天帝と魔王
……俺は今度は優しい夢を見ていたんだ。
とても幸せでとても優しい
たかが死なない程度の温すぎるいじめがあった
ただそれだけだ。まだ辛いと言えることなんて
しかし、今回はそれ以上に楽しくとても……幸せだった。
また、始めに戻るだけ
俺はまた戻り新たに形成される人格と共に……
まあ、ほんとは……捨てたくないなぁ
この、また会えた皆と一緒に賑やかに……
……でも……もう無理だ……
ビスルトの目はとても懐かしい
まるで親の敵のような者を見る目で睨むさまは10歳の頃以来だろうか、あの頃はまだ何も知らなく未熟だった、だから感じ方が違うのだろうか?
こんなにも苦しくなんて……無かったよ
「そうだ、俺が神災だ」
「しん……さい」
「アリス!」
「そうだよ、アリス、俺から離れた方がいいんじゃない?今の俺にアリス、君にはなにもすることなんて出来ないからね」
「……エルム君はエルム君よ、私が勝てないなんて……ありえない」
「やめなさぃ!!貴方だけじゃない!他の誰にも……エルム=レイル=ギールには……」
「…というか…全部冗談でしょう?……だって……」
拙い足取りでふらふらしながら近づいていくアリスはまるで幽鬼のようである。
しかし……
「エルム君は……」
手を伸ばしエルムに触れ……
バチッ!!
「ッ!!!」
「……まだ、俺は……」
バチッ!!
「なに!これ!!」
バチバチ!!
「ダメだよ、これ以上は俺に近寄れない
……俺はセリィしか信じることができてない
俺が心から信用しているもの、それか、俺自身から行かない限り誰も近寄ることは……絶対にできない」
「どうして!どうして誰も信用してないなんて言うの!!」
「出来ないものはできないさ」
「私に好きって!好きって言ってくれたのに!!」
「ああ、言ったよ、今でも思ってるよ……でもね、それとは違うんだよ」
「なにが!!」
「……君は知らないだろう、大好きな……人達にあの目を向けられ、全ての人達に恐怖され嫌悪され……憎悪されることの悲しみ苦しみ……絶望、を」
「で、でも!私は貴方を!!」
「君もその一人だったんだ」
「…え?」
「君も、今のビスルトと同じあの目をするんだよ……わかるか?いや……わかられてたまるか……あの苦しみを!あの絶望を!!なあビスルト!お前の記憶で俺は何をした!何をしたんだよ!!答えてみろよ!!」
「……!」
「答えられねえよな!!答えられるわけねえよなぁ!!
なにもしてねえんだからぁよぉおおお!!
周りから聞いた話だけで勝手に恐怖して!俺といた時間!過ごした時間なんてものは無意味なんだよ!!無いんだよ!!それを何より俺が一番知ってんだ!!!」
ズガァアアアアア!!!!
突如天井が全て破砕する
そしてその直後にとてつもない熱気が俺を襲う
「不燃霧!」
火を通さない霧
熱気の後に特大の火球が飛んでくることはもうわかっている。
「やっぱり来たか……異級、強風」
落ちてくる瓦礫を範囲を広くした強風で吹き飛ばし、俺は火球によって開けられた天井を見上げる。
『ありえない程の魔力を感知したのが……なぜ、お前なんだ……エルム』
「よお、グラグ、お前は絶対に来ると思ってたよ」
『……お前は誰だ』
「俺はエルム=レイル=ギールだよ、正真正銘の……な」
『なら、前にあったお前と同じ姿をしたやつは……』
「一応俺だ、回復、治癒、解呪しかできない、心優しき俺の人格の一つエルム=ギール君だよ」
『どうして魔力が違う?お前の魔力は緑色だったはずだ』
魔力にも色がある。
その色によって得意不得意がわかったりするものだ
基本的に見えないけど
「人格の一つっていってるだろ、全て集めてる状態がこれだ」
『……すまない、契約しておいて自ら破ることになるとは……』
「ふっ」
『お前はこの世界に存在してはならない、なので、ここで死んでくれ』
「殺されるんなら大好きな人の腕の中でってのが夢なんで、断るよ」
『せめて痛くはないように消し去ってくれる』
「やってみろ……と言いたいところだがお前と戦うのは俺じゃないんでな」
『何をいっている、俺がお前を消し去るのだ、戦うわけではない』
「はぁ、自分の強さを過信しすぎんなよ、いくらお前の上に今まで誰もいなかったとはいえ今いないとは限らないんだよ
そしてお前の相手を今から見せてやる
『我を主とし自らを主に捧げ
世界の法則に逆らい今ここに呼び出されよ!
召喚!!金天帝竜!サン!』」
グラグの正面上空に現れた魔方陣から何か、いや、この世界での生態ピラミッドの頂上……グラグと同格の竜
金天帝竜、サン
『久しぶりだな、化け物よ』
「10年ならお前らにとってそんなでもないだろ?」
『ふっ、まあな』
『な!なぜ……お前が!サン!!』
『うるせぇよ、グラグ、お前と話すことなんてない、我らにあるのは戦いのみだ』
『ふざけるな!戦ったら世界が滅びるだけだ!』
「まあ、俺と戦うって言うんならグラグ、あんたでも一瞬で消し去れるぞ?」
『相変わらず化け物か、いや、神災と呼ぶべきか?』
「何でもいい、別に否定なんてしないからな」
『まて!なぜ、お前が召喚された!召喚には契約が必要なはず!!しかしお前は人間になんぞ興味はないはず!!』
『ああ、愚かな人間になんぞは興味ない、ただの家畜だ、しかし、こいつは違う、しかしそんなことはどうでもいいだろう?』
「さあ、盟約に従い、決着をつけて、場所は俺が用意してあげるから……
全級、異戒絶界」
エルム=レイル=ギールにのみ許された絶対的な隔離世界
その世界は全級、現実世界をも一瞬にして閉じ込められる
そして今回そこに誘われるは最強の二体の存在
『……ありがとう、我が主』
「気にしないで、サン
グラグ、君にもあげるよ、俺が消し、改変させた記憶を……」
『……消した?改変っ!!?』
「さようなら……
どうか……ーーーーにな……」
それを最後に、この世界で二体の絶対王者を見ることはなくなる……
「……俺の役目は後何個だろうな……」
「…なに……今のは……」
……ざわ……
「そろそろ、外が騒がしくなってきたな……
さすがにやりすぎだもんな」
開けられた天井に覗く学生やグラグやサンがいたところで騒ぐ人々が多くなる
「ビスルト」
「な、なに!」
「それは俺のものだ、返してもらうよ」
エルムの過去の記憶を見せたエルムが作った魔石がビスルトから飛び出し、掴む
「じゃあ、俺を……いや、エルム=ギールを虐めていた学園の奴等に度肝でも抜かせてきますか……もう暇だし」
俺は軽くジャンプするよう何気なく跳ぶ
しかし、その跳躍力は常人並ではない。
一瞬で上空30メートルほどにまで跳び上がる
「……いったい……」
そんなアリスの言葉が聞こえた気がした
「何があったんだ……?」
突如倒壊した学園のB塔に多くの野次馬が集まってきている。
「さっき黒い竜もいたわよね?」
「お、俺も見たぞ!」
「金色の竜もいたぜ!?」
「で、でもいったいどこへ……」
「ねぇ!空になんか浮いてるわよ!?」
「人?でもなんで」
「あいつ……エルム=ギールじゃねぇか?」
「なわけねぇだろ、あいつ魔術使えねぇじゃん」
「で、でもよぉ」
混乱してるなぁ、こいつらにどう思われようが知ったこっちゃねぇけどな
「よぉ、久しぶりだな、くそ野郎共」
「……おい、なめてんのか?最弱エルムのくせにどんな口きいてんだよ」
「ちょっと浮くことができるようになったからって調子に乗ってるんじゃないの?」
「てかなんでお前がここにいんだよ、お前学園を退学になったって聞いたぞー!」
「あーうるせぇうるせぇ」
「おい!あいつを打ち落とせ!」
「おうよ!フレイムブラスト!!」
「ニードルウィンド!」
「レインボルト!!」
所詮ただの学生、火、風、雷属性の中級である。
そんなものは今の俺には意味が無い
目の前の心理障壁に阻まれそれらの魔術は全て吸収された
「いくらでも打ってこいよ、なんでも、どんな魔術でもいいぜ?」
「き、効いてない?」
「ほら!俺はどうせ最弱なんだろ!!やってみろよ!おい!!」
今だけはお前らに与えられるもんがあるんだよ
前の俺では出来ないものがな!
「おい!お前ら!一斉にやるぞ!自分の一番強い魔術だ!!」
「「「「「お、おう!!」」」」」
「死ねよ!エルム!
ランドプラント!」
「アシッドレイン!!」
「ライトキャノン!!」
「エアレィッド!」
……
数々の上級、そして、少ないが最上級も混ざる魔術の雨、数にして数十は下らないほどある魔術は全てエルムへと放たれた
しかし……
「全く…弱すぎだな」
全て消滅する。
消滅魔術、ラープスソースリィ
「見せてやるよ、俺の化け物具合を
金炎息+黒炎息
収級、金黒天魔」
この日世界は二回目の崩壊を予期した。




