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第三十九話 王都


 骨が折れる鈍い音と共に、血しぶきが辺りへと飛び散った。


 誰かが地に倒れ伏し、そして動かなくなる。


 私はそれが誰なのか知っている。


 狼族の中で誰よりも優しく、強かった父。


 その父さんが負けた。


 父の息がすでに絶えているのは、誰の目にも明らかだ。


 亡骸からは、温かな血が地面へと広がり続けている。


 辺りに血の香りが充満し、獣の鼻がマヒしてくる。


 私は拳を握り締め、身体を震わす。



 父さんを殺したやつを、私は一生忘れない!


 この恨み、必ず晴らしてやる!!





「シャオ、起きろ」


「んあ?」



 うたた寝をしていた私は、リバティの声で目を覚ました。



 ・・・夢・・・か。


 何で今更、あんな夢を・・・。



「王都が見えてきたぞ」


「ふぁ~~~~~、どれどれ」



 私は悪夢を振り払うように大きなアクビをしてから、馬車の窓を開けて身を乗り出す。



「おぉ~、すっごい!」



 高い壁に囲まれた街が見える。


 城壁と堀に囲まれた城塞都市だ。


 奥には、大きなお城も見えた。


 商業馬車を襲った襲撃者の護送の為、街を出てから十数日。


 道中、懸念されていた襲撃も無く、いくつかの村を経由して、私たちは王都へと辿り着いた。



 結局、襲撃は無かったわね。


 青薔薇団ブルーローズにとっては、取り返す必要も、口を封じる必要も無いって事なのかしら?


 まぁ、途中、魔獣の群れに何度か襲われたけど、私たちの他にも、アクセルたち高ランク冒険者のおかげで楽できたし。


 少々、肩透かしを食らった感じだ。



 そう思いながら、馬車は跳ね橋を渡り門を潜り抜ける。


 すると、門を潜った先に騎士団の一行が待っていた。


 傍らには、魔導士協会の魔導士も控えている。


 どうやら、彼らに運んできた襲撃者を引き渡せば、護送の依頼は終了みたいね。


 まぁ、護送の依頼は、私たちではなくアクセルたちなんだけど。


 騎士団の前で馬車が停まり、私たちは馬車を下りる。



「う~~~~ん、馬車ってのは、身体が痛くなるのよね~」



 私は強張った身体をほぐすように、大きく伸びをする。


 馬車での移動は、楽なのは良いけど、ジッとしてるのは苦手だ。



「ここが王都か、凄いな」


「いや~、私も始めてきたけど、圧倒されるわね」



 ぐるりと回りを見回す。


 前の街もデカかったが、こちらは、それに輪をかけてデカい。


 とにかく人、人、人の群れだ。


 っと、待っていた騎士隊に交じって、異質な男が紛れ込んでいた。


 はちきれんばかりに盛り上がった筋肉、ピカッと光るツルツルの頭部をした筋骨隆々の大男だ。



 何だ!? あの筋肉ハゲは!?


 しかも何故上半身裸なんだ!?


 私が驚いていると、筋肉ハゲが両手を広げて近づいてくる。



「やぁ、ライラ殿、お待ちしておりましたよ」


「あら、わざわざお出迎え?」



 そう言って、ライラと筋肉ハゲが挨拶を交わす。



「誰かしら? あの筋肉ハゲ」


「ライラの知り合いみたいだな」


「・・・あの人は、ここ王都の冒険者ギルド本部の本部長、ブルックさんだ」



 私とリバティの疑問に、アクセルが答える。



 本部長!? あの筋肉ハゲが!?


 って事は、この筋肉ハゲが、私たちに青薔薇団ブルーローズの調査を依頼したのか。



「あの男、強いな」


「・・・ブルックさんは、元Aランク冒険者の叩き上げだ、今でも現役で通用するんじゃないか」


「ふ~ん、元Aランク冒険者ね~、あの筋肉は見せかけじゃないみたいね」



 などと話していると、筋肉ハゲがこちらへと歩てきた。



「初めまして、冒険者ギルド本部長のブルックだ」



 そう言って筋肉ハゲ、もといブルックがニカッと歯を見せながら野太い声で高笑いをしながら声をかけてきた。



「・・・ブルックさん、ご無沙汰しております」


「やぁ、アクセルくん、最近活躍してるみたいだね」


「・・・いえ、ブルックさんの現役時代に比べたら」


「はっはっは、そう謙遜するな、リチャードくんから聞いたぞ、魔獣討伐作戦で大活躍だったみたいじゃないか」



 ブルックが大きな手で、アクセルの背中をバシバシと叩く。


 見た目通りの豪快な人物らしい。



「さて、リバティ殿にシャオ殿だね、君たちの事はライラ殿から聞いているよ」


「あなたが私たちに、例の依頼をした本部長さんね」


「うむ、まぁ立ち話もなんだ、その話は冒険者ギルド本部で話そう」



 襲撃者の引き渡しをアクセルたちに任せ、私たちはブルックの案内で冒険者ギルドに連れて行かれた。







 ブルックに案内された大きな建物の入り口で立ち止まると、私は、その建物を見上げた。


 さすが王都の冒険者ギルド本部だけあり、地方の支部とは比べ物にならない程の大きさだ。


 階層は、前の街の冒険者ギルドと同じ三階建てだが広さが違う。


 前の街の冒険者ギルドも地方の支部として大きい方であったが、更に一回り大きい。



「冒険者ギルド本部へようこそ、さぁ入ってください」



 私とリバティが建物を見上げていると、ブルックが扉を開けて中に入って行くのでそれに続く。 


 ギルド内に入ると、このような大きなギルドはどこも同じような作りになっているのか、ロビーに受付カウンター、奥には広い食堂兼酒場がある。



「本部長、お帰りなさいませ」


「おぉ、すまないが応接室にお茶を持って来てくれるかな、もちろん特上のお茶だ、何せSランク冒険者のライラ殿を連れてきたからな」


「はい、かしこまりました」



 ブルックがギルド職員にそう言った途端、ロビーや酒場にたむろしていた冒険者たちの視線が一斉に向けられた。



(おい、本部長の後ろに居る女って)


(あれが噂のSランク冒険者)


(雷鳴のライラだ)


(あんまりジロジロ見るなよ、因縁でもつけられたら面倒だ)



 ライラを知る冒険者たちの声が、私の獣の耳に漏れ聞こえてくる。



「人気者じゃないのよ、ライラ」


「まったく、どうせ根も葉もない噂を流したのでしょ、ブルック」


「いや~、ライラ殿が来るので失礼のないように、若い連中に武勇伝を聞かせていただけなのですがね~」


「しかしパッと見、大した冒険者がいなかったわね」



 私は素直な感想を述べる。


 王都の冒険者ギルド本部と言う割には、実力者が見当たらなかった。



「今、実力のある冒険者は、商業馬車などの護衛や、近隣の村の魔獣討伐に出払っておるのですわ」



 ふ~ん、どこも冒険者の手が足りないのね。


 私たちはギルド内の階段を上がり、応接間へと案内された。




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