少し前の共通心界内部
記憶を与えた俺にラル、ニル、ソワラスから忌避と恐怖の目を向けられている。
全てを知っているセリィは変わらない優しい目を向けてくれていた。
……ありがとう…
こうして好きだった人たちにあの目を向けられても君だけはずっと……
「で、どうする?
お前らが向けているその目が向けられている先は自分達が好きだとか言ってきた本人だぞ?」
「ち…がう…お前はエルムじゃない」
「そうだよ…エルム君は僕たちにそんなことは言わない」
「認めろよ、これが現実だ、あ、いや別に認めなくてもいいか
なにもしなかったらエルム=ギールは封印されて出てこなくなるだけだし」
「っ!!!」
「そうだな……もうこれは切っとくよ、今の俺らに一番あってない」
するとエルムは左手を三人のほうに向けると手刀で人差し指以外の指を全て切断した。
その行動が示すことは……
「これで俺はみんなとなんの関係もない」
結婚したということをなかったことにするということ。
結婚は男性の指に傷をつけ、そして血を女性の体に取り入れる
離婚はその逆である
だから離婚ではない、なかったことにする。
それが結婚した証の指を切断することである。
「まあ、お姉ちゃんは、元々お姉ちゃんだからあるといってよかったかもしれないけど、今の身体は死神だからね」
このなかで唯一の血縁関係であったソワラスも昔に死神の意識を乗っ取り身体は死神のものだから血縁関係はない
「後はみんなの意思だ
みんなはこの全てを知った後でエルム=ギールと一緒にいられる?」
「えっ?」
「みんなが助けられればエルム=ギールはもとに戻る
みんなが知っているエルム=ギールに」
「…本当に戻るの?エルちゃんは」
「ああ、助けられたら全てを戻してあげる、君らにあげた記憶も、今の俺の人格も」
「……やるわ、エルちゃんを助ける」
「私もやる」
「僕も」
「……そうだろうと思った」
みんなが求めてるのは最初の俺じゃない最後の俺だ……
「じゃあ…」
「…こんなの助ける…じゃない」
「…いいんだ、別にわかってるから…」
「よくありません!!なんでエルム様がこれ以上犠牲になる必要なんてない!!」
ここまでほとんどなにも喋らなかったセルナはエルムに向かって走りそのままエルムに抱きついた。
「落ち着いてよ、セリィ、どうせ俺はいなくなるから」
「それでも!どうして!エルム様ばっかり!!」
激情を抑えきれないセルナの目には涙がこぼれ続けていた。
まったく……優しいよ、セリィは
「ありがとな…でも、いいんだよ別に
みんなが求めてるのは神災じゃない、優しくてなにもできないエルム=ギールだから」
「そんなの…エルム様はエルム様じゃないですか……」
「だから…君には任せられる、
ダメだったら……俺を頼むよ」
「私はエルム様と……エルム=レイル=ギールと一緒にいたいだけなのに…」
「っ……俺だって普通に生きたかった……」
平和で、ただ、普通に……
ダメだなぁ……涙が止まらないや
ふと、三人のほうを向いた。
その表情は先ほどの忌避と恐怖、だけではなく戸惑いが混じっているかのようだ
俺は無性に腹が立った。
ふざけるな
「なんだその顔は、なんだよ、今更」
「いや、私たちは…」
「お前らが助けたいのは俺じゃない!!エルム=ギールなんだろうが!!今更同情なんかしてんじゃねえよ!!」
右腕で空を切るとなにもなかったその空間に突如15個の真っ黒の立方体が出現する。
「この15個の立方体の中にはそれぞれ人格が入ってる!お前らが知っているエルム=ギールもな!!
助けたいんだったらこの中のひとつに入っているエルム=ギールを助けてみろ!!」
「……ぇ……ぁ……」
ギリッ
「お前らでひとつ選べ!
それがエルム=ギールだったらそれだけで助かるさ!!」
「……違かったらどうなるの」
「お前らが知ることじゃない、助けたいのはエルム=ギールだけなんだから」
「こんなの……当たるはずが……」
「だったら諦めてろよ!!これで終わりだ!!」
「そ、そんなの!」
「助けたいんだったら奇跡でも起こしてみせろよ!!制限時間は五分だけだ!!」
「五分!?」
時間がないんだよ…こっちだって……
「選べよ!この中のひとつだ!!」
そして……
………外れる
それは、現実世界のエルムへ……




