表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/26

16 子犬

無事生まれてくれるのか?

犬好きにはたまらない瞬間の一つですね。

 畑を手伝い。

家畜の世話を手伝い。

狩りをしたり。

村の周辺を探索したり。

料理を教わったり。

そんな日々を送っている。

出産ももうじきとの事だ。

侮っていたつもりはないが、

畑や家畜の世話は思っていたより激務だった。

かなり鍛えている自信はあったがそれでも重労働だ。

そんなある日の事。

ジャックさんは鞣し作業。

エリーさんとマーシーちゃんは機織り。

俺はユキと村の周辺を探索していた。

イノシシを二頭狩って解体した。

日が暮れる前に帰る。

家に着くといつもと違う様子だった。

家の前で三人ともそわそわしていた。

そして俺に気付いたマーシーちゃんが声をかける。

「あっ!ヒロおかえり!」

時間もたち仲良くなったので呼び捨てである。

すぐ両親も俺に気付く。

「ただいま!何かあったんですか?」

「ああ!ヒロか。」

「実はワンコが産気づいたんだ。」

狩をしている間に産気づいたらしい。

「ほんとですか!!」

「ええ!もうかなり時間がたったので、そろそろだと思うのだけれど・・・」

そう心配そうにエリーさんが言う。

「なるほど!」

「一応近くにいない方がいいかもと思ってな。」

家の中から母犬の声が聞こえてくる。

俺もユキを馬小屋に連れていき家の前で待つことにする。

するとしばらく経った後。

家の中から子犬の様な鳴き声が聞こえてくる。

キャンキャン!!

小さいが元気な鳴き声だった。

「おお!」

一同安堵の声を上げる。

「生まれたみたいですね!」

「もう入って大丈夫!?」

「もう少し経ったら、ヒロから入ってみたら?」

ってことで俺が先に様子を見に行く。

少したって家の中が静かになったころ。

そーっと中の様子を覗いてみる。

ゆっくりドアを開けて顔を出す。

ドアから顔を出し家の中を見る。

すると母犬の乳を飲む二匹の真白な子犬が居た。

母犬は赤とか茶色系の体毛なのだが、子犬は全く違って真白だった。

眺めていると母犬と目が合った。

『入っていいよ!』

とうなずく母犬。

お言葉に甘えて家に入る。

母犬は子犬を大切そうにペロペロと舐めている。

「無事に生まれたか?」

「何か欲しい物はあるか?」

『特にない。』

との事。

「そうか。」

結構一緒にいるので、ユキも母犬も何を言いたいのか完璧にわかってしまうのだ。

「ほかのみんなも中に入って大丈夫か?」

と聞くとあまり近づかなければ大丈夫らしくみんなを家に入れる。

「もう大丈夫ですよ。」

「ただ子犬には近寄らないでほしいそうです。」

「そうか!」

「それなら遠くから見るだけにしましょう!」

ってことでみんなで中に入る。

「おおー」

「真白だ―」

やはりあの母犬から真白な子犬が産まれると驚くよね。

「動物や魔物の生態は良く知らんが。」

「ヒロが腹の子に魔法をかけまくったお陰で真白に染まっちまったのか?」

「え?それが原因ですか?」

「いや?知らん!」

と適当なことを言うジャックさん。

良かれと思い【癒しの手】で腹を撫で魔力を注いでたのはよくなかたかな?

「まあお母さんも気にして無さそうだし、いいんじゃない?」

とマーシーちゃんが言うと『うんうん』とエリーさんもうなずく。

「本人たちが気にしてなければ問題ないか。」

「お父さんが白かった可能性もあるよ?」

そんなことを話しながらその日は、犬たちに気を使いひっそり食事をとった。


次の日の朝


 あさ起きて居間に行くと、元気に歩き回る双子が居た。

「もう歩けるのか?」

歩くというより駆けまわっている子犬を見ながら聞くと。

母犬が『こいつら元気すぎです。』って感じで嬉しそうな困ったような様子だった。

エリーさんは朝食の準備をしていた。

「元気な子たちね!」

とエリーさんも嬉しそうだった。

「おはようございます。」

「騒がしくてすみません。」

「うふふ。気にしなくていいのよ。」

「こんなにかわいい子たちを迷惑だなんて思ったりしないわ。」

こんなことを言ってくれる人たちで良かった。

「双子がある程度大きくなったら野生に帰ると思います。」

「なので可愛がれるのはそれまでですね。」

「あら!そうなの?」

「はい!この母犬は群れが無くなってしまったので、出産のため一時的に着いてきているだけだと思います。」

「ふーん。そんな感じではなさそうだけど?」

とえりーさんが母犬を見ながら言う。

俺も母犬を見ると。

母犬はじーっと俺を見ている。

「好きなようにして良いって事だよ。」

着いてきてくれるんなら犬好きとしては大歓迎なのだが。

今のうちに母犬の寝床の水や藁を変える。

色々触っていると双子が近寄ってきた。

「よーしよーしいい子だなー」

とかなんとか言いながら撫でてみる。

母犬は特に嫌がったりはしなかった。

母犬が大きいので子犬もそこそこの大きさだ。

「どうやら両方雄みたいですね。」

一応エリーさんに伝えてみる。

「そういえば犬系の動物って子だくさんだと思っていたけれど。」

「二匹しか生まれなかったのね。」

「確かにそうですね。」

言われてみれば犬って大きいほど多産のイメージだった。

実は犬じゃないのか?

ふと母犬を見ると『細かい事は気にすんな』って顔をしている。

「まっ!いっか」

見た目は日本の柴犬か秋田犬に似た風貌である。

そうしているとジャックさんとマーシーちゃんが起きてきた。

「おー!かわいいー」

今日も元気なマーシーちゃんだ。

マーシーちゃんが子犬に触れようとする。

しかしまだ子犬は警戒している様子だった。

「えー!?なんで?ヒロはいいのに私はダメなの?」

なぜでしょうね。

「腹の中にいる時からなんかやってたみたいだからか?」

「そうなんですかね?」

わかりません。

そうして日常に子犬が増えた。

しかし母犬が子犬の面倒を見ているので。

他の俺やジャックさん達三人は今までとはあまり変わらなかった。

十数日経って子犬の毛がしっかり生えてきた頃に発見があった。

「あれ?」

「どうかしました?」

ようやく子犬に触れるようになったマーシーちゃんが何か気付いたようだ。

「何か体に模様がある!!」

「模様?」

そういわれて双子をよく見てみる。

双子は全身真白の体毛だが、目元や足らへんや尻尾の先がそれぞれ別の色が付いていた。

「なんだこれ?」

片方は白に赤でもう片方は白に青の模様があった。

「汚れかなと思ったけど拭いても取れないから多分模様だよ。」

まず母犬の色と違うのは父犬が真白だったからだとすると納得できる。

しかしこの模様はなんだ?父が赤と青と白だったのか?

よくわからない。

ジャックさんが口をはさむ。

「やっぱヒロが生まれる前に色々してたからか?」

「あんまり詳しくないけど、魔物化したんじゃね?」

「まじか・・・」

そういえば誰かが動物が魔力に順応すると魔物化するみたいな事言ってたな。

「やり過ぎたかな?」

後悔先にたたず。

「まあ元気に育つって事で気にしなくて良いんじゃね?」

「そうよ!ちゃんと躾すればハンターに狩られたりしないわよ!」

ジャックさんとマーシーちゃんは気にするなとの事。

「魔物をペットにするのはまずいですか?」

2人は少し考えて同時に答える。

「「良いんじゃない?」」

「まあ・・・いっか!」

案外適当なようだ。

気にしないことにした。

まあ一緒に行動すると決まったわけではないし。

魔物の方が元気に丈夫に育つだろ。

子犬がそこそこ大きくなってきた頃。

母犬は子犬を俺に任せて村の周辺を散歩したり。

エリーさんやジャックさんについていくようになった。

軽い運動と護衛のつもりらしい。

時々畑の作物を食ってた奴らが減ったとの事で結構役に立っている様子。

もうこの家の一員のようになっていた。

この時期になってくると子犬はどこでもちょろちょろ歩き出す。

寝る時もきずいたら誰かの寝床に潜んでたりとかする。

しかし本当に真白なのですぐにわかってしまう。

ルーシーちゃんの所にも潜り込んだりする様だ。

そんな時ルーシーちゃんは子犬を抱えて寝るのだとか。

母犬は子犬の居場所を確認すると首を咥えて連れ帰る。

そんな様子をよく見るようになった。

母犬は子犬がまだ小さいから心配なのだ。


そんなある日。

ジャックさんが動物の皮や草や葉っぱなんかを使ってボールを作ってくれた。

という事で本日は皆で仕事を早めに切り上げて遊ぶことにした。

こういった時間が取れるって事はこの国が豊かな証拠だろう。

そしてここは村の近くの原っぱ。

「皆でピクニックなんて久しぶりね!」

「そうだな!町にまで行って買い物したりはするけど、のんびりピクニックなんてあんまりしないな。」

「ワンちゃんたちが居なきゃ家でいいかってなっちゃうものね!」

そこそこ開けた原っぱでワンコたちが自由に走り回れるくらいの広さがある。

とりあえず敷物を敷きジャックさんとエリーさんはのんびりしている。

そして子犬とマーシーちゃんは楽しく玉遊び。

それに対し俺と母犬とユキは原っぱを全力疾走。

日々の運動不足を解消すべく一人と一匹と一頭は爆走中。

もちろんユキが一番早いので手加減してくれている。

次いで母犬、最後に俺。

人の身でどうにかついていけているのだ。

遅い訳ではない。

「待てー!!」

マーシーちゃんは微笑ましく子犬らと追いかけっこ。

「うおおぉぉぉぉぉ!まちやがれぇぇ!!」

対してこちらはガチンコ鬼ごっこ。

定期的にユキがこちらを振り向いて煽ってくる。

舐め腐っているというよりも純粋に楽しんでいる様子。

空気感は天と地の差がある。

一方ジャックさんとエリーさんご夫妻。

「もっと飲んびりできると思ったんだが・・・」

とジャックさん

「彼らなりにのんびりしているのでしょうね。」

とニコニコしながらエリーさんが言う。

暫く爆走した。

その後久しぶりにユキにまたがり襲歩。

つまり全力疾走。

普段荷馬車を引いたり、森を移動したりするだけなのでなかなか全力疾走することがないのだ。

「こうして走るのは久しぶりだな!」

と言いながらユキの首をポンポンとたたく。

ユキも楽しそうに嘶く。

さすがに全力疾走だと母犬は付いてこれないようだ。

速度を落として一緒に走る。

「あんなにデカいのにあんなに早いんだね。」

と休憩中のマーシーちゃんが言う。

「輓馬だと思ってたが。その辺の足の速い馬よりはるかに早いな。」

とジャックさん。

「巨体に似合わず、歩調が軽やかだなと思っていたけれど・・・」

と二人は呆けている。

ぶっちゃけユキは既存の馬と比べると完全に異次元の生態をしている。

そうしているうちに昼ごはんの時間になったようで、マーシーちゃんが呼びに来た。

昼ごはんはパンと肉と野菜のサンドイッチを皆で食べた。

ユキには野菜や果物をあげて母犬にはそれに肉を追加した物をあげる。

走った直後なので母犬はかなり疲れたようだが、ユキはケロッとしている。

「あれだけでかくて白いのが走っていると綺麗だが迫力もかなりあるな。」

とジャックさん。

まあわからなくはないが。

「女の子にデカいとか迫力あるとか言ったら怒られますよ?」

ユキは女の子だから、かわいいとかきれいとかの方がいい気がする。

知らんけど。

「メスだったんだ・・・。」

さらにジャックさんがつぶやく。

「結構長い間居たのに。」

俺。

「一応ユキの背後に立たない様に気を付けていたからな。」

「なるほど。」

「あの時の蛇みたくなりたくないもんね!」

と苦笑いしながらマーシーちゃんが言う。

「あの時の蛇?」

とエリーさん。

そういえばエリーさんに蛇の話をしてなかった。

と思いユキが蛇をつぶして食べたことを伝えるとエリーさんは驚いていた。

ユキの方をチラッと見ると、『結構おいしいよ!』って顔をしてる。

さすがに毒蛇を食べる勇気はない。

てか歯の形状的に食べれるの?って疑問があるが後日様子を見ても全く問題なさそうだった。

その後はみんなで走ったり寝転がったりして、のんびり過ごした一日だった。

可愛い双子の子犬です。普通は5~6匹くらい生まれるそうですね。

魔物化のイメージは家の壁や服が日光にさらされて変色する感じ、

十円玉が変色する感じで、魔力にさらされたものが変化する事です。

生物も物も変化しますがそう簡単には変化しません。

主人公がアホほど魔力を注いだせいです。主人公がアホなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ