだった。


 機械人形の部品は稀に落ちているが、五体満足の完品は30年ここに住む老人も初めて見た。戦争以降は人々にトラウマが植え付けられていた上に材料も無く、人間は機械人形を作っていない。そのため人間が機械人形を見る機会など滅多に無い。


「んー? ほーぉ……作った奴は人間だな」


華奢な少女を模したそれは、人工の皮膚を被っているだけでなく肉の柔さまで再現されていた。触れることが憚られるほどに生々しい。薄汚れた白いワンピースも、誰かが罪悪感に駆られて着せてやったのかもしれない。それほどまでに人間に近く、しかし明らかに作り物の顔立ちをした機械人形だ。


「なんで分かるんだ?」


そう判断する決定的な何かがあるのかと、ソラが機械人形の顔を覗き込む。


「人間じゃねぇとここまで見た目にこだわらねぇ」


疑問でいっぱいという様子だった割に、ソラはあっさりと頷いた。


「確かに町の量産されたのはもっと機械って感じだったなぁ。じっちゃん、こいつ動かせそう?」

「そうだなぁ」


老人が右手の甲で機械人形の鎖骨の間を軽く小突いた。人間の身体からは発されることの無い、無機質な空洞の音が響く。


「こりゃあ駄目だ。心臓が無い。そこだけ再利用してガワだけ捨てたか」


機械人形の心臓はバッテリーや動作の管理を行う最も重要な部品だ。その重要さ故に修理を重ねながら再利用されることが多い。30年以上前に人間に作られ、戦争を経て町の住人となり、故障か何かが原因で心臓だけ抜かれ棄てられた、と言ったところだろうか。


「じゃあ作ってやってよ」

「断る」

「ちぇーせっかくの機械人形なのに……とりゃ」


老人が直してくれる可能性を捨てたソラは、得意のゴリ押し修理をすべく機械人形の眉間に手刀を落とした。


「お前いつの時代の人間だぁ? 何度も言ってるだろ。精密機械は──」


鼻で笑う老人をよそに機械人形が水色の眼を開いた。


「起動シマス」

「やりぃ!」


平坦な機械音声にソラの声が重なる。


「雑な機械もあるもんだ……」


機械に詳しい老人は、信じられずに瞬きした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ