↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/96

11 ある日、森の中・・・

ある日、森の中と言えば?

そんな生物との出会いです。

 鳴き声が聞こえてきたのは森の木々が開けた場所からだ。


遠目から様子を観察する。


そこには黒くてとっても大きな『森のくまさん』が直立していた。


森のくまさんの目の前には獣がいた。その獣はお腹を大きくした犬系の動物だった。

巨大な柴犬か狐もしくはオオカミだろう。謎の犬系の動物といった感じだが多分犬だ。

体高は俺の腰付近で結構大きい。


しかし犬の方は傷だらけ。


今にも生まれそうなお腹と今にも『くまさん』に食べられそうな状況で、

熊は立ち上がってかなり興奮している。


近寄ろうものなら、『くまさんパンチ』にて一瞬でお陀仏だろう。

普通ならユキに全力で逃げてもらうのが生きる唯一の方法だ。


しかし――自分は犬派か猫派か熊派で言うと、他とは大きく差をつけて犬派である。

次に猫、くまさんは残念ながら最下位。


という事なので勢い良くユキに飛び乗り、左腰に差してある剣を抜く。

剣は通常の物、長さ1m以下で短め、堀のない剣身、少し弧を描いた鍔、柄の先には円盤状の柄頭。


「ユキ!あの犬を助けるぞ!」

「接近した後、俺が飛びかかる。ユキはそのまま通り過ぎて距離をとれ!」


軽く作戦会議をした後、ユキに乗り猛ダッシュ。


これまで師匠達に散々ボコられてきたので、大きめのくまだろうが倒せる自信があった。

倒せずとも犬が逃げられる時間を少し稼げれば後はユキに乗って逃げればいい。


我ながら完璧な作戦だった。

この熊に多少の怪我を負わせれば逃げてくれるだろう。


一瞬にしてくまさんとの距離は近づく。


思ったよりも大きいくて、ユキに乗った俺よりもはるかに背が高い。

くまさんはおおよそ4mは在りそうなくらいデカく、そして黒い。


駆ける。


くまさんの後ろを通り過ぎる瞬間。

ユキの背を蹴って、『くまさん』のうなじ付近に飛びかかる。


ユキのスピードもあって、ものすごい勢いで飛びかかる。

くまさんの後頭部の下、うなじの下付近に剣を突き立てる。


ザクッ!


音と共に剣が深く突き刺さる。


しかし堀もない剣だ。

分厚い毛皮と筋肉と脂肪を持つくまさんに深く突き刺さってしまったらどうなるか?


刺さった剣を抜こうとしても全然抜けない。


「あ!やっべ!」


くまさんは大暴れ、痛がっているが、弱っている様子はない。

しがみついた私を全力で振り落とそうと暴れる。


くまさんパンチを食らう前に逃げよう。

一旦、剣を持つ手を離してくまさんを蹴って距離をとる。


「まずい、剣がなくなった。」


犬が逃げる時間さえ稼げれば良かったのだが。

くまさんはこちらをロックオン。


熊は背中を見せて逃げると追ってくる。

この状況で後ろを向いて逃げるべきではない。


一応効いている・・・のか?

ただ怒っているだけじゃないか?

両腕をぶんぶん振り回し吠えまくり大暴れしている。


「あんなに深く刺さったのに随分と元気そうだな!!」


そう愚痴っても、状況は変わらない。


「でも攻撃は大振りだ!意外と躱せるぞ!」


師匠たちの猛攻撃を考えれば闇雲に腕を振り回す熊の動きは、子供のお遊びレベルだ。

この隙に、打開する方法を考えなければ。


「ていうか魔法で先制攻撃すればよかったな。」


初歩的なミスだった。


くまさんの猛攻を避けながら考える。

とっさに出せる魔法は?炎や雷は良くない?

ってことで兎に使った時よりも強い【風刃】を2つほど発動する。


「【風刃】!」


と叫ぶ。

気分的に叫んだ方が魔法を発動しやすいのだ。


一個一個は、ろくな防御をしていない人間の胴体を真っ二つにできる威力。

くまさんはとっさに両腕でガード。


腕を切り飛ばした!


と思ったが――毛の一本も切れていない。

熊さんの腕は完全に魔法を弾く。


強靭な腕というより毛皮が特殊な様子。

弾くと言うよりも毛皮に当たった魔法が霧散していた。

【防御魔法】の壁で魔法を防いだ時のような感じだった。


「まじかよ!!」


熊は攻撃再開する。


「よし!逃げよう!」


素早く判断を下す。


(こいつは思ったより厄介だ・・・)


魔力で周囲の土を操り、くまさんの足元に土を被せていく。

熊さんが動けない様にがっちり固める。


下半身が徐々に埋もれて拘束されていくくまさん。


「逃げるぞ!」とユキに叫ぼうとしたその時。


――くまのうなじ付近に何かが飛びかかる。


「ガウ!」


お腹の大きな犬とは思えないダイナミックで素早い動き。

そしてくまさんのうなじから犬が離れたと思った。


その瞬間、くまさんが吠え、暴れ始め、うなじ付近から血が吹き出す。


カランッ!


いつの間にか足元に転がってくる剣。


犬は『そいつをぶっ殺してくれ!』と言わんばかりに俺を睨んでくる。


なぜかユキと言いこの犬と言い、意思がしっかり伝わってくる。

まるでドリトル博士だ。


ちなみにくまさんの方はさらにキレている。


「わかったよ!!」


叫びながら剣を拾い、くまさんに接近。


最早下半身は拘束されていて動けない状態にもかかわらず狂ったように藻掻くくまさん。

しかしくまさんパンチを回避するのはた易い。


狙うのは、魔法を弾く毛皮以外。目か口内なら剣で貫けるだろう。


右のくまパンチを交わす。

右腕を足場にしてジャンプして、くまさんの顔面に飛びかかる。


狙いはくまの左の眼球。


今度は魔法で【肉体強化】を施す。


「くらえ!!」


ブスッッ!!


音を立てて深く刺さる剣。剣を少しひねり力いっぱい抜く。

今度はどうにか抜けた。


くまさんの腕は力なく垂れ下がる。


頭部を蹴って距離をとる。

動くと怖いので下半身の土拘束はまだ解かない。

少しの間ピクピクした後、熊は動かなくなった。


恐る恐る足元の土を元に戻す。


くまさんはうつぶせに倒れていく。


誰かが野生動物はしぶといと言っていた。

だからもう一度急接近しくまさんの口を踏みつける。

反対側の眼球を剣で突き刺すが、ピクリとも動かない。


「死んだ・・・よな?」


ユキが近づいてきて、『死んだよ!』とユキから伝わってくる。


「はぁぁぁぁぁーーー!!死ぬかと思ったーーー!」

そう叫んで仰向けに寝転ぶ。


魔法が聞かなかった時はどうなるかと思った。

剣は抜けなくなる。

魔法は効きにくい。

そんな感じで大変だった。


魔法は効きにくいが、地面の土を利用して拘束できた。

多分もっと強力な魔法なら通じたんだろう。

パワーも強く、土による拘束もいつまで持つか分からなかった。


「くまってこんなに強いのか!?」


明らかにただの動物ではないだろう。


「魔物かな?」


前世でくまを直接見たことはない。だから結構怖かった。

なんせ想像の倍ほどでかいのに加え、魔法耐性のある黒い毛皮を持っていた。

それに最初の一撃は致命傷だろと思ったのに、逃げもせず向かってきた。


ユキに鼻でツンツンされて、ふと周りを見る。

犬っぽいのが辛そうにして倒れていた!


「おい!大丈夫か!?」

慌てて起き上がりデカワンコに駆け寄る。


お腹の膨らみ具合からわかる。

妊娠中の状態で相当無理をしたのだろう。


「大丈夫だ!今助けるからな!」


そういいながらデカ犬に近づく。

体には傷が多数あった。かなり汚れもある。おそらく逃げ回りながら戦ったのだろう。

周りを見渡してもこの一頭のみだ。多分、番も仲間も熊に殺されたのかも・・・


「まずは体と傷口をきれいにする。【浄化】!」


手をかざすと犬が淡く光だす。

犬っぽいのはびっくりした様子だが、害は無いとわかるとすぐに落ち着く。


「傷を癒せ。【回復】」


回復魔法をかけていく。

体は綺麗になり、傷も一通り治った様子。


あとはほんのり疲労回復効果のある【光の手】を使って。犬を優しく両手でなでる。

これは気休め程度の効果だ。

頭や背中を中心に撫でる。細心の注意を払ってお腹も優しくなでる。


お腹の中が無事であることを祈る。


魔法で浅い皿を作って水を入れて犬に与える。

ついでにユキにも水を与える。


とっておいた小動物の肉も犬に食べさせる。

犬は少しためらいつつ食べた。


「ゆっくり食べていいぞ!」

そう声をかけてその場を離れる。


母犬が落ち着くまで、くまの解体でもしよう。


犬から見て風下になるようにくまさんを引きずっていく。

めっちゃ重いので丈夫そうな木の枝に吊るす。

鍛えていたのでどうにか吊るせたが前世なら絶対無理な重さだ。


熊って確か数百キロあるよな。

木の枝がミシミシ言っているが大丈夫だろうか?


くまの後ろ脚を縛り逆さ吊りにして、その下に魔法で穴を掘る。

首元にある血管をナイフで切るとドバドバ血が流れでてくる。


腹を切開して内臓を傷つけないように取り出す。

内臓を取り出していると、心臓付近に石の様な物があった。


「これって魔石か?」


さっきの戦いの様子と大きさで予想はしていた。

一旦魔石は【収納】にしまう。


そして水魔法で血を洗い流す。

内臓はどこが可食部か分からないので、とりあえず全部埋める。


その後ひっくり返したり引っ張ったりしながら、ナイフでくまさんの毛皮を丁寧に剥いでいく。


「この毛皮あったかそうだな。魔法も効かなかったし。」


見た感じは毛皮に対魔法防御の魔法の様な効果がある。


なんで、毛皮にかかっている防御魔法が対物理防御の魔法ではなく、

対魔法防御の魔法だったのだろうか?

毛皮が固いから物理防御魔法は必要なかった?

だから毛皮にかかってるのはほぼ魔法防御?


そんな風に色々考えながら毛皮を触る。

ごつごつごわごわしていて固い。

対物理防御魔法がなくとも多少の斬撃は防げそうだ。


「ユキのスピードが加わった上での一撃だったから刺さったのかな?」


どういう理屈で魔物化の方向性が決まるのかは知らない。

でも周囲の環境が何も関係ないとは言い切れない気がする。


周りに魔法を使う何かがいるのだろうか?


――解体は終わった。


普通の野生動物にはよく寄生虫などが居る。

しかしこの熊には寄生虫っぽいのが見当たらなかった。

魔物だから寄生虫や微生物が付かないのか?

詳しい人が居たら聞いてよう。


(町に着いたら、くまの毛皮でマントでも作ってもらおうな?)

そんな計画を考えながら、毛皮と熊肉を【収納】にしまう。


犬のもとに戻る。


犬はあざっす!って感じで元気そうに立ち上がってた。

回復魔法をかけたが、疲労の回復がかなり早い。

こっちもただの犬じゃないかも?


「元気そうだな!群れは何処かに居るのか?」


魔力皿とバケツを片付けながら聞くが・・・


犬は悲しそうな顔をするばかり。

どうやらあのくまさんに殺されてしまったようだ。


「お腹も大きいみたいだし、一緒に行くか?」


さすがにこのまま放りだすのは俺の犬好き魂が許さない。


「肉と水なら用意してやれるからな。」


というとワンコはお供しますとでも言っているかのように、頭を下げる。

俺はその頭をそっとなでる。


そうして俺達は人間一人、馬一頭、犬一匹のメンバーになった。


普通なら殺されています。

異常な鍛え方をした主人公だからこそ倒せたのです。

普通は逃げの一択です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。