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第三章 聞き込み
大角 圭子 メガネ
「突然、お伺いしてすみません小堺です。年賀状の住所を見て来ました。心江が日頃、薬を飲んでいたのは知っています?」
「あら驚いた。こんにちは。薬?アレルギーの薬の事ですか?知っていますよ。学生時代から飲んでいましたし」
「他に薬を飲んでいるようなことは言っていませんでしたか?」
「他にも飲んでいたんですか?さあ、聞いたことがないですねえ」
「そうですか。ところで、若い頃は色々あったって林山さん(眉毛)が言っていましたけど、心江は虐められていたんですよね」
「虐めっていっても、そんなに酷いものではないですけど、クラスの男子が数名で「もとくらし」って隠語を使用していたんですけど、ある日その隠語の意味が心江だって事が偶然発覚してしまい心江はショックを受けて学校に数日こなかったんですよ。それで、心配した私たちが彼女を励ましに行って、そこから急激に仲良くなったんです。それが今のメンバーです。彼女のお蔭で輪が広がったっていうか」
「もとくらしって、由来はどこから?」
「心江の旧姓は「とだい」ですよね、漢字で書いたら「十田居」でしょう。それでいて、彼女明るい方ではないので…「灯台下暗し…もとくらし」ってなったそうです」
「なるほど…他の方は虐められたりとかはなかったですか、逆に、心江がいじめる側に回ったりはしませんでしたか?」
「心江が虐めるようなことですか?ないですよ。私たちのメンバーは基本的に気が強い人ばかりですしね。これでも、みんな随分丸くなりましたよ。まぁ私は、子供産んでから身体も丸くなりましたが」そう言ってメガネはクスリと静かに笑った。
「旅行に行った、あの日、心江はなにか言っていませんでしたか?不満とか」
「みんないつも通りでしたよ。まぁいつもより皆浮かれてはいましたが」
「それは、旅行に行くからという意味ですか?」
「ええそうですよ。いくつになっても旅行という物は心が弾みますからね」
「まぁ、分かりますよ。そのお気持ちは。ホテルの部屋には自由に出入り出来るようになっていましたか?」
「勿論鍵掛けていましたよ」
「3名一室でしたよね?誰と一緒でしたっけ?」俺がそういうと、メガネは眉間に皺を寄せた。
疑われているのだと感じているのだろう。
「あ、すみません、もうこんな時間ですね。この辺で帰ります。あ、これもし良かったら召し上がってください」
俺は、用意していた菓子折りを差し出した。
「まぁ、こんなお気遣いをしてもらって…」申し訳なさそうに言う割には、すぐに手が菓子折りに伸びた。
「有里と心江、冬美が一緒で、私と堺ゆかりが一緒だったわよ」
「そうですか。ありがとうございました。お忙しい中、大変失礼しました」俺は深々とお辞儀をした。
車に乗り込み、手帳に
「ホテル部屋 おかっぱ、眉毛、心江_______メガネ、八重歯」と書き込む。
次の年賀状を、クリアファイルから探す。




