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帰郷の代価

O市に帰ってからというもの、佐和子は元気を取り戻しつつあった。

ドラセナはだいぶ弱ってしまったけれど、新しくガジュマルや観葉植物の寄せ植えを買って部屋で眺めている。自然に触れるのはいい。


ちまごろう軍団も各々自由に過ごしている。


ビビリーにょ伯爵はわたしが拾ってきた猫なのに、家族の一員として「怖い…怖い…でちょっとおしり撫でるくらいなら…。」と一番小柄な体をいつでも逃げ出せる体制で構えている。


ちまごろうは呑気に見えて意外と神経質らしい。

一時期はわたしの部屋で飼っていたが、深夜3時の野獣に耐えかね、家の中を自由にさせることとなった。主に荷物が多い父親の部屋で「親父殿…熱燗が美味い季節になりましたな…」と猫なりに楽しんでいるが、食べるのはもちろんウエットタイプだ。歯をほとんど失っているからだ。


ぬぼ先生に関しては殊更癒し担当だ。

部屋にもどこにでも現れて「撫でて〜。」と半開きの目と口でお腹を出してくる。そして昼も夜も、ぼーっとしている。



佐和子はしばらく単発アルバイトで生計をたてることにした。

コンビニバイトの経験もあったし、生真面目な姿勢は店長からの評判も悪くない。



そんななか、事件は起こる。

Xという男が佐和子に夢中になり、勝手に彼女として、地元のヤンキーや暴力団関係者に紹介しだした。

なかには中学が同じだったと言うだけで酔いの勢いに任せ電話かけては「富岡佐和子って覚えてる?」と聞く始末だ。

中学生に上がっても人間不信が取り除けなかった佐和子は一挙手一投足が破滅に向かうことに気づいていた。しかし、気に入らないことがあると暴走するXの機嫌を取りながら相手を煽ててかつ、彼女ではないのだと主張する事は心身ともに疲れ果てた。



ある日は、カラオケ店で、俺の言うことなら聞けと横暴な態度で店員にメガジョッキをサービスさせた。


ある日は、ファミリーレストランでお酒を飲んでいたXの横の席が若い集団で盛り上がってるのが気に入らないと喧嘩をふっかけにいく。


それでも借金のせいで夜職を探していた佐和子にXは自分の後輩がオーナーをしている店を紹介すると言い出した。

お酒さえ飲んで居なければ温厚だったし、ツテではいるのが一番手っ取り早い。深く考えるまでもなく面接は合格し、ラウンジで働くこととなる。



中身はずさんだった。

花江と名乗る女のキャストとボーイは付き合っていた。それだけならまだしも2人して佐和子に依存していた。

「今日のメンツ。やる気なくてイライラするんすよね。」

「佐和子さんのが段違いに先輩なんやけん、強く行ってよかすよ。」

ブツブツと文句をたれるボーイの横では。花江は「佐和子ちゃんと働けて嬉しーい。」と無邪気に笑う。


実際今日のキャストの質は悪かった。

水商売というのに、ドレスひとつ持ってきてないし、暇さえあれば裏でタバコと勝手にお酒を作って飲み出す典型的な「時給泥棒タイプ」だ。、お客の前でも喋らないし、なんなら腕組みや足組みをしてぼーっとしている。

社長だらけの会合だったし、ノリがいいお客だったので助け舟をだしても仕方なしに乗るだけ。

慌てて佐和子が馬鹿な振りをしてみんなにアルコールを飲ませるチャンスを作って盛り上げた。


お客が帰ったあとさすがにこれは、と思った佐和子は正義感に取り憑かれこういう。


「あのね、お客様は楽しい時間を買いに来てるの。そこで、眠ーいなんてあくびされたり、楽して稼げたわーなんていったら、興ざめするでしょう?」


「あなた達にしかできない武器は必ずあるはずよ。」


「一緒に頑張っていきましょうよ!」


実際にキャストは変わっていった。

嬉しい変化だと単純に喜んでいた。


ここまでは。

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