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それだけでいい

ドレスを捨てた夜、とんでもなく自然が恋しくなった。

家から徒歩5~10分のところに神社がある。


「健康には散歩がいいぞ。」


「ビタミンD生成でうつ病予防にもなる。」


「ついでに参拝してきたらいい。」


「いい気分転換になるから。」


S先輩からの助言はあっさりさわこの耳に入る。

それだけ信頼を置いている。


翌日7時にお馴染みのアヒルアラームが鳴る。

グァグァグァ。うるさいなぁと思いつつも部屋着からラフな格好に着替えて、両親に「じゃあ行ってくるね。」と告げて散歩へ出かけた。


季節は6月梅雨前。

立ち並ぶ家々は石で土留めをしている。

石の苔には何百年と歴史を感じる。

道は狭くギリギリ1台分通れる程度だ。

タクシー運転手すら運転を躊躇うが、わたしは散歩なのでこれくらい狭い方がより近くに自然や歴史を感じられるので、有り難い。


細道をぬけ高低差がある道へ入ると、いよいよ人が1人、もしくは犬の散歩連れや野球部の練習生が一人で通れるだけの幅になる。


まだ梅雨前だというのに、暑さはじんわりと地面を温めていた。

梅雨前とは思えない熱気だ。


人間とは何故こんなに愚かなのだろうか。

テロ、戦争などといったニュースを朝から読み、でも間近にはこんなにゆたかな花々を見ることができる。果たして、いつまでだろう。



そうこう考えているうちに、神社へと着いた。

途中真っ赤に色付いた紫陽花と大自然の木陰の涼しさが印象的であった。


出費を最小限に留めているので、申し訳ないが賽銭はせずに、通うことだけに一心不乱となる。


軽くお辞儀をし、鐘を鳴らす。

ゴロンゴロンと年季が入った一番大きな鐘がお気に入りだ。こころで感じ取れる。


丁寧に二礼二拍手一礼をした。

合掌しながら考えることをいつも同じだ。

「昨日はありがとうございます。」

「今日もよろしくお願いします。」


「いつもありがとうございます。」


軽くお辞儀をして帰る時に、すっかり出番終えた藤棚が見えたのでしばし休憩することにわした。

帰ったら猫に癒され、香月由良の作品でも暇つぶしに読んで、最近決まったコンビニの仕事まで惰眠を貪ろう。

ここ最近怒涛だったのでこんなひと手間が妙に心地いい。

藤棚のベンチから腰を上げ帰路に付く。

まだまだ夏本番前だというのに、汗だくだ。

猫3匹は各々自由に過ごしている。


ちまごろう「東洋医学ではあれこれいうけれど、西洋医学では、寝る、食べる、遊ぶだそうだ。」

ビビリーにょ伯爵「…僕時々脱走して外見るんだけどさ。外って……恐いよ。」

ちまごろう「それはお主がカエルを食べたり鳥を捕まえてきた経験がないのだ。わたしや先生は━━━」

ぬぼ先生「すぴー。」

ちまごろう「……親父殿の部屋でわたし寝る。伯爵も見習ったらどうだね?」

伯爵「ぼく…こわいから…探索する!」


生き物にも自然にも囲まれて、この上なく幸せだ。

時折非通知の電話が鳴り響くがスルーしている。

時間帯から考えても飲み始めのXからの可能性が高い。


今は、今はもう、大切なものを守るんだ。

家族、猫たち、ベース。


そして、自然から大切なものを学ぶんだ。

雨風にも負けない凛とした姿、害虫に噛まれても立派に咲く花、コンクリートさえ壊す強靭な根っこ。


それだけでいい。それだけで。

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