表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/14

11 ある日、森の中・・・

ある日、森の中と言えば?

そんな生物との出会いです。

 その鳴き声が聞こえてきたのは森の木々が開けた場所からだった。

遠目から様子を観察する。

そこには黒くてとっても大きな森のくまさんが直立していた。

森のくまさんの目の前には犬がいた。

お腹を大きくした犬系の動物だった。

巨大な柴犬か狐もしくはオオカミだと思う。

謎の犬系の動物といった感じだが多分犬だ。

体高は俺の腰付近で結構大きい。

しかし犬の方は傷だらけ。

今にも生まれそうなお腹と今にもくまさんに食べられそうな状況である。

熊は立ち上がり超興奮している様子。

近寄ろうものなら、くまさんパンチにて一瞬でお陀仏であろう事がうかがえる。

普通ならユキに全力で逃げてもらうのが生きる唯一の方法だろう。

しかしながら自分は犬派か猫派か熊派で言うと、他とは大きく差をつけて犬派である。

次に猫、くまさんは残念ながら最下位。

という事でユキに乗る。

そして左腰に差してある剣を抜く。

剣は通常の物、長さ1m以下で短め、堀のない剣身、少し弧を描いた鍔、柄の先には円盤状の柄頭。

「ユキ!あの犬を助けてくる。」

「接近した後俺が飛びかかるからユキはそのまま通り過ぎて距離をとってくれ。」

軽く作戦会議をした後、ユキに乗り猛ダッシュする。

これまで師匠達に散々ボコられていた。なので大きめのくまだろうが倒せる自信があった。

倒せずとも犬が逃げられる時間を少し稼げれば後はユキに乗って逃げればいい。

我ながら完璧な作戦だった。

それに多少の怪我を負えば熊も深追いせず逃げるだろう。

一瞬にしてくまさんとの距離は近づく。思ったよりも大きい。

ユキに乗った俺よりもはるかに背が高い。

くまさんはおおよそ4mは在りそうなくらいデカい。そして黒い。

そのまま走る。くまさんの後ろを通り過ぎる時、ユキの背を蹴ってうなじ付近に飛びかかる。

ユキのスピードもあり、ものすごい勢いでくまさんの後頭部の下、うなじ辺りその下付近に剣を突き立てる。

ザクッ!

音と共に深く突き刺さる。

しかし堀もない剣が、分厚い毛皮と筋肉と脂肪を持つくまさんに深く突き刺さってしまったらどうなるか。

刺さった剣を抜こうとしても全然抜けない。

「あ!やっべ!」

くまさんは大暴れ。

痛がっているが、弱っている様子はない。

くまさんは私を全力で振り落とそうとする。

くまさんパンチを食らう前に逃げよう。

一旦剣を持つ手を離してくまさんを蹴り距離をとる。

「まずい、剣がなくなった。」

犬が逃げる時間さえ稼げれば良かったのだが。

くまさんはこちらをロックオン。

熊は背中を見せて逃げると追ってくる。

なのでこの状況で後ろを向いて逃げるべきではない。

一応効いているのか?ただ怒っているだけなのか?両腕をぶんぶん振り回し吠えまくり大暴れする。

「あんなに深く刺さったのに随分と元気そうだな!!」

と文句を言うが、状況は変わらない。

「でも攻撃は大振りで、意外と躱せるぞ!」

師匠たちの猛攻撃を考えれば闇雲に腕を振り回す熊の動きは、子供のお遊びレベルだった。

しかし、どうにかする方法を考えなければ。

「ていうか魔法で先制攻撃すればよかったな。」

初歩的なミスだった。

くまさんの猛攻を避けながら考える。

とっさに出せる魔法は?炎や雷は良くない?

ってことで兎に使った時よりも強い【風刃】を2つほど発動する。

「【風刃】!」

と叫ぶ俺。気分的に叫んだ方が発動しやすいのだ。

一個一個は、ろくな防御をしていない人間の胴体を真っ二つにできる威力。

くまさんはとっさに両腕でガード。

腕を切り飛ばしたと思ったが毛の一本も切れていない。完全に魔法を弾くまさんの腕。

強靭な腕というより毛皮が特殊な様子だ。

弾くと言うより、【防御魔法】の壁で魔法を防いだ時のような感じ。

毛皮に当たった魔法が霧散する感じたっだ。

「まじかよ!!」

と言いながら再び攻撃を躱す俺。

「よし!逃げよう!」

素早く判断を下す。こいつは思ったより厄介だった。

魔法を使い周囲の土を操る。くまさんの足元に土を被せていく。

熊さんが動けない様にがっちり固める。

下半身が徐々に埋もれて拘束されていくくまさん。

「よし。にげっ!」

逃げるぞ!とユキに叫ぼうとしたその時。

くまのうなじ付近に何かが飛びかかる。

「ガウ!」

お腹の大きな犬とは思えないダイナミックで素早い動きでくまさんのうなじにとびかかる犬。

そしてくまさんから、犬が離れたと思った瞬間。

くまさんが吠え暴れ始めた。

その時くまさんのうなじ付近から血が吹き出す。

いつの間にか足元に転がってくる剣。

犬は『そいつをぶっ殺してくれ!』と言わんばかりに俺をにらむ。

なぜかユキと言いこの犬と言い意思が良く伝わってくる。

まるでドリトル博士だ。

ちなみにくまさんの方はさらにキレている。

「わかったよ!!」

と叫びながら剣を拾いくまさんに接近する。

最早下半身は拘束されていて動けない状態にもかかわらず。

狂ったように藻掻くくまさん。

しかしくまさんパンチを回避するのはた易い。

狙うのは、魔法を弾く毛皮以外。目か口内なら剣で貫けるだろうと思う。

右のくまパンチを交わす。くまさんの右腕を足場にしてジャンプ。

くまさんの顔面に飛びかかる。狙いはくまの左の眼球。

今度は魔法で【肉体強化】を施す。

「くらえ!!」

ブスッッ!!

音を立てて深く刺さる剣。剣を少しひねり力いっぱい抜く。今度はどうにか抜けた。

くまさんの腕は力なく垂れ下がる。頭部を蹴って距離をとる。

まだまだ、動くと怖いので下半身の土拘束は解かない。

少しの間ピクピクいした後、熊はびくりともしなくなった。

恐る恐る足元の土を元に戻す。

くまさんはうつぶせに倒れていく。

誰かが野生動物はしぶといと言っていた。

だからもう一度急接近しくまさんの口を踏みつける。

反対側の眼球を剣で突き刺す。

しかしびくりとも動かない。

「死んだ・・・よな?」

ユキが近づいてきた。死んだよ!とユキから伝わってくる。

「はぁぁぁぁぁーーー!!」

「死ぬかと思ったーーー!」

というと同時に仰向けに寝転ぶ俺。

魔法が聞かなかった時はどうなるかと思った。

剣は抜けなくなる。

魔法は効きにくい。

そんな感じで大変だった。

魔法は効きにくいが、地面の土を利用して拘束できた。

多分もっと強力な魔法なら通じたんだろう。

パワーも強く土による拘束も、いつまで持つか分からなかった。

「くまってこんなに強いのか!?」

とぼやく。

明らかにただの動物ではないと思う。

「魔物かな?」

前世でくまは直接見たことない。

だから実は今回結構怖かった。

なんせ想像の倍ほどでかいのに加え、魔法耐性のある黒い毛皮を持っていた。

それに最初の一撃は致命傷だろと思ったのに、逃げもせず向かってきた。

ユキに鼻でツンツンされて、ふと周りを見る。

すると犬っぽいのが辛そうにして倒れていた。

「おい!大丈夫か!?」

慌てて起き上がりデカワンコに駆け寄る。

お腹の膨らみ具合からわかる。

妊娠中の状態で相当無理をしたのだろう。

「大丈夫だ!今助けるからな!」

といいながらデカ犬に近づく。

体には傷が多数あった。かなり汚れてもいる。

おそらく逃げ回りながら戦ったのだろう。

周りを見渡してもこの母犬の一頭のみ。

多分番も仲間も熊に殺されたのかも・・・。

「まずは体と傷口をきれいにする。【浄化】!」

と手をかざしながら言う。

犬っぽいのはびっくりした様子だが、害は無いとわかるとすぐに落ち着く。

「傷を癒せ。【回復】」

神聖魔法をかけていく。

体は綺麗になり、傷も一通り治った様子。

あとはほんのり疲労回復効果のある【光の手】を使って。母犬を優しく両手でなでる。

これは気休め程度の効果だ。

頭や背中を中心に撫でる。

細心の注意を払ってお腹も優しくなでる。

お腹の中が無事であることを祈る。

魔法で浅い皿っぽいのを作る。

そこに水を入れ母犬に与える。

ついでにユキにも水を少し与える。

とっておいた小動物の肉を与える。

母犬は少しためらいつつ食べた。

「ゆっくり食べていいぞ!」

と言ってその場を離れる。

母犬が落ち着くまで、くまの解体でもしようかと思う。

犬から見て風下になるようにくまさんを引きずっていく。

丈夫そうな木の枝に吊るす。

めっちゃ重たかった。

鍛えていたし身体強化魔法でどうにかなった。

しかし前世なら絶対無理な重さだ。

熊って確か数百キロあるよな。

木の枝がミシミシ言っているが大丈夫だろうか?

くまの後ろ脚を縛り逆さ吊りにする。

その下に魔法で穴を掘る。

くまさんの首元にある血管ぽい所をナイフで切る。

ドバドバ血が流れでてくる。

腹を切開して内臓を傷つけないように取り出す。

内臓を取り出していると、心臓付近に石の様な物があった。

「これって魔石か?」

さっきの戦いの様子と大きさで予想はしていた。

取り合えず魔石を【収納】にしまう。

そして水魔法で血を洗い流す。内臓はどこ可食部か分からないのでとりあえず埋める。

その後ひっくり返したり引っ張ったりしながら、ナイフでくまさんの毛皮を丁寧に丁寧に剥いでいく。

「この毛皮あったかそうだな。」

「それに魔法も効かなかったし。」

見た感じは毛皮に魔法防御の魔法っぽい効果がある。

そもそもなんで、毛皮にかかっている防御魔法が物理防御の魔法ではなく、主に魔法防御の魔法だったのだろうか。

毛皮が固いから物理防御魔法は必要なかった?

だから毛皮にかかってるのはほぼ魔法防御?

と色々考えながら毛皮を触る。

ごつごつごわごわしていて固い。

物理防御魔法がなくとも多少の斬撃は防げそうだった。

「ユキのスピードも加わった上での全力の一撃だった。」

「だからどうにか刺さったのかな?」

どういう理屈で魔物化の方向性が決まるのかは知らないが、周囲の環境が何も関係ないとは言い切れない気がする。

周りに魔法を使う何かがいるのだろうか?

とりあえず解体は終わった。

普通の野生動物にはよく寄生虫などが居るらしい。

しかしこの熊には寄生虫っぽいのが見当たらなかった。

魔物だから寄生虫や微生物が付かないのか?とか予想してみる。

詳しい人が居たら聞いてようと思う。

「町に着いたら、くまの毛皮でマントでも作ってもらおうな?」

そんなことを考えつつ。毛皮と熊肉を【収納】にしまう。

犬のもとに戻ると。犬はあざっす!って感じで元気そうに立ち上がってた。

回復魔法を施したものの疲労の回復も早い。こっちもただの犬じゃないかも?

「元気そうだな!」

と言いながら魔力皿とバケツを片付ける。

「群れは何処かにいるのか?」

と聞いてみるが悲しそうな顔をするばかり。

どうやらあのくまさんに殺されてしまったかはぐれてしまったようだ。

「お腹も大きいみたいだし、一緒に行くか?」

と聞く。

さすがにこのまま放りだすのは俺の犬好き魂が許さない。

「肉と水なら用意してやれるからな。」

というとわんこはお供しますとでも言っているかのように、頭を下げる。

俺は犬の頭をそっとなでる。

そうして人間一人、馬一頭、犬一匹のメンバーになった。

普通なら殺されています。

異常な鍛え方をした主人公だからこそ倒せたのです。

普通は逃げの一択です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ