一六言目 はひ
畑しかない畑先生はみんなが何を話しているのか良く分からなかったので、時間も潰れた事だし親父さんの家へと戻った。
畑だけで生きてきたからね。それに関しては多少の自信はあるけれど、他は何も出来ないから。畑だ畑。
「アルスくん!!」
「はひ!!」
ヒィ! 変な声出た!
何だ親父さんか、脅かさないでよ。
「良かったここにいたのか。今村の連中から話を聞いてね、巻き込んで申し訳ないんだが、暫く家の中でジッとしていてくれないか?」
「……えっ」
巻き込んで?
巻き込むも何も、ラベルカーンに行きたかったそれが挫折して、途方に暮れるしかなかった僕にご飯をくれてるのに?
むしろ感謝してるのに?
何かあったのかな、聞いてみるか。
「ぁ、ぁあにょ、な」
「実は最近な、村のやつの家や畑が荒らされる事が時々起こっていたんだ」
「畑が!!!!!?」
「そ、そうだ。それでな、昨日はそれに丁度居合わせたらしくてな。誰だ! って言ったら、襲われたらしい」
誰か確認したら襲われるの!?
怖すぎる!
「どうやら魔物だったみたいなんだ」
「ま、魔物」
魔物。それはどこにでもいる、ウロウロしてる危ない生き物。僕はこいつが怖くて一人でラベルカーンに行かないままこうしている。
何かあるかもしれないし、何もないかもしれない。
でも何かある時は多分死ぬ、死ぬのは怖い。
その魔物が畑を荒らす事は、時々ある事だ。用心棒さんや力自慢の人が追い返すか、諦めるか。そんな感じだね。僕は何も出来ないから、そう言う時はいつも村長の家に隠れていた。今回も似た様な物、なのかな。悲しいんだよなぁ、畑、めちゃくちゃにされちゃうから。
「恐らく、またすぐにやってくる」
「えっ!」
そんなに頻繁に!?
魔物は案外知恵があるから、滅多な事では人の生活してる所には近付かないはず。襲われているのは大体移動してる人たちだ。なのにどうして?
「詳しい話は後だ、ヴィオラを頼んだぞ」
「え!!!!」
僕が頼まれるの!?
ヴィオラをどうしたらいいの!?
僕より強そうじゃん!!
「アイツ、それこそ鍬でも持って飛び出しかねないからな」
あ、抑える係か。
守るとかじゃないのか、それならね、……ん?
ヴィオラを抑える?
無理だよ!!
だってさ、
『どきなさいよ!』
『親父さんと約束したからね、ここは通せない』
『アナタが邪魔で扉を開けないわね。なら仕方ないわ、大人しくしてる』
『うむ、それでいい』
……通せんぼするだけで良いなら出来るかも。
扉の前に座ってたら流石に大丈夫かな?
「早ければもうこの後来てしまうかもしれない、ヴィオラは飯の片付けをしていてまだ気付いていない。頼んだぞ!」
親父さんは飛び出して行ってしまった。
よーし、扉の前に座るぞ!
ビックリするくらい田舎育ちの頑張りっ子の冒険です。
妄想の自分は強めなアルスくんをよろしくお願いします。
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