明文の左目について
前回のあらすじ
東条さん明文を品定め、暗殺者をようい
でも明文なら間違いない、ぶれない、バイブス全開。
ケツおさえてねたれヘタレパンいええええ
すみまっせん 目の 右と左を間違えました。
食卓に行くと、宴というより鍋会のようなものだった。東条によるとこの鍋を囲むのが親睦を深めるのによいと東条の希望からだ。貴族なのにいいのかと思うのだが、ウスリムの歓迎はいつもこのような感じらしい。東条からの音頭で宴が始まった。
レイとミーナ、東条とその妻と思われる妙齢の美女に彼らの子供だと思われる子が3人、東条の側近3人。治療された子もいるようだ。自己紹介はほとんど聞いてなかったため、覚えてない、あとで見返せばいいや、このメンツで鍋を囲んでいた。ちなみにこれは魔獣の肉だそうで、かなりうまい。はやく図鑑で確認したい。あとあいつらに送ってやんないと、
明文は鍋に子供のように夢中になっているようでほとんどの人たちがそれを微笑ましく見ている。子供がもう一人増えたようで。明文が普通にもしゃもしゃ鍋をつついていると
「しかし、明文殿の目は不思議な目をしておりますね、左右対称で違うとは。」
機を見計らって東条の奥さんが明文に質問した。
「ああこれね、これは両目とも移植したから色が違うんだよ。」
「移植ですか?元々は盲目だったのでしょうか?」
「そうだね。正確には右目は確かに盲目だったけど、左目はちゃんと見えていたよ。けど、僕の弱点を補うためにこの目を左目に移植したんだ。」
「弱点だと?」
ミーナが興味深そうに見ていた。
「うん。僕は昔から人の機敏に疎くてね、気配がわからないんだ。直感がないとも言うべきか勘が鈍いが正しいかな。そこまでだったら改善しなくてもよかったけど、残念なことに僕には人の気持ちが全く分からないほど鈍かったんだ。」
話の途中でレイが疑問を感じ、明文に問いかけた。レイが野盗に襲われて気絶したとき芝をベットにしておいたことが明文の気遣いであると知っている、それをする人間が人の気持ちがわからないなんてことはないのだ。ミーナは自分に酔っている人間を見るような目で明文を睨んでいる。
「わからない?そうですか?明文様は気遣いを私にしてくださいましたよね?」
「そりゃ、一万年も生きてれば多少はわかるようにというか対応できるようになったけど、根本的には変わってないのさ。話を続けるね。人の気持ちが理解できないということは人の悪意や害意などを察知できない。つまり、騙し打ち、不意打ちを絶対にもらってしまうんだ。交渉の場でも嵌められることがおおくてね。戦闘面以外での状況はその場に応じての処理は当時は拙くてね、後手に回って損害をうけることがままあったんだ。論文取られたり、薬品抜き取られたりとね。」
それを聞くと面々は驚いた。なぜなら、直感というのはバカにならない感覚だ。俗にいう嫌な予感である。これは自分が生きてきた中で嫌な体験、出来事に触れるかもしれないという自分の人生に積まれた経験からの警報であるからだ。その精度は凄まじく高い。間違いなくこの時代と明文が生きていた1万年前の世界では必須の能力だ。戦闘力が物を言う時代において、自分より強い者、害意をわからないということは、それらをもった人間や魔獣が本当に一撃で殺す気で襲いかかってくると明文には避けることできないということだ。また暗殺などをされると間違いなくやられる。
「そのような状態で良く生き抜けたものだ。それで、どうやって補ったんだ?」
「実は、人の感情を視覚的につかめる者達の細胞をもらってその細胞核と僕の細胞核を融合させて・・・・」
「明文様、もう少し砕けたご説明をお願いしていいですか?」
「ああうん、ついね、こういうことをきかれるとうれしくなっちゃって、うん。ええっと、つまりだね、人の気持ちと性格を色で見分ける部族の力を貰ったんだよ。例えば、東条さんの色はとても濁った緑色、レイさんの色は薄い赤と橙、ほかにもいろいろあるね、ミーナさんのは真っ赤だし・・・・」
明文が自分の能力を説明する中で、レイが物凄く怯えた目で、明文を見た。他の面々も明文が野盗にしたことを知っているため、疑うような目になる。『貰ったんだよ』この一言に皆、箸が止まる。レイが恐る恐る明文に問う。それは人を殺して奪ったものなのかと。
「そんなことしなくてもいいよ、彼らの目の細胞をちょっともらっただけだよ、そうだな・・・」
すると、明文が自分の左目の白い部分を右手の人差し指で少し掠め取るように触れた。
「この行為が目の細胞を貰うってことだよ。あとはそこから自分の目と馴染むように調整して作るんだ。当時は右目が盲目だったからね右目に何度も入れなおしたりしたよ。運よくて46回目の実験で安定する目を手に入れたんだ。今ではほら、こんな感じで作れるよ。」
そういうと明文の体から紫色の光が出る、そしてそれは右手の人差し指に集まっていく、何もなかったように見えるが、ボコボコと音を立てて白い液体が右手の先で舞う。とても繊細な魔力の川、幾重にも重なる心地の良い色とスーッとした流れがその白い液体を優しく包む。それが収まる頃に、明文の右手の先に明文の左目と全く同じ眼球が出来た。
「ほら、あとはこれを目の神経と繋げるだけで、目ができるんだよ!ここまでくるのにどれだけ苦労したか!」
明文はどうだと言わんばかりことだが周りは唖然としている。明文にはそれだけのことで目を作りだすということが出来るということがわかったからだ。余りにもオーバーテクノロジーである。それだけでなくあれほど完璧な魔力制御は見たことがない。これは政治が黙っていない。知恵者なら気が付く。間違いなく強力な魔術であるからだ。足がなくなったものの足を生やすことも神聖魔法抜きでできるからだ。この技術が広まれば、この世の常識は覆る。
またこれを難なくできてしまったから、周りは明文に未知の恐怖を抱いた。
東条は目をつぶる、これから明文を取り巻く環境がどうなっていくか想像すると、自分が抱え込めるのかがわからない。このことが王国に巣食う貴族に知られると何が起こるか、王家に陳情を出しつつ、辺境周りを責め立て、嫌がらせ、周りの不審を買わせる。その結果はウスリムの地が安心できない大地になる。とはいえこの力は有用だ。・・・・・考えがまとまらない。ともかく今の話を絶対に広めてはならない。
「皆の者、今の話、見た者、忘れろ。」
つい、一段と低い声で注意した。これを知られるととんでもない事態を招くということがウスリムの者達は理解した。子供たちもわからないようだが、周りに合わせて理解した態度をとる。それをみた妻は溜息をはくとレイのそばにいき、
「レイちゃん、この話はできれば兄にだけ伝えてほしいの。もしこの話がどこかに漏れるわ。その時から早々におそらくウスリムは攻撃を受けるわ、その備えのために根回ししてほしいと兄に伝えて。」
「ッへ、しかし・・・・」
「政治はよくわからないけど、明文殿の力は今、王国では御しきれないものだと目に見えてわかるわ、これぐらいのことをする人だもの、ほかにも手札はきっとあるわ。少し機嫌を損ねて他国に行かれるのも困るものだから、レイちゃんも発言を気を付けてね、お願い。間違ってもその力を教わるようになんていわないようにね?ちゃんと信頼関係が気づけてからお願いしなさい。そうじゃないとこの人は人に教えないわ。」
レイは明文のことを広めようと思った。真に魔術の理を理解している人は間違いなく明文以外に他ならない。彼の魔導技術が広まれば、自分が救えて来なかった人間も救えるのではないか?と。確かに彼に教えを乞うこと自体、危ういかもしれないが誠心誠意をもって接すれば今までのように応えてくれるのではないかと?だが自分の叔母が賢いことも知ってる。レイは基本的に流されやすく、自分より上と思った者の発言は素直に聞くのだ。
妻の方はというと、明文が隠居していたことを曖昧にしか聞いていなかったが、隠居していたことから俗世にあまり興味はない自分本位な考え方の人だろうと考えた。だからこそ、その力を利用されることに不快感を持つだろうと予測もされた。迂闊に動けない。だから、レイの性格を理解し、おそらく弟子入りか、何らかの方法で手籠めにするかもしれない所にくぎを刺し、自分の腹違いの兄である国王にこのことでうまく立ち回ってもらうと考えたのだ。
「・・・・わかりました。」
「ありがとう。またなにか甘いものでも食べに行きましょう。」
しぶしぶ、頷いているレイとどこかホッとする妻。
「きさ・・・・明文殿、いままで隠居していたのも事実ですか?」
「さっきからそういってるだろミーナさん、何言ってんの?頭おかしくなった?」
ミーナは明文の言い方に少し腹立つがここまでのものを見てしまうと信用するしかない。こんなことができる人間を彼女は明文以外には知らないのだから、また彼女もレイも王国一の魔導の使い手にあったことがあるが彼にもこんな芸当どころか、魔力制御の一旦でさえ真似できないだろう。
「あの、明文様!お願いがあります!」
子供たちの中で一番小さな女の子のような男の子が明文に申し出る。目に力いっぱいの力を込めて明文を見ている。髪は淡い金色で目は青色、成熟すれば引く手あまたの美丈夫になることが予想される顔立ちである。体も震え、自分がいけないことを言うけど、言いたい言わなくてはならないという使命感さえ感じる。
この子は・・・・確か、治療された子の弟だったけ。
「なんだい?」
明文には大体その子供が何を言うかは予想はついた、こんな風に濁るように輝く色は過去にも似た色を見てきたからだ。この子供の色は群青色だ、黒をほんの少し帯びつつ発色するような色をしている。発色するときはなにか自分に決意というかそんなものが芽生えた証拠だった。そして、それを見てきた。自分の能力を出した後に、決まって彼らは乞うのだ。
「僕を弟子にしてください!」
そうだ。ああ、こんなこと今までにもあったなーと懐かしい顔をしている明文と青い顔の東条と妻とミーナにしてやられたとの顔に出ているレイ。周りの空気は固まっていた。
お読みいただきありがとうございます。
ショタですねわかります。僕も周りも小学校高学年のとき、年下がかわいく見えて、自分の押し生徒を可愛がっていたものです。ちなみに僕は従順な子より生意気なクソガキがかわいげあるので好きです。
なんか冷静に見ると危ない人ですね。自分で書いて驚きました。僕のような人間は日陰にいたほうがいいのです。セミのように輝かしい日々は一瞬でよいのです。あとは寝て、グータラしたいですね。本心です。クソで、クズですね。世界よおやすみない。