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幕間:【鳳雛】の激動人生<俗界編・下>

◇◆◇ 甘粛(かんしゅく) 天魔神教(てんまじんきょう)甘粛第九支部 百雷鳳雛(ひゃくらいほうすう) 麻夢蝶(まむちょう) ◇◆◇


蝶姫(ちょうき)よ。加減はどうじゃ、疲れてはおらんか? 今夜の式はお主にはいささか長すぎたじゃろう」


 甘粛の地における最後の式典が終わり、控室で休んでいるとねぎらいの言葉をかけられました。

 いたわってくださったのは御爺様です。

 御爺様は天魔神教太上(たいじょう)教祖にして、現在の江湖武林(こうこぶりん)の頂点に立つ【武天九星(ぶてんきゅうせい)】のひとり。

 そのような偉大な人ではありますが、孫娘であるわたくしにとってはただの優しい祖父です。


「お気遣いありがとうございます、御爺様。ですが大丈夫です。疲労は残っておりません」


 そんな祖父を持つわたくしの名前は麻夢蝶(まむちょう)。【焔刀(えんとう)魔君(まくん)麻空燕(まくうえん)と【白蘭(びゃくらん)公主(こうしゅ)林雪梅(りんせつばい)の娘です。


 雪梅お母さまは以前酷い大病を患っていたためか、御爺様に特に可愛がられており、お母さまの娘であるわたくしも一緒に可愛がられています。

 わたくしは未だ子供ではありますが、仙界の『すかうと』が来るほどの素質を有する肉体を持っているため、いかに齢四つの幼児であろうとも式典などで疲労を覚えるはずがありません。

 当然、御爺様もわかっているはずなのですが、それが考慮されたことはありません。そんな甘々な優しい御爺様です。


「それは重畳じゃの。明日からはいよいよ青海(せいかい)に入ることになる。徐々に正派(せいは)の領域から遠ざかる故、馬車の行程にも多少の余裕ができよう。それに青海を過ぎれば新疆(しんきょう)じゃ。そなたの母も首を長くして帰りを待っておろう」


「はい、御爺様」


 …… これが油断であるなどと責められましょうか?

 しかし、正派の領域の中でも特にその勢力が強い四川(しせん)陝西(せんせい)から離れていくという行程に、僅かながら気が緩んだ者たちが居たのではないかと問われれば、誰であろうともそれを否定できないのでしょうか。


 すなわち油断、気の緩み。

 あるいは護衛の力量不足。

 あるいは護衛戦力の根本的不足。

 あるいは……。


 あとになって考えても仕方のないことですが、もうどうしようもない過去であるからこそ、人はもしかしたらを考え続けるのかもしれません。


◇◆◇ 青海(せいかい) 天魔神教青海第六支部管理区域 百雷鳳雛(ひゃくらいほうすう) 麻夢蝶(まむちょう) ◇◆◇


『我が名は太虚子(たいきょし)! 大崑崙派(こんろんは)掌門(しょうもん)である! 卑劣なる魔人どもよ! 今日こそは西王母(せいおうぼ)より我ら崑崙が賜った神物(しんぶつ)! 屠龍剣(とりゅうけん)を返してもらうぞ!』


『『『ウオオオッ!!!』』』


 青海における日程も残り半分ほどとなった今日この日。

 予定された式典は順調に進行し、現在は都市内の行進が行われています。


 それは都市外へと続く空き地での出来事でした。

 前方から(とき)の声が聞こえ、それに続くようにキンッ! という金属音が重なって聞こえてきました。前方から『襲撃だ!』という声も聞こえ、行列に緊張感が走ります。


元始天尊(げんしてんそん)照覧(しょうらん)あれ! 雲龍大八(うんりゅうだいはち)式! 雲龍三現(うんりゅうさんげん)!』


『雲龍大八式! 雲龍行功(うんりゅうぎょうこう)!』


『雲龍大八式! 龍昇九天(りゅうしょうくてん)!』


「……雲龍大八式じゃと? 隠忍(いんにん)するのみであった崑崙派の残党がなぜここに? ……いや、それどころではないの。雷壊魔尊(らいかいまそん)、左方右方を警戒せよ。ただならぬ気配がするわ。前方はおそらく陽動じゃ。凌光(りょうこう)魔尊、魔君(まくん)を二人ほど前方に加勢させ、早急に混乱を沈めよ」


「「御意(ぎょい)!」」


 前方ではなく左右? 

 ……ということは行列を挟むこの林の中に隠れているのでしょうか?

 わたくしは右眼を閉じ、左眼に宿る金眼の力の制御に集中します。


「御爺様。左方の林に四人ほど隠れている者がいます。おそらくですが、御爺様と同じくらい強い者が一人と、魔尊の方たちと同じくらいの者が三人です」


「……わかるのか、蝶姫よ」


「はい。わたくしの【太古天眼(たいこてんがん)】の力です」


 わたくしの左眼に宿る金眼。

 その真の名は【太古天眼】です。

 お兄様の持つ【黒龍六眼(こくりゅうりくがん)】とは少し違いますが、それでも非凡な力を備える特殊眼系の天賦(てんぶ)であり、わたくしが仙人様に見出された理由の一つです。

 わたくしの未熟により完全な能力を発揮することはまだまだ難しく、先ほど使った【遠隔視】や【透視】、そして対象の力量を見抜く【慧眼(けいがん)】は、この天賦の持つ能力の一端でしかありません。


「なるほどの、見事な天賦じゃ。ではその眼で林におる者たちの真気を読み取ることもできるかの? 【道家真気(どうかしんき)】か否かだけでも良いのじゃが……」


 ドウカ真気……ですか?

 御爺様には申し訳ないのですが、知らない言葉ですね。


◇◆◇ 青海(せいかい) 天魔神教青海第六支部管理区域 天魔神教太上(たいじょう)教祖(きょうそ) 貫海天魔(かんかいてんま) 天雲外(てんうんがい) ◇◆◇


 すでに式典は市内の行進も含めて、そのほとんどの行程を終えようとしていた矢先のことであった。

 行列の前方から鬨の声が上がり、かつて天魔神教が滅ぼした門派である崑崙派の残党による襲撃が始まった。


 余は天魔神教太上(たいじょう)教祖(きょうそ)にして武天九星(ぶてんきゅうせい)のひとり。名を天雲外と申す。江湖においては【貫海天魔(かんかいてんま)】の別号で呼ばれておる。

 此度は神教の領域全土で行われた【百雷鳳雛(ひゃくらいほうすう)】の仙界推挙の式典の責任者として、主役である可愛い孫娘・蝶姫に同行しておったというわけじゃ。


 今回の行列を襲った襲撃者たちに対しては、その存在そのものが囮であることも考慮しつつ伏兵を警戒しておったのじゃが、その会話を聞いておった蝶姫がとんでもないことを言いおった。


「御爺様。左方の林に四人ほど隠れている者がいます。おそらくですが、御爺様と同じくらい強い者が一人と、魔尊の方たちと同じくらいの者が三人です」


 いかに才能のある子どもであろうとも、未だ齢五つの幼児。

 本来であれば潜伏する者の境地を察することはおろか、隠れておることにすら気づくこともできぬじゃろう。

 ましてや、潜伏者の力量が余や魔尊たちと同程度となれば、その境地は玄境(げんきょう)か、あるいは生死境(せいしきょう)

 それほどの境地にあれば、体から武功を修練した痕跡がなくなる【帰真反璞(きしんはんぼく)】が起きていることは間違いなく、例え魔尊級の実力があったとしても見破ることが難しいというのに……。


「……わかるのか、蝶姫よ」


「はい。わたくしの【太古天眼】の力です」


 いやはや、流石じゃの。これが仙界より認められた者の才ということか。俗界の凡人には計り知れぬようじゃ。

 まあそれはともかくとして、その才がこの非常時に役に立つというのであれば、今少し手伝ってもらおうかの。


「なるほどの、見事な天賦じゃ。ではその眼で林におる者たちの真気を読み取ることもできるかの? 【道家真気(どうかしんき)】か否かだけでも良いのじゃが……」


 ふむ……いかんの、可愛らしく小首をかしげておるわ。

 いかに天賦の才を持とうとも学ばねば知りえぬこともあるということか、道家真気が何かわかっておらんようじゃ。

 孫娘の困惑した姿は、それはたいそう愛くるしいものではあるのじゃが、この非常時に愛でるわけにもいかんか。


「蝶姫よ。道家真気とは、前方で崑崙派を名乗った者たちが放っておる気のことじゃ。神教で心法を学んだ者に【魔気(まき)】が身に着くように、道教を軸とする心法を学んだ者には道家真気が身に着くのじゃ。前方の者たちと林の潜伏者の真気に違いはないかの?」


 もし仮に潜伏者の発する真気が質に多少の違いがあろうとも道家真気であれば、あの潜伏者は中原(ちゅうげん)の別の道門からの援軍である可能性が極めて高い。少なくとも、崑崙派の残党に生死境や玄境の達人はおらぬからの。


 じゃがまったく違う性質の真気であれば、あるいは仏学を軸とする心法を学んだ者に身に着く【不可真気(ふかしんき)】ということも考えられよう。


「……御爺様。わたくしの見る限りでは別物です。うまくは言えませんが、道家真気とは違うのにそれでも清らかで……その、どっしりとした真気ではないかと」


 道家真気とは違う、しかし清純で安定的な真気、のぅ。

 やはり断言はできぬが、仏学の不可真気かの?

 しかし、となれば別の道門から援軍が来ていない状態にも関わらず、何故か仏門の援軍が来たことになる。

 中原の仏門と言えばまず真っ先に上がるのは、少林(しょうりん)峨嵋(がび)海南(かいなん)といったところじゃの。

 遠方過ぎる海南派は除くとして、四川において確固たる武力を持つ峨嵋派は我ら神教もその動きを注視しておる。峨嵋山から生死境の達人、すなわち【武天九星】のひとりである峨嵋派掌門人が動こうものならば、それを見逃すはずもあるまい。

 つまり残るは少林派じゃ。

 しかし少林派が動くのであれば、それこそ同時に中原の他の大門派(だいもんは)も動きを見せるはずじゃ。崑崙派と同じ道家門派は特にの。


 ……何か見落としておるのかの?


「急報でございます! 前方の襲撃に正体不明の者たちが加わりました! 三名ですが、魔君級の達人も見られます!」


「援軍の要請は?」


「ございません! 先ほどご加勢くださいました掌爆(しょうばく)魔君様と残熱(ざんねつ)魔君様により敵の第一波と推定される崑崙派の殲滅がなされました! 第二波も未だ凌ぐことは可能かと」


「うむ、ご苦労じゃ」


 正体不明の勢力ではあるのじゃが、それについて考えておる場合ではなさそうじゃ。


 第二波に魔君級の、すなわち化境の境地が三名。

 左方の林に、潜伏する者には玄境が三名と生死境が一名。

 この時点でこちらの戦力を上回っておるのう。

 化境の数は勝れども、境地が一つ違えば十倍の差が出るともいわれるものじゃ。玄境の人数に差が出るのはいささか厳しいわ。

 あるいは更なる伏兵がいる可能性も十分に……。


 しかし、敵の目的が読めぬままじゃな。結局狙いはなんじゃ?

 生死境と玄境の者が潜んでいる以上、武天九星である余の首かの?

 あるいは仙界に昇るほどの逸材である蝶姫の暗殺か? いや、誘拐ということもあるの。

 ふむ……読めぬな。致し方ないか。


雷壊魔尊(らいかいまそん)凌光魔尊(りょうこうまそん)


「「はっ!」」


「前方の賊どもが突破して来ぬうちに、左方の林に隠れた者どもを潰す。出るぞ」


「「御意!」」


赤蓮魔君(せきれんまくん)。その方はここに残って蝶姫の護衛じゃ。劇毒(げきどく)の解放も許す。身命を賭して守れ」


「御意!」


「残りの魔君は余に従え。賊の玄境を一人、魔君三名で抑えて見せよ」


「「「御意!」」」


 妙な胸騒ぎがするが、賊の狙いが蝶姫の暗殺であった場合を考えると、あまりこちらに近づかせる訳にもいかん。生死境同士の戦いともなれば他の者を巻き込まずに終わらせることが難しいからの。

 かくなる上は、先に林の潜伏者のを片付けておいた方がよいじゃろう。


「では出陣じゃ!」


 ……やはりどうにも戦力が足りぬわ。あと一人でも魔尊がおればの。その者に蝶姫の守りを任せるのじゃがな。

 いかに赤蓮魔君が化境の達人とはいえ、これ以上の伏兵が出た時は厳しいかもしれぬ。

 まあ劇毒の解放も許したのじゃ、なんとか時間を稼いでくれればよいのじゃが……。


◇◆◇


 凄惨にして厳しい戦いであった。

 そして悲惨な戦いであった。

 なにより悲惨であったのは、賊を倒して戻ってきた我らを迎えたのが赤蓮魔君を始めとする護衛たちの屍であったということじゃ。

 そして誰より守るべき蝶姫の姿はそこにはなかったということじゃ。


 余は余に従う魔尊・魔君と共に、賊の潜伏する林へと出陣した。

 林に潜伏する賊の戦力は、蝶姫の申した通り玄境の三人と生死境が一人。

 蝶姫の護衛に不安がある我らは、すぐさま攻撃を仕掛け短期決戦への移行を促した。


 されど賊どもの戦力は、それぞれが境地の壁に肉薄した玄境の極と生死境の極。

 最も若い魔君であった陰殺魔君(いんさつまくん)が瞬く間にやられ、残った墨剣魔君(ぼっけんまくん)金流魔君(きんりゅうまくん)の二人が賊の一人を抑えにかかった。

 墨剣魔君は経験豊富な武人であり、金流魔君は掌法のみならず外功にも長けた武人である。さらに賊は自らの所属を隠すためか威力の強い武功を使用しておらず、それゆえなんとか抑え込むことに成功しているようであった。


 魔君二人による活躍により、余を始め魔尊たちも、それぞれが一対一の形で戦うこととなった。

 幸いにして、雷壊魔尊も凌光魔尊も玄境の極の境地にあり、得意武功を自ら封じている者に後れを取ることは無い。

 さらに余の相手である生死境の賊は、何故か戦い慣れておらぬようでどうにも動きがぎこちない。


 実力伯仲(じつりょくはくちゅう)の者が向かい合い、そのまま膠着(こうちゃく)状態へと移行する。

 そう誰もが考えた瞬間、余はその思考の隙を突き攻撃を放った。


 放った攻撃は、破天神槍(はてんしんそう)六式(ろくしき)が第四招式『超光(ちょうこう)出征(しゅっせい)』。


 槍術の極致であり、極に至った【()】を宿すその一撃は、生死境の賊の片腕を奪い、さらには魔君という格下を相手取り油断していた賊の命を一瞬にして奪い去った。

 それに驚愕したのは玄境の二人の賊。両者は連携を図りながら、腕を失った生死境の賊を守り、自らの得意武功と思われる神功絶学(しんこうぜつがく)を繰り出した。


 ……生憎と見たことのない武功であったが、感じた真気は間違いなく不可真気であり、やはり賊の正体は仏門の武僧で間違いないのだろう。

 その後はひどい乱戦となり、戦いは賊の命をすべて奪うまで続いた。


 結果から言うと、こちらで生き残ったのは余と凌光魔尊のみ。

 雷壊魔尊、墨剣魔君、金流魔君の三名は自らを犠牲とした決死の行動により聖火の灰となった。


 戦いを終え、馬車のある空き地まで戻った余らを迎えた屍の中には、蝶姫の護衛に残した赤蓮魔君と護衛たちの他に、前方の騒ぎを沈めるための援軍として向かったはずの掌爆魔君の姿もあった。


 生き残った者の話を聞く限りでは、後方の異変を察知して舞い戻ってきた掌爆魔君だが、右側の林から侵入した賊に赤蓮魔君とともに敗れたとのことで、二人の魔君を瞬く間に倒した三人の賊は、護衛網を突破し蝶姫の身柄を押さえ、そのまま出現した林の中へと連れ去ったらしい。


 やはり蝶姫は(さら)われていた。


◇◆◇ ??? シャンバラ 金蝉寺(きんせんじ)仏門使者 ??? ◇◆◇


 ついにこの日が来ましたか。

 俗界へと降って既に四年。

 金蝉寺長老である師父様からは十年の猶予が与えられておりますが、そもそも拙僧自身がこの低俗な俗界に長居したいわけではございません。

 故にようやくこの時がというのが真の心境でございます。


「ご苦労様でした。ポタラ宮が誇る吉祥上師(きっしょうじょうし)方のお働きには御仏もお喜びのことと存じます」


 足元に転がる三体の(むくろ)

 たしか宝傘(ほうさん)上師と蓮華(れんげ)上師と勝幢(しょうとう)上師でしたか?

 既に口封じとして往生(おうじょう)して頂きましたが、それでも感謝の言葉は忘れてはいけません。


「つきましては、些か無粋ではありますが報酬のお話を致しましょう。金一両ではいかがでございましょう?」


 再び足元の骸を見ますが、答えが返ってくるはずもございません。


「異論がないようであれば重畳です。それではこちらは冥土の土産としてお渡しいたします」


 茶番はこんなもので良いでしょう。

 足元に転がる骸に一両の金を放り投げ、自らの腕の中で眠る幼女へと視線を移しました。

 下界の仏門を使い潰し、さらに薬師如来(やくしにょらい)の転生体などという虚言まで吐いてようやく手中に収めたのがこの娘です。

 そうまでして求められた才能というものは、金蝉寺の直伝(じきでん)弟子である拙僧であっても寡聞(かぶん)にして存じ上げません。


「ふむ……、やはり素晴らしい資質ですね。如来の転生体という戯言(ざれごと)も信じたくなってしまうような天凛です」


 神丹の気配がするのは本当ですが、当然薬師如来の転生体という訳ではありません。

 すぐさま金蝉寺へと連れて行かねばならないのですが、仙界への扉を開くのには今少し時間が必要です。後学のためにも天の寵愛を受けた存在を観察させていただきましょう。


 金色に光る左眼と右目の下に埋まる翆色の結晶体。

 金眼の方は【天賦・太古天眼】ですか。たしか持ち合わせる特殊能力の他にも、あらゆる瞳術の効果を増幅させるという天賦ですね。

 結晶体の方は【稀物・虚空晶石(こくうしょうせき)】ですか。これを持って生まれたのならば、おそらく【規則(きそく)虚空之力(こくうのちから)】も扱えるのでしょう。


 朱色の混ざる金色の髪と濃密な火の気配は、鳳凰(ほうおう)の特徴が強く出ております。

 【血脈・鳳凰血脈】程度の濃度ではこれほど強く感じるはずがありません。おそらく最低であっても【真脈(しんみゃく)・鳳凰真脈】でございましょう。

 さらに言えば【真脈・鳳凰真脈】だけでなく、【天賦・神鳳霊体(しんおうれいたい)】も持っているのかもしれません。


 ここまで鳳凰に関係する天賦を持ちながら神丹の気配がするということは、丹薬にされて丹霊(たんれい)となった鳳凰の転生体と言ったところでしょうか?

 まあすべては憶測にすぎませんし、詳しくは金蝉寺に戻ってから調べることになるのでしょうが。


 そして忘れてはならないのが【涅槃仙骨(ねはんせんこつ)】。

 仙界でも伝説として語られる至尊道骨(しそんどうこつ)の一つですね。

 今まで挙げた他の天賦が一切なくとも、これさえあればその将来は約束されるほどの代物です。

 特にこの道骨に宿る【神通(しんつう)涅槃法身(ねはんほっしん)】の強さは、仙界のすべての法身の中でも十指に入るとか。


「真に素晴らしき逸材でございますね。しかし魔の気配がいささか強すぎますか」


 最後に無視しえぬ深く濃い【魔】の気配。

 【血脈・天魔血脈】程度ではないのでしょう。おそらく【真脈・太初真脈(たいしょしんみゃく)】ですか。

 どちらにせよ【魔】である以上は仏門にはそぐわぬものです。

 連れていく前に降魔真言(こうましんごん)で封じておくとしますか。


 さあ、帰りましょう。任務は無事完了です。


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