討伐戦①
アジトには非戦闘員やサポート要員に加え、
叶野と南禅寺が残ることとなった。
懸案であるレッドコアズのボスが放つ消滅の光は、
能力で防げる有効範囲であったため、
叶野はアジトから動く理由がなかった。
その存在こそがかろうじてこの戦いに均衡をもたらしているのだ。
リスクは取れない。
リーダーと副リーダーが現地に行かないことについて、南禅寺はこうも付け加えた。
「我々以外の戦闘員はすべて今回の任務に充てるのだ。
君たちの任務も並大抵のものではないが、
アジトと残った者を守る我々の責務もまた同様に重い。
万が一のことがあったとしても、
君たちが帰ってくるまで我々は力尽きるつもりはない。
ここに降り注ぐすべての攻撃を防ぎきってみせよう。
だから……
どうか……
誰一人欠けずに帰ってきてほしい」
――ライラック班、道中にて
1人でも多く標的に到達させるため、
討伐班それぞれ別に向かっていた。
水岡たちは車に乗っている。
運転するのは滝沢である。
移動中はみな終始無言だった。
重苦しい雰囲気が緊張感を醸し出している。
天花はいつも以上に無口だ。
華憐は見るからに緊張している。
それは、水岡が無事にこの任務を終えられるかどうかの不安から来ていた。
犬養は緊張こそしていないがウトウトとしていた。
水岡は神妙な面持ちで、
ただ窓の外の景色が流れていくのを眺めている。
連絡が入り、沈黙が破られた。
「4つのルートのうち、
2つのルート上での橋が落とされたようだ。
そこの班は迂回するしかないので到着が遅れる。
だが作戦は時間通りに開始するとのことだ。
お前たちライラック班は最初に突入する攪乱役になる」
滝沢の声が少し震えているような気がした。
言わなかったのか、それとも気付かなかったのか誰も指摘はせず、
犬養の適当な返事が返ってきただけだ。
水岡は自分の心臓の鼓動が、
破裂しそうなくらいに高まっているのを感じていた。
いっそのこと、ワープのように一瞬で到着してほしいと思ったが、
重苦しく長い時間をただひたすら車に揺られて耐えていた。
どのくらい時間が経ったか、ついに車が止まる。
「ここからは、能力でお前たちを送る。
その後俺は一時撤退だ」
まずは、犬養と水岡が最初に輸送された。
あとの2人が来るまで間、
犬養が伸びをしながら調子よさそうに呟く。
「ま、相手も足止めを2班分しかできなかったってことだからな。
こりゃ、俺たちがこのままスキルスティーラーに遭遇してブチのめしちまうかもなァ」
滝沢のコア能力を使ったため、
わかる者にはこの場所がわかっているはずだ。
そうなれば、スキルスティーラーと戦うのは、
もう一方の班となる可能性が高い。
水岡はそうなることを無意識の内に祈っていた。
しかし、何事もなく残りの2人が到着する。
「俺が送るのはここまでだ。
帰りも指令があれば迎えに来る。
……死ぬなよ」
水岡が滝沢の姿が遠くなっていくのを眺めていると、
ポケットに入っていた機器が振動した。
作戦開始の合図だ。
スキルスティーラーは山小屋の位置まで伝えていた。
道中に罠や待ち伏せがあろうことは明らかで、
そもそも本物の情報なのかもわからない。
だとしても、それらの罠などをすべて踏み抜くことが要求されていた。
仮に本当に示された場所に目標がいたとすれば、
そのまま討伐すればよい。
確かめるためにはある程度感知できる者が必要だ。
一度遭遇している天花がいればその精度は信頼できるだろう。
「さあて、怪物退治といこうか」
最初の一歩を自信満々に踏み出したのは犬養であった。
* * *
南禅寺はアジトの「入口」に場所に立っていた。
そこからはわずかに空を見上げることができ、
夕日の向こう側の空には星々が燦々と煌めいている。
今のところ、レッドコアズの連中がここを攻めてくる様子はなさそうだ。
「待つというのも辛いものだな」
そう呟きながらも、平然と佇んでいる。
周りには近付くだけで戦意を喪失しそうになるほどの気迫が溢れ出ている。
彼はこのまま何時間、何日でも待ち続けるのだろう。
今回は短いのでもう1話だけ続きます。




