一年三ヶ月の成長はいかほどのものか?
拙作の異世界恋愛連載なのですが、
この最終回を書いて、一年三ヶ月ほどの月日が経ちました。
お蔵入りしていた作品は書いてから一度も読み返していませんでした。
ひょんなきっかけから、連載として投稿するようになって迎えた最終回。
そのまま使うのもなぁと思っていたので、読むとやっぱり⋯⋯書き方が説明っぽいというか、伝わるかなぁと悩むところ。
結局、セリフ以外のほとんどのところを書き直すことに。
本連載も完結しましたので、エッセイにも読み比べにあげてみようとなった次第。
需要がなさそうですが、修整前(2100字ちょい)と修整後(2500字ちょい)の両方を載せます。
書きぶりが気になる人がいましたら覗いてみてください。
まあ、直した方もまだ、改善の余地あり、な感じですが⋯⋯(^_^;)
【修整前】
鈴音はパチっと目を開けた。周りが明るい。
「⋯⋯朝?」
こんな時でも眠ってしまった自分を呪った。鈴音は両手で自分の頬を叩いた。
「鈴音のばか」
そうつぶやいて布団に顔をこすりつけた。少ししてガバっと顔を上げると手櫛で髪を整え服の乱れを直すとそっと立ち上がり部屋を出た。霜月の寝ている隣の部屋であったことが分かった。すると鈴音の胸は大きな音を立て始める。ゆっくりと歩いて霜月の病室へ向かう。
怖かったので顔だけ出して病室を覗いた。
その隙間からだてまきは走って部屋を出ていった。鈴音はだてまきを見送ると、霜月と目が合った。鈴音は本当に現実なのかと信じられず固まってしまった。すると霜月はちょいちょいと手招きしている。
「鈴音、きて。僕はもう大丈夫だよ」
鈴音は下を向くと感情をぎゅっと抑え込む。深呼吸をしながら霜月に近づいた。そして霜月の隣へ座った。すると隣から声がする。
「鈴音が縫ってくれたんだって? ありがとう。僕は死ぬと思ってたんだ」
その言葉に伝えたい言葉は溢れたが、何ひとつしっかりと出てこなかった。それでも本能は鈴音を動かす。鈴音は霜月に手を伸ばして霜月の手を握った。
温かい
霜月は目を見開いて鈴音を見た。鈴音は静かに下を向いていた顔を上げて霜月の瞳を見る。鈴音の胸に霜月への思いが溢れてきて苦しい。でもこれだけは伝えたい。
「霜月、どこにも行かないでとは言わないわ。ただこんな形で私の目の前から居なくならないで!」
鈴音は霜月に伝わったかどうか心配で霜月の顔を見続けた。霜月は少し間を置いた。その時間は鈴音にとって永遠に続くかと思ったのだ。
霜月は鈴音を正面から見つめて口を開く。
「白狼」
それを聞いた鈴音は目を丸くする。霜月は鈴音を見ながら続ける。
「鈴音、俺の名前を呼んで。もう自分の気持ちは隠さない、好きだ」
霜月は鈴音に笑いかける。少年のようにあどけない。鈴音が霜月を見ていると頬が少し紅い気がする。鈴音の心に温かいものが流れ込んでくる。鈴音は嬉しくて胸に溢れた嬉しさに苦しいとさえ感じて下を向いた。霜月からそんなことを言われると思っていなかった。自分が霜月の名前を白狼と呼んでいいなんてなんて嬉しいことなんだろう。
鈴音は顔を上げて少し緊張しながら霜月の方を向いて呼ぶ。
「白狼」
「ん」
霜月が返事する。それを鈴音が見ていると霜月と目が合った。鈴音は泣きたいような笑いたいようなさまざまな感情が入り混じっていた。私はなんて伝えたら霜月に伝わるのだろうか。目の前の大好きな人の手を自分が握っていたことに気がつく。
そうだ、今はただ名前を呼べばいいのだ。
鈴音は微笑みながら霜月の名前を呼んだ。
「白狼」
「ん」
「白狼」
「ん」
鈴音は霜月に名前を呼ぶ度に返事をしてくれるのが嬉しくなった。
「白狼。白狼っ!」
何度だって呼びたい。すると霜月は優しい目をこちらに向けてこう告げる。
「そんなに呼ばれたら困っちゃうよ?」
鈴音は顔が熱くなった。なんて愛らしい顔で愛らしいことを言ってくるんだろう。霜月に素直に伝えたい。その気持ちが強くなった。
「だって目の前にいるんだから呼びたいじゃない」
鈴音がそう言った直後に霜月は真剣な顔で鈴音にこう伝える。
「鈴音、今までもこれからもずっと誰よりも愛おしい⋯⋯」
「白狼、私も大好きよ⋯⋯」
鈴音は霜月から腕を引かれて霜月の目の前にやってきた。鈴音が見るとその優しい瞳が自分の方を向いている。よく見ると霜月の瞳に小さく自分が映っていることに気がついた。もっと霜月の瞳に私だけを映したい。
そんな思いを募らせて鈴音は霜月に自分の顔を寄せていく。すると霜月の手が優しく鈴音の顔を包みこんだ。温かで大きな手だ。鈴音は愛おしそうに白狼の左手を右手で包む。
二人の鼻がそっと触れ合う。お互いにまぶたを閉じると唇が触れ合った。二人の胸は高まる。スッと唇を離すと霜月はコツンとおでこをくっつけて下から鈴音の目を覗く。
「もう1回」
こんなに愛らしい顔をされたら断れない。鈴音はもう一度顔を近づけて唇をつける。二人は唇を離すと霜月は鈴音の手を取り手の甲に口づけした。それを見た鈴音は自分がお姫様になった気がした。霜月はお殿様ではなかったが、楓と話した大好きな恋の話を思い出す。霜月は鈴音を見て嬉しそうに笑う。
「ふふ、今赤くなるの?」
鈴音が自分の顔が赤くなっていることに気がつかなかった。恥ずかしかったので拗ねた子どものように口を尖らせた。そして鈴音は目線を外して口を開く。
「だってあなたにすごく大事にされているように感じて⋯⋯」
「大事にされているようでじゃなくて、大事なんだよ。誰よりも⋯⋯」
霜月は鈴音の頬を左手で触りながら伝えてくる。
次は頰に口づけをする。
「一番大事だ」
白狼は鈴音の目を覗き込む。
「鈴音、もっとしていい?」
「うん」
鈴音が頷くと白狼は口を開けて唇を重ねた。
「あっ⋯⋯」
鈴音は思わず声を上げる。白狼の舌が鈴音の口に入ってきた。優しくなぞる白狼の舌に鈴音は頭が真っ白になった。恥ずかしいけど心地よい。
白狼は口を離すと鈴音を抱きしめた。 鈴音は白狼の胸の鼓動が速いことに気がついた。白狼は鈴音の顔をもう一度覗き込むと照れながら笑った。
「好きな人が目の前にいるんだもん。俺だってドキドキしてるんだよ?」
鈴音はその言葉を頭の中で何度も反芻させながら、幸せを噛み締めた。
──────────────────
【修整後】
鈴音が目を開けると、光が差し込んできた。慌てて辺りを見渡す。
「⋯⋯朝?」
大切な人が目を覚まさないかもしれないのに、そんな一刻を争うような時に寝てしまうなんて⋯⋯。
鈴音は眠ってしまった自分を呪った。自分の頬を両手でぱちんと叩いて反省する。
「鈴音のばか」
そうつぶやいて布団に顔をこすりつけた。黒い気持ちが滲む。
そんな事をしている場合ではない。
顔を上げると急いで手櫛で整え、服の皺を伸ばす。服の乱れがないかもう一度見てから、すぐに部屋を出た。
隣の病室を覗き込んでみると霜月の姿があった。
瞼を閉じた霜月を見ると、鈴音の胸は大きな音を立て始める。
足が震えて、中へ入れない。
あの姿は本当に寝ているだけなのだろうか。
鈴音の脚の間をすり抜けて、だてまきは
部屋から出ていった。
「にゃ〜ん」
「⋯⋯!」
だてまきがいたことも気が付かなかったなんて⋯⋯。
だてまきを見送ると視線を部屋へと戻す。すると霜月と目が合った。
頭がフル回転するが、霜月が生きていて、自分と目が合っていることに頭が追いつかない。
鈴音が口を開けたまま、ぼんやりそうしていると霜月は、ちょいちょいと手招きしている。
「鈴音、来て。僕はもう大丈夫だよ」
鈴音は胸が苦しくなって下を向いた。溢れそうになる気持ちをぎゅっと抑え込む。
深呼吸。
そして一歩踏み出した。
鈴音は肩を強張りながら、霜月の隣へ座る。するとずっと聞きたかった優しい声がした。
「鈴音が縫ってくれたんだって? ありがとう。僕は死ぬと思ってたんだ」
あの時の出来事が頭の中で広がった。
霜月を失うかもしれないと思った瞬間から色んな思いが錯綜した。
もし、もう一度、霜月に会えたら⋯⋯そんな気持ちで溢れていたはずなのに、何ひとつ言葉が出てこない。
自分の不器用さに嫌になったが、本能に従うことにした。
鈴音は霜月に手を伸ばして霜月の手をそっと包む。
温かい。
霜月は垂れていた頭を上げる。
鈴音も顔をゆっくりと上げて、霜月の瞳を覗き込む。
感情が込み上げてくる。
胸が熱い。
鈴音の震える唇からは、予想しないほど、大きな声が出た。
「霜月、どこにも行かないでとは言わないわ。ただこんな形で私の目の前から居なくならないで!」
霜月に伝わったのか不安が募る。
鈴音は怖くて目を背けたいのに、背けたら目の前から居なくなったら、どうしよう。そんな気持ちで霜月を見続ける。
霜月に聞こえそうなほど、鈴音の心臓がうるさく鳴る。
苦しい。
何か言って欲しいと鈴音は願い続ける。
「白狼」
霜月から短い言葉が告げられた。
鈴音は少しでも言葉の意味を理解しようと目を見開いた。
「鈴音、俺の名前を呼んで。もう自分の気持ちは隠さない、好きだ」
出会った頃の少年のようなあどけない笑顔。あの頃は相棒のだてまきに向けられていた。
だが、今は自分に向けられている。
それは秘密を打ち明けるように、霜月の頬に紅が差す。鈴音の喉はぎゅっと締まった。
それは鈴音がずっと想っていたのと同じ気持ちだった。それを霜月から告げられたことが嬉しくて、でも嬉しすぎて苦しい。
今まで不安だった。ただ横にいられるだけでよかった。そう思い込んでいた。
目の前から消えてなくなるくらいなら、見えないほうがいい。そう自分の気持ちに蓋をしていた。その小さく丸まっている自分自身を心の奥からそっと連れ出した。
名前を呼びたい。
「白狼」
「ん」
鈴音が呼ぶと、霜月は短く返事をした。心に温かなものが流れ込んでくる。
もう隠さなくてもいい。
そのことが苦しかった気持ちを慰めてくれる。
すると手に感触があった。鈴音は視線を落とすと、霜月の手が握り返してきた。
今はただ気の向くままに⋯⋯。
鈴音は心からの笑顔を霜月に向ける。
「白狼」
「ん」
「白狼」
「ん」
鈴音が呼ぶと霜月が返事をする。
ただそれだけのことが、飛び上がるほど嬉しく感じる。
「白狼、白狼っ!」
鈴音は嬉しさに気持ちを抑えられない。
すると霜月は頬を紅潮させながら、少し困ったような顔をする。
「そんなに呼ばれたら困っちゃうよ?」
鈴音は霜月が照れていることに気が付いた。大好きな人の愛らしい姿に胸が鷲掴みされた気分だ。
「だって目の前にいるんだから呼びたいじゃない」
すると急に霜月は真剣な顔つきになる。
「鈴音、今までもこれからもずっと誰よりも愛おしい⋯⋯」
「白狼、私も大好きよ⋯⋯」
霜月の大きな手に華奢な鈴音の腕を引かれた。そのまま抗うことなく、ゆっくりと、ゆっくりと近づいていく。
鈴音は霜月に自分の顔を寄せていく。すると霜月の温かで大きな手は鈴音の顔を愛おしそうに包んだ。
二人の鼻がそっと触れ合う。お互いにまぶたを閉じると柔らかな唇が触れ合った。
鈴音の心は爆発しそうになった。頭は何も考えられない。霜月の唇がすっと引いた。それと入れ違いにおでこをくっつけて下から鈴音の目を覗いてくる。
「もう1回」
鈴音は考える前にもう一度、口づけをした。温かで甘美な時間。霜月の瞳を見たくて、唇を離すと鈴音は覗き込んだ。
霜月は鈴音の手を取り、手の甲にそっと口づけをした。
それはまるで楓に話した大好きな恋の物語の主人公のよう。鈴音は頬に熱を感じた。こちらを見た霜月は楽しそうに笑っている。
「ふふ、今、赤くなるの?」
今までこんなことはなかった。手を上げられることは何度もあったが、その逆はなかった。それが現実になっているとは、鈴音の頭では理解しがたい。
それでも鈴音は、拗ねた子どものように口を尖らせながら、霜月に伝える。
「だってあなたにすごく大事にされているように感じて⋯⋯」
「大事にされているようでじゃなくて、大事なんだよ。誰よりも⋯⋯」
鈴音の頬に添えた左手と反対側に、霜月の柔らかな唇が触れる。
「一番大事だ」
鈴音の目を覗き込んだ霜月は少年のような顔をしていた。
「鈴音、もっとしていい?」
「うん」
鈴音が頷くと霜月は唇を重ねると──。
霜月の舌が鈴音の口をこじ開けた。優しく舌の端をなぞる霜月の舌に、
「ぁ⋯⋯!」
鈴音は思わず声を上げる。鈴音は頭が真っ白になった。恥ずかしいけど心地よい。
霜月は唇を離すと鈴音を抱きしめた。 鈴音は霜月の胸の鼓動が速いことに気がついた。霜月は鈴音の顔を覗き込むと照れながら笑った。
「好きな人が目の前にいるんだもん。俺だってドキドキしてるんだよ?」
鈴音はその言葉を頭の中で何度も反芻させながら、幸せを噛み締めた。
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いかがでしたでしょうか。
まだまだ足りない部分は多いですが、少しずつ進んでいるのかなと感じた瞬間でした。
次回は“クライマックスから書こう”の続きを書きたいですね(^^)




