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第二十四話 雷鳴




 ジム、ネモ、ブライアンの冒険者一行を見送った後、私とリバティは、のんびりと街の散策を楽しみ、夕食を久々にギルド外で食事をする事にした。


 お金は、魔石を冒険者ギルドで買い取ってもらったので懐には多少の余裕があったので豪遊だ。


 食事を終え、店を出ると、既に日が暮れて歩道を往来する人の数は少ない。


 歩道沿いの街路灯には、魔法の光がともり街を照らしている。


 宿泊している冒険者ギルドの宿に戻る途中で、不意に、リバティが足を止めた。



「んっ? どうしたのよ、リバ・・・」



 足を止めたリバティに振り向きながら、ふと、私は違和感を覚える。


 辺りを見回すと、日が暮れているとは言え、先ほどまでいた往来する人が、人っ子一人いなくなっている。


 街から喧騒が消え、まるでこの世界に私とリバティの二人だけしかいないのではと言う感覚に陥る。



 何、この辺り一帯を覆う空気は?


 姿はおろか、声さえ聞こえず、存在さえ定かではない。


 それでも、私の獣の感覚が強く危険を訴えている。



 まるで街中に居ながら、魔獣の居る森の中に放り込まれたみたい。



 全ての気配が、かき消されてしまう程の威圧感。


 私は、いつでも対応できるように、戦闘態勢に入る。


 微かな緊張が私たちの周囲を取り巻き、ゆっくりと時間が流れる。



 ・・・・・・いる!



 いつから、そこにいたのか。


 日が暮れて人気のなくなった細い路地。


 前方の路地の陰から、誰かがこちらの様子を窺っている。


 動く気配はない。


 待つのは性に合わない私は、こっちから声をかける。



「誰? 私たちに何か用?」



 ほんの僅かな間をおいて、路地の陰から人影が現れる。


 女だった。


 金色の髪を後ろで縛り、緑色のドレス風の武道着を身に付けている。


 ただその場に立っている。


 それだけで、場を圧倒してしまう何かを感じた。



 隙がない・・・この女・・・強い!



 この周囲の異変は、十中八九この女の仕業で間違いないでしょうね。


 まさか、この状況でただの物取りって訳じゃないでしょ。



「・・・シャオに、リバティだな・・・」



 何故、私たちの名を?



「あなた、何者?」


「・・・さて、誰だろうな・・・私に勝てたら、教えてあげても良いわよ」



 ポニーテールの女は、そう言いながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


 私は、無意識に構えをとっていた。


 すると、フッと女の姿が消えた。



 なっ!?



 次の瞬間、私の頭が何かに撫でられる。



 えっ!?



 ポニーテールの女が、私の背後から頭を撫でていた。


 私の背筋に冷たいモノが走る。



「うおぉぉっ!?」



 私は、脱兎の如く、その場から飛び退く。


 し、信じられない、獣気を使っていなかったとは言え、私の動体視力を持ってしても捉えきれないスピードで背後をとられた。


 化物か、この女!



「ふふ、そう怖がらなくても良い、お嬢ちゃんに危害を与える気は無いわ」



 怖がる!? 


 私がおびえてるとでも言いたいの!



「私が用があるのは、貴様だ」



 ポニーテールの女の手には、いつの間にか白い棒が握られていた。


 最初、あんな棒、いや棍か、持っていなかったはずなのに、一体どこから?


 ポニーテールの女は、長く白い棍の切っ先をリバティに向ける。



「・・・俺?」


「貴様の力、試させてもらうぞ」



 この女、端から私じゃなくてリバティが目的か!


 私の胸の奥に、怒りが込み上げてくる。


 これではまるで、頭から無視されたみたいで、ムカつくわ。



「ちょっと待ったー」



 私は声を上げると、ポニーテールの女の前に回り込む。


 二人の間に入ると、私は、ポニーテールの女に指を付きつけた。



「どこの誰だか知らないけれど、リバティとろうってんなら、先ずは私が相手になるわよ」



 私は両足を開き、両腕を下げたままの自然体に構える。



「はあぁっ!」



 短い気合と共に、獣気が私の小さな身体を駆け巡る。


 獣気が満ちた私は、再び構えをとる。



 今度は、さっきみたいにはいかないわよ。



 身体の前の方に重心をかけ、ポニーテールの女を見据え、攻撃態勢をとる。


 獣の耳を前方に倒し、腰の尻尾が硬直し立ち上がる。


 頬が上がり、唇がめくれ上がり、牙を見せ、私は、無意識に唸り声を上げていた。



「グルルルルルル・・・」



 っと、そんなる気の私の肩を、リバティが後ろから掴んだ。



「・・・何よリバティ、まさか『お前じゃ無理だ、俺がる』なんて言うんじゃないでしょうね?」


「そうは言わんが、どう言う理由かは知らんが、彼女は、俺の実力を試したいらしい、ここは俺に譲れ・・・な」



 そう言って、リバティは、僅かに微笑む。


 その笑みに、頭に血が上っていた私は、冷静さを取り戻す。



「・・・・・・・・・分かったわよ」



 しばし考えた後、私は構えを解くと、その場から下がる。


 これは、私にとっても興味深い事だった。


 リバティと初めて会った時から、これまで、彼の力の片鱗を垣間見てきたが、その全容は見えていない。


 このポニーテールの女が何者かは知らないが、強者である事は間違いない。


 リバティの実力を見るのに、不足は無いだろう。



 リバティ、あなたの力、おがませてもらいましょうか。



「待たせたな」


「構わないわ」



 リバティと、ポニーテールの女が対峙する。




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